| 100を超えたAmazonの有料チャンネル (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.151) |
2016年12月21日号
AmazonはそのPrime Videoサービスに有料チャンネルを2015年12月に加えた。Streaming Partnerと呼ばれたこのプログラムに加わる事で、コンテンツ事業者はAmazonのプラットフォームを使いSVODサービスを展開出来る。プログラムは多チャンネル放送の有料チャンネルのStarz等、10数のサービスが参加してスタートした。
Streaming Partnerに参加すれば、マーケティング、課金、コンテンツの配信、カスタマーのサポート、データの分析とすべてAmazonが行ってくれる。売上の50%はAmazonが得るが、コンテンツさえあれば、簡単にSVODを始める事が出来る。しかし、競合となるAmazon Prime Video上でサービスを提供する事の価値を疑う声もあった。
Streaming PartnersはAmazon Channelと名前を変え、チャンネル数を増やしている。2016年9月には75チャンネルを超えた。12月にはHBOとその姉妹ネットワークのCinemaxもAmazon Channelに加わり、12月中旬でチャンネル数は100を超えた。Amazon ChannelはLGBT向けのHere TVからアメリカ最大の有料チャンネルのHBOまで幅広いサービスがあり、料金も月額$3から$15と様々である。
Amazon Channel成功の背景には、SVODのプロモーションの難しさがある。SVODのソリューションは数多く提供されており、サービスを提供する事自体は困難ではない。しかし、いかに存在をプロモートするかが大きな問題である。TVの様に番組表がある訳でもない。チャンネル自体が存在しないので、ザッピングで偶然に見つけられる事もない。
Amazon ChannelはすでにAmazon Prime Videoを見ている人達が対象であり、彼らはSVODを理解している人達である。また、Amazonは視聴経歴等から好みと思われるサービスをレコメンドする事が出来る。著名度も高く、すでにSVODサービスを提供し100万以上の加入者を持っているHBOにとっても、これは大きな魅力である。
Amazon Channelの成功により、SVODのプラットフォームを構築する事に対する関心が高まっている。ComcastはそのケーブルTVのSTB上でSVODを視聴可能にし、統合検索でコンテンツを探せるようにしている。しかし、利用可能なSVODは現在まだNetflixとSling TV(主にその海外コンテンツ)だけである。AppleもiOSとtvOSで新しいアプリを提供し、統合検索を可能にしている。しかし、Netflix、Amazonは検索対象外である等、不完全である。
ケーブルTVという既存のプラットフォームを持っている事で、Comcastは可能性を持っている。Comcastが成功すれば、多チャンネルサービスもSVODプラットフォームに参入するであろう。また、AppleだけでなくGoogle、TiVo、Roku等のストリーミングデバイスとそのソフトウェアを提供している会社も可能性を持っているが、すでに100以上のチャンネルを得たAmazonが数歩先を進んでいる。だが、Amazonより大きなプラットフォームになる可能性がある事業者がある。それはNetflixで、同社が同じようなサービスを始めた場合、Amazonの優位性は短時間で失われるであろう。
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