| FCCがISPを電気通信として規制化 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.131) |
2015年4月20日号
FCCは、今年の2月にインターネットサービス事業者(ISP)を1934年通信法第II(ローマ数字の2)章(Title II)で定義されるコモンキャリアの通信事業者として扱う事を3対2で決議した。賛成はWheeler委員長を含めた民主党系委員3人で、反対は共和党系委員の2人であった。この決定は、2010年のネットワーク中立性規制「Open Internet Order of 2010」が発端になっている。
「Open Internet Order of 2010」は、特定のサービスをインターネット上で優先する、あるいは後回しにする事を禁じている。問題は、FCCにISPを規制する権限があるかだ。ISPは、1996年電気通信法の第706条(Section 706)で定義される情報サービス事業者の扱いであった。706条がFCCに与えている規制権限は、「地域電気通信市場の競合を促進する為」、それに「インフラストラクチャへの投資における障害を取り除く為」の2つに限定されている。Verizonは、FCCにはOpen Internet OrderでISPを規制する権限は無いと訴え、法廷はこれを支持し、ネットワーク中立性規制は無効になった。
しかし、民主党はネットワーク中立性を支持しており、規制が無効になったままでは立場が無い。解決方法の1つの方法は、ネットワーク中立性規制を電気通信法に含める法、あるいはFCCの権限を拡大する法の立法化である。だが、これは困難である。電気通信法の書き換えを始めたら、これだけで終わるはずはなく、法の通過には最高の条件でも2年はかかる。
もう1つの方法は、ISPをコモンキャリアとして再定義することで、これはFCC委員会で決める事が出来る。ネットワーク中立性の支持者は多いが、ISPを第II章で定義する事に対して消極的な考えも多かった。電気通信法は81年前の物であり、第II章だけでも100ページ以上あり、ISP事業者に当てはまらない部分も多い。FCCは、ISPに対しては必要以上の規制は行わないと言っているが、FCCはISPを公共事業として細かく規制する権限を得る事になる。
ネットワーク中立性の大きな支持者であったNetflixも、これには当惑気味である。Netflixはブロードバンド事業者に対して、同社のCDNのOpen Connectに接続させるプレッシャーとしてネットワーク中立性を利用してきたが、ISPがコモンキャリアに定義される事は望んでいない。厳しくネットワーク中立性が適用されれば、NetflixとComcast等との接続契約も、優先接続として取り締まりの対象になる可能性もある。
通信事業者、ケーブルTV事業者は、インターネットサービスが第II章でコモンキャリアとして規制されるようになる事に対して、当然大きな反対をしている。FCCは、第II章の適用は、Open Internet Orderの為だけであり、それ以上の規制はしないと言っている。しかし、FCCにその意思が無くても、ISPがコモンキャリアである限り、料金の規制化等を求める訴訟が起きる可能性はある。通信事業者を代表するUnited States Telecom Association(USTelecom)、ケーブルTV事業者代表のNational Cable Telecommunications Association(NCTA)、American Cable Association(ACA)、モバイル通信事業者代表のCellular Telecommunications Industry Association(CTIA)、AT&T、CenturyLinkがすでに訴訟を起こしている。
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