| NetflixとComcastが協力 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.146) |
2016年7月20日号
これまでComcastとNetflixの仲は良くなかった。ComcastはNetflixを敵視してきた。NetflixがComcastと有償のピアリング契約をした際、NetflixはComcastは意図的にNetflixのトラフィックを遅くして来たと責めた。ComcastのTime Warner Cable買収に対して、最も積極的な反対をしたのはNetflixであった。そのComcastとNetflixが協力し、ComcastのSTBでNetflixを見ることが可能になる。
詳細は発表されていないが、年内にComcastはIPにも対応しているX1でNetflixのアプリを走らせ、Netflixを視聴出来る様にする。STBでのNetflixの視聴は衛星放送のDish Network、それにSuddenlink等の幾つかの中小ケーブルTV事業者が可能にして来たが、大手ケーブルTV事業者によるNetflixのサポートはこれが始めてである。
Netflixに取り、多チャネルサービスのSTBでもそのサービスを利用可能にする事は重要になっている。同社の加入者数は第2四半期で4600万を超えた。全米の世帯数は1.2億であり、Netflixの普及率は38%になっている。若い世代における普及率は高く、今後の成長の為には高年齢の層を狙う必要がある。その為には導入を出来るだけ簡単にしなければならず、多チャネルサービス事業者のSTBで視聴可能にして行く事は重要である。
ComcastにもNetflixと協力しなければならない理由がある。ケーブルTVへの加入者は減っている。すでにケーブルモデムの加入者がケーブルTVの加入者数を超えており、Netflixの利用者が増えれば、ブロードバンドの収入が増える。ComcastのケーブルTVへの加入者数は2230万世帯であるのに対し、ブロードバンドへの加入世帯は2330万世帯になっている。
また、ケーブルTVへの加入者を保つためにもNetflixは必要である。Netflixがこれまでより高年齢の世帯にアピールして行く必要があると逆に、Comcastはミレニアル世代を惹きつけなければならない。多チャネルサービスへの加入率は全体では86%あるが、独立した18~34歳の世帯では70%を割っている。逆に18~34歳の層ではSVODへの加入率は83%になっている。SVODの視聴が当たり前になっているミレニアル世代にケーブルTVをアピールするには、Netflix等のSVODもサポートする必要がある。
ComcastがNetflixをSTBで視聴可能にする事で、多チャネルサービスとSVODの融合を急速に進む可能性がある。Time Warner CableとBright Houseを買収し、第3位の多チャネルサービス事業者になっているCharterは以前からNetflixを提供する事に関心があるといっており、Charterも今年中にNetflixと契約するであろう。Comcast、それにCharterがNetflixをSTBで利用可能にしたら、他の多チャネルサービス事業者も提供をしない訳には行かなくなる。
Netflixだけで無く、Huluも多チャネルサービス事業者との契約を始めており、Suddenlinkと同様にAltice USAに買収されたCablevisionはHuluをSTBで視聴可能にしている。Huluを提供する多チャネルサービス事業者も増えて行くであろう。NetflixとHuluがSTBで提供され始めれば、Amazon Prime Video、そして他のSVODも多チャネルサービス事業者との契約をして行くであろう。
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