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Comcastのコードカッター向けサービス (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.134)
2015年7月20日号

 多チャンネルサービスに加入しないコードカッター向けのサービスが増えている。衛星放送事業者のDISHとSonyは共にインターネットを配信網に使い、多チャンネルサービスの番組をライブで提供するサービス(Sling TVとPlayStation Vue)を始めている。CBS、HBO、Showtime、Lifetime等のチャンネルもそれぞれの番組をSVODで配信するサービスを開始している。Sling TVに加入し、オプションでHBOを付ければ、月額$35でスポーツ専門のHBO、有料映画・ドラマチャンネルのHBO、それにCNN、Disney、Turner等20程度のチャンネルを見る事が出来る。

 ケーブルTV事業者のComcastも月額$15のStreamと呼ばれるコードカッター向けのサービスをボストンで開始し、同社のサービス地域に広げていく予定である。Streamはサービス地域の地上波チャンネルの再送信(ABC、CBS、Fox、NBC、CW、PBS、Univison、Telemiundo等、10局程度)とHBOを配信する。Comcastは、いずれは多チャンネルサービスで提供されているESPN、CNN等のチャンネルも提供する可能性もあるとしているが、現時点では無い。StreamにはComcastのVODサービス、それにクラウドDVR機能(20時間)も含まれている。

 Streamには、他のコードカッター向けのサービスと違う点がある。1つは、サービスの対象デバイスをタブレット、スマートフォンにしている事である。これまでのサービスは、テレビの画面で視聴出来る事をアピールし、iOSとAndroid端末に加えてRoku、Apple TV、Fire TV、Chromecast、PlayStation等が使えるようにしている。これに対してStreamは、多チャンネルサービスをやめた人では無く、最初からテレビ自体を持っていない層を対象にしている。テレビを持っているのであれば、アンテナで地上波を受信出来るので、Streamの価値は低い。しかしモバイル端末を対象にしていながら、地上波をライブで見る事が出来るのは加入者宅内で、屋外での視聴は出来ない。クラウドDVRに録画した番組は屋外でも視聴可能である。これは、ComcastとTVネットワークとの契約に加入者宅外での視聴が含まれていないためである。

 もう1つの大きな違いは、Streamはオーバー・ザ・トップで提供されているのでは無く、配信はComcastのマネージドIPサービス上で行われている事だ。Streamを利用するためにはComcastが提供する25 Mbps以上のブロードバンドサービスに加入する必要がある。帯域保証が出来るので、Streamの画質は通常のOTTサービスより高く、安定している。しかし、Streamが提供可能な地域はComcastのブロードバンドがある所に限られる。また、OTTサービスの特徴である柔軟性は減り、Streamを使いたい限り、Comcastのブロードバンドに不満があっても止めることは出来なくなる。

 DISHのSling TVと同様にStreamも多チャンネルサービスに加入した事が無い層を狙った「入門者」サービスである。どちらも多チャンネルサービス事業者であり、コードカッティングをプロモートするサービスの提供は出来ない。Streamの方がさらに既存のサービスを保護する意識が高い。ケーブルTVへの加入者が減ってもComcastが儲かっているのはブロードバンドサービスのお陰であり、StreamをSling TVのようにブロードバンド回線を選ばない、OTTサービスにする事は出来ないのであろう。


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