| ケーブルTV時代の終わり (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.132) |
2015年5月20日号
ケーブルTVはアメリカの放送業界の最初から大きな影響を与えてきた。放送が始まったばかりの1940年代末、FCCは殺到する放送ライセンス申請に対応が出来なく、3年間新規免許の発行を停止した。1950年1月の時点では全米には98のTV局しかなかった。この放送を電波が届かない地域でも視聴可能にしたのがCATV(共同アンテナTV)であった。放送局が増やせなかった3年間の間にもテレビが売れ、TV放送が普及を続けたのはCATVの貢献があった。
1960年代にCATVへの加入者は7倍近い成長をし、加入者は1969年には4,500万世帯に達する。地上波の再送信だけでなく、新たな放送媒体としてCATVは注目され、CATVではなく、ケーブルTVとの名称が提案され、1968年に業界を代表するNational Community Television Associationは、NCTAの略をそのままで名称をNational Cable Television Associationに変えた。
1990年代にはTVサービスに加え、電話、ブロードバンドサービスが開始され、NCTAはTelevisionをTelecommunicationsに変え、National Cable Telecommunications Associationとなる。1990年代には衛星放送が開始し、2000年代には電話事業者によるビデオサービスの参入も始まり、ケーブルTVは加入者を失っていく。だが、Netflix等のOTTの普及で、より高速なブロードバンドの需要が増え、ケーブルTVの加入者が減っても、ブロードバンド加入者が増えることで、ケーブルTV事業者の売上は減なかった。NCTAの名称変更が予期した様に、「ケーブル」と「テレコム」の事業者となる。
2010年代になりこの動きはさらに顕著になり、昨年末にケーブルTV事業者が提供するブロードバンド(ケーブルモデム)加入者が、ケーブルTV加入者を抜く。2015年の第1四半期にはケーブルTVの事業者最大手のComcastでも、ブロードバンド加入者が2240万世帯、ケーブルTVが2230万世帯と主客逆転した。
ケーブルTV加入者数の減少と共にNCTAの展示会のThe Cable Showへの来場者も減り、2013年の13,000人から2014年は10,000人になる。NCTAは展示会の名称から「ケーブル」を捨て、2015年からはInternet and Television Expoとリブランドされた。NCTAのウィーラー委員長はそのキーノートで、ケーブルとの呼び名は嫌いだと語り、リニューアルを呼び変えたが、INTXへの来場者は2014年よりもさらに減り、NCTAは来場者数の発表を控えている。
NCTAは展示会の名称を変えるだけでなく、組織名からもケーブルを取り除くことを検討しているらしい。ケーブルTV事業者の広告販売促進団体のCabletelevision Advertising Bureau(CAB)は、ケーブルTVをその名前から切り捨て、5月からVideo Adverting Bureau(VAB)となった。ケーブルTV業界は「ケーブル」とは呼ばれたくなく、新たなビジネスを模索している。しかし、それをリプレースする名称は無いので、しばらくの間は「過去にケーブルTVと呼ばれた事業者」と呼ぶのあろうか?
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