| 第1ラウンド目のテレビ放送週数帯域競売は不成立 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.148) |
2016年9月20日号
テレビ放送の周波数帯域を通信向けに再利用する為の競売が5月末から始まっている。2008年に行われた700 MHz帯の競売とは異なり、アナログ放送の終了で空いた周波数帯域の競売ではなく、放送に現在利用中の周波数帯域の競売である。放送に使われている周波数帯域を売るためには放送局がその利用権を返上する必要がある。放送局に返上する動機を与えるために競売金は返上した放送局が受け取るので、今回の競売はインセンティブ(奨励金)オークションとも呼ばれている。
競売は2つのステップで構成されている。最初は放送局によるリバース・オークション
で放送局に周波数帯域を返上させる為の金額を決めるものである。最も安い金額を出した放送局が権利を売ることが出来る。目標となっている126 MHzを返上する為の最低額を決める競りが5月末から6月中旬まで行われ、結果は$864億となった。これに競売の経費、それに競売後の周波数帯域の再編成のコストを加えた約$880億が最低競売総額になる。26 MHzはガードバンドに使われるので、実際に競売される帯域は100 MHzである。
2015年に行われたAWS-3帯(1.7/2.1 GHz)の競売では50 MHzが$450億で売れたので、100MHzで$864億は法外な金額ではない。しかし、100 MHzもの周波数帯域の必要性に迫られている通信事業者は無く、競売が成立する事の疑いがあった。AT&T、Verizon、Comcast、Dish、T-Mobile等の大手を含んだ62社が参加するフォワード・オークションは8月16日に開始された。競売は総額$225億で終了した。最低額の4分の1以下の金額にしかならず、競売は不成立であった。
126 MHzの競売は不成立であったので、第2ラウンドとして競売目標を114 MHzに引き下げた競売が行われる。114MHzを売るためのリバースオークションは、9月13日に開始されている。放送局は強気であり、最低価格はそれほど下がるとは思われなく、第2回目も不成立になる可能性が高い。その場合、競売する周波数帯域をさらに引き下げて競売は続くので、長引く可能性もある。
アメリカで地上波放送だけでテレビ視聴をしている世帯は11%程度と低いが、放送周波数帯域が100 MHzも減れば大きなインパクトがある。放送チャンネルが減ることで地上波放送に対する関心はさらに減り、また、4K放送を可能にするATSC 3.0への移行も困難になる。どの程度の周波数帯域が売れるかで、放送業界の将来が変わる事になる。
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