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変化を迫られる多チャンネルサービス (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.133)
2015年6月20日号

 多チャンネルサービスの競争力は、その名の通りチャンネル数の多さである。1995 年のケーブルT Vサービスの基本的なパッケージであるExtended Basicの平均チャンネル数はFCCの調査では、44チャンネルであった。1990年代に登場した衛星事業者はケーブルTVより豊富なチャンネル数を提供する事で加入者を増やしていき、多チャンネルサービスの基本的パッケージの平均チャンネル数は2005年には70.5チャンネルになる。その後、ケーブルTVもデジタル化でチャンネル数が増え、ケーブルTV、衛星放送、IPTVを含めた多チャンネルサービスの基本パッケージの平均チャンネル数は2013年で159.6チャンネルに達している。

 チャンネル数が増える事で多チャンネルサービスの加入者は増えた。多チャンネルサービスの加入者は2000年には8450万世帯であったのが、2009年には1億世帯を超す。しかし、その後は横這いで、最近は減少傾向にある。多チャンネルサービス加入者が減少している大きな理由には料金の高騰がある。チャンネル数が増える事で、当然ながら料金も値上げされてきた。基本パッケージの平均月額料金は1995年で$22.50であったのが、2005年には$43.04になり、2013年には$64.41に増えている(FCC調査)。

 提供されているチャンネル数は1995年から3.6倍に増えたが、料金も2.9倍に増えている。もし、加入者が見ているチャンネル数も同様に増えているのであれば、料金が3倍に増えても大きな不満は出ないであろう。1995年に平均チャンネル数が44チャンネルであった時点での世帯平均視聴チャンネル数は10.2チャンネルであった(平均視聴チャンネル数はNielsen統計)。2005年にはチャンネル数は1.6倍に増え、平均視聴チャンネル数も15.4チャンネルに増える。しかし、世帯平均視聴チャンネル数は2008年に17チャンネルを越してからは横這いで、2013年でも17.5チャンネルである。2005年から料金は1.5倍増えたが、見ているチャンネル数は1.13倍しか増えていない。

 視聴者からは基本パッケージのチャンネル数を増やすので無く、見たいチャンネルだけに申し込む事が出来るアラカルト料金制を求める声が高まっている。多チャンネルサービス事業者は、アラカルト料金を導入すると潜在視聴者数が少なくなり、広告収入が減ることで、加入者料金が増える事になるとして、アラカルト制の導入を拒否して来た。しかし、多チャンネルサービスの加入者は減少しており、Netflix等のOTTのサービスが普及する事で、多チャンネルサービス事業者も料金形態の見直しをせざるを得ない状況になっている。

 TiVoの子会社でコンテンツ・ディスカバリー技術を開発しているDigitalsmiths社の調査によると多チャンネルサービス加入者の81.6%は見たいチャンネルだけの料金を払うアラカルト制を求めている。この調査の結果では多チャンネルサービス加入者がアラカルトとして申し込むチャンネル数は平均で17チャンネルで、Nielsenの世帯平均視聴チャンネル数と同じになっている。また、支払う金額は月額$38になっている。この様な完全なアラカルト制の導入は無理かもしれない。しかし、視聴するチャンネル数がこれ以上増えないのであれば、チャンネル数が増える事が値上げの口実であったこれまでの多チャンネルサービスの戦略は破綻している事になる。料金体系を考え直さないと、多チャンネルサービスの加入者減少をストップ出来ないであろう。


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