| CBSが有料で地上波のストリーミングを開始 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.125) |
2014年10月20日号
地上波ネットワークのCBSは、CBS All Accessと呼ばれるOTTのビデオサービスを開始した。CBS All Accessは、CBSが現在放送している15のプライムタイム番組のキャッチアップ(放送翌日から)、CBSが直接に放送局を保有している14の都市では地上波放送のライブストリーミング、それに過去のシーズンのCBS番組のオンデマンド等を提供する。サービスは、ウェブ、それにiOS、Androidのアプリで提供されている。
サービスの内容としてはABCがすでに行っているWatch ABCと同様であるが、決定的な違いがある。Watch ABCはTV Everywhereで提供されている。Watch ABCを見るには、ABCとTV Everywhereの契約がある多チャンネルサービスに加入している必要がある。利用者はサービス料をABCに支払う必要はない。ABCはWatch ABCの利用料を多チャンネルサービス事業者に対する地上波再送信料に上乗せをしてる。これ対して、CBS All AccessはTV Everywhereでは無いので、視聴するのに多チャンネルサービスに加入する必要はない。誰でもが利用する事が出来るが、月額$5.99を支払う必要がある。
テレビネットワークが有料のストリーミングサービスを行うことはこれが始めてであるが、有料チャンネルのHBOも2015年から多チャンネルサービスへの加入を必要としない有料のOTTサービスを開始する。スポーツ専門ネットワークのESPNも、NBA(National Basketball Association)の試合を有料でストリーミングする準備を進めている。
テレビ番組のキャッチアップ、それにライブストリーミングをどの様なビジネスモデルで行うかはテレビネットワークの大きな課題である。Huluは既存のテレビ放送と同じ、広告モデルを採用した。しかし、ネットワークが満足する広告収入を得る事が出来ず、そのオーナーであるABC、Fox、NBC共にHuluでのキャッチアップ配信は放送から1週間以上後にし、翌日配信は有料のHulu Plus、あるいは自社のTV Everywhereでの配信に切り替えた。
TV Everywhereは理想的なビジネスモデルと思われた。ネットワークとしては、加入者から直接料金を徴収する必要無く、多チャンネルサービス事業者の放送契約に上乗せする事で利用に対する抵抗を削減出来、広告も売る事が出来る。多チャンネルサービス事業者はこれを新しいサービスとして提供し、多チャンネルサービスに加入しているメリットとして売り込む事が出来る。ウィン・ウィンのビジネスモデルと思われたが、今一つ、普及をしていない。
問題は、放送契約料金の高騰である。ネットワークが求める放送料は増え続けており、TV Everywhere契約はそれを更に高価にする。高価なTV Everywhere契約には応じない事業者が多く、TV Everywhereはなかなか浸透しない。さらに最近では放送料が高価になりすぎ、放送契約自体を破棄する多チャンネルサービス事業者も出ている。中規模ケーブルCable One、それにSuddenlinkはNickelodeon、MTV等のネットワークを持つ、Viacomとの契約を破棄した。衛星事業者のDISH Networkは、CNNを含めたTurner系チャンネルのほとんどを切っている。
今後もネットワークとの契約を渋る多チャンネルサービス事業者が増えるのでは、TV Everywhereどころか、ネットワークの存在自体が問題になる。テレビネットワークとしては、多チャンネルサービスに頼らずに独自に配信する方法を開拓したいのであろうが、CBSのチャンネル1つに月額$6を払う視聴者はどれほどの数であろうか。
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