| 控訴裁がFCCのネット中立性規制を支持 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.145) |
2016年6月20日号
ワシントンDCの控訴裁判所は、2015年2月にFCCが決めたネットワーク中立性規制を2-1で支持する判決を出した。規制は消費者向けのブロードバンド事業者を電気通信法(Telecommunications Act of 1934)のTitle IIに基づき公共通信事業者として分類し、特定のインターネット・サービスを優遇、あるいは冷遇する事を禁じるもので、通信事業者代表のU.S. Telecommunications Associationが控訴していた。
FCCは2005年にネットワークの中立性を求める規制化を初め、2009年にブロードバンド事業者は特定のコンテンツ、あるいはアプリケーションを差別してはならず、また、その利用者に対し、ネットワーク管理の方針を公示する事を求めた。Comcastはこれを控訴し、控訴裁は2010年にFCCにはブロードバンド事業者のネットワーク、あるいはそのネットワーク管理方針を規制する権限は無いと判断し、規制は白紙化した。
2010年12月にFCCはOpen Internet Orderとして、より詳しいネットワーク中立性規制を決め、特定の合法的なコンテンツ、サービス、アプリを遮断、減速する事、あるいは特定のトラフィックを優先する事を禁じた。Verizonはこれを控訴した。2014年1月に控訴裁判所はブロードバンドサービス事業者は公共通信事業者では無い事から、FCCはネットワーク中立性規制を決めることは出来ないとし、FCCはまたも敗訴した。
2回の敗訴で、FCCが既存の状況でネットワーク中立性規制を作ることは困難と思われた。法案によりネットワーク中立性を規制化する、あるいはFCCにブロードバンド事業を規制する権限を与えるにも長い時間がかかり、現実的ではない。最も簡単な方法は、ブロードバンド事業をTitle IIが決める公共事業として、FCCに規制権限を与える事で、オバマ政権はこれを支持し、FCCは2015年に再定義を行い、新たなネットワーク中立性規制を作った。
しかし、ブロードバンドを1934年の規制で縛る事で、その発展を損ねる可能性もあることから再定義には反対も多い。また、新たなネットワーク中立性規制ではモバイルブロードバンドも、固定ブロードバンドと同じ扱いになって、これに対する反対もある。モバイルサービスでは特定のサービスはデータ量の対象外にする場合がある。例えば、Verizonのモバイル向けOTTビデオサービスのGo90のデータ通信料をVerizonのモバイルユーザには無料としている。これは特定サービスを優遇するものとし、違法になる可能性がある。
ブロードバンドサービスを提供する通信事業者とケーブルTV事業者はネットワーク中立性規制には反対しており、最高裁に持ち込む予定である。しかし、最高裁がこの訴えを取り上げない可能性もある。最高裁は通常、裁判所の判定(FCCには裁判所と同じ権限がある)と控訴裁判所の判定が同じであった場合、訴えは取り上げない。今回の控訴裁の判定はFCCの判断を完全に支持したものである。
ネットワーク中立性の反対派は最高裁への訴えとともに議会に対してFCCの規制を無効化、あるいは制限する法案を通すロビー活動を行っている。すでに、上院通商委員会はFCCの規制が求めている加入者へのネットワーク管理ポリシーの公示等を小規模ブロードバンド事業者には免除する法案を通過させている。議会がどの様に動くかは大統領が誰に成るか、それに民主党がどの程度の議席を取れるかが左右する。
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