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トランプ次期大統領のメディア業界への影響 
(ブロードキャスティングレビューシリーズ No.150)
2016年11月24日号

 トランプ氏が大統領に就任する事で、メディア業界には大きな変化が予想される。最も確実な事はFCCの方針の変化である。2013年からFCCの委員長であったトーマス・ウィーラー氏は辞任する事となり、新たな共和党の委員長が任命される。現FCC委員で共和党系のアジット・パイ氏が次期委員長になるとの予想が多いが、大きな変化を求めているトランプ次期大統領はまったく新しい人を任命する可能性もある。

 いずれにせよ、ウィーラー委員長が進めてきた施策は消える可能性が高い。中でも多チャンネルサービスのSTBの標準化規制は消える可能性が最も高い。ウィーラー委員長はSTBをアプリ化する事でハードウェアに囚われない標準化を進めていたが、業界、議会でのコンセンサスは無い。新しい委員長が引き続きアプリによる標準化を進める可能性は低い。STBの標準規格は通信法が求めている物であり、議論は自体は続くが、早急な動きは無いであろう。

 もう1つ消える可能性があるのはネットワーク中立性規制だ。オバマ政権はネットワーク中立性支持者で、FCCはインターネット・サービス事業者(ISP)が自社、あるいは特定企業のサービスを優先出来ないよう規制化をして来た。しかし、最高裁がFCCにはISPを規制する権限は無いと判断した事で、規制は無効になった。これに対して、FCCはISPをコモンキャリアと再定義する規制を作る事で新たなネットワーク中立性規制を確立した。しかし、ISPをコモンキャリアと定義した事に対しての反対は多い。トランプ氏はネットワーク中立性は支持していなく、さらにこの様な規制の為に新たな規制を作る事には反対であり、ネットワーク中立性も消滅する可能性がある。

 トランプ氏のメディアへの影響はFCCの施策だけではない。選挙中、トランプ氏はマスメディアと喧嘩を続けた。彼に批判的なマスメディアを敵視し、メディア嫌いを明らかにしていた。リベラルなCNN等のニュースチャンネルだけでなく、保守的なFox Newsとも喧嘩し、Fox主催であった共和党候補の討論会には参加しなかった。トランプ氏のメディア嫌いは選挙後も変わらず、最近でも彼を風刺したコメディー番組の「Saturday Night Live」を批判している。

 ニクソン前大統領もメディア嫌いであったが、トランプ次期大統領とメディアとの不仲はそれ以上になるかも知れない。クリントン氏を押しているメディアに対抗し、トランプ陣営は最後の数週間はテレビは使わずに、Facebookのライブビデオでメッセージを配信した。トランプ氏のメディア嫌いが続き、今後もメッセージの配信にFacebookを使われるとニュースネットワークとニュース番組は困るが、それ以上のインパクトもある。

 トランプ次期大統領は、メディア勢力がさらに強くなる事を懸念しており、AT&TのTime Warner買収等は拒否すると語っている。それだけでなく、ComcastのNBC Universal買収も撤回させると発言している。大型合併を支持する傾向が強い歴代の共和党政権と違い、トランプ政権は合併、特にメディア関係の合併には反対する可能性が高い。Comcastを解体する事は困難だが、メディア業界をそこまで嫌っているとなると、メディア会社には大変な4年間になる。


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