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Netflixとブロードバンド事業者の争い (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.121)
2014年6月25日号

 Netflixは自社ではネットワークを持たない、OTT(オーバー・ザ・トップ)のサービスであり、配信のためにはComcast、AT&T等のブロードバンド・サービス事業者が不可欠である。ネットワークを持たないことで、Netflixは少ない投資でサービスを立ち上げる事が出来た。配信の品質はISP任せになるが、これは大きな問題ではなかった。最初のNetflixの多くのコンテンツは数年前のテレビドラマで、画質の重要性は高くなかった。しかし、Netflixは現在4Kを含め、より画質の良いコンテンツの配信契約、あるいはその制作に力を入れており、ネットワークの重要性が増している。  

 Netflixは画質の向上の為にOpen Connectをブロードバンド事業者に提供している。Open Connectはブロードバンド事業者の施設内にNetflix専用のキャッシュサーバーを設置する事で、速度を増す。Netflixはこのキャッシュサーバーを無料で提供するが、そのランニング・コストはブロードバンド事業者持ちである。Cablevision、Suddenlink等の中小規模のブロードバンド事業者はOpen Connectを導入している。大手と競合していくのに、Netflixの画質が良いことはプラスになる。  

 しかし、Comcast、AT&T、Verizon等の大手ブロードバンド事業者はOpen Connectの採用を拒否してきた。彼らは、Netflix専用のキャッシュサーバーを設置し、Netflixの画質を向上させる条件としてネットワーク使用料の支払いを求めて来た。Netflixのトラフィックが増え、それがネットワークの障害になっているのであれば、その解決はNetflixが負担するべきとの考えである。  

 画質が悪ければ、Netflixの利用者はサービスに不満を持つ。Hulu Plus、Amazon Prime Instant Video、VerizonのRedbox Instant等、Netflixの競合は増えており、利用者の満足度を維持する事は重要である。NetflixはComcast等の要求は不当だと語っているが、3月にComcastとの直接接続の支払いに合意したのに続き、AT&T、Verizon共、同様な契約をした。  

 Netflixが発表しているISP速度によると、ComcastのネットワークでのNetflixトラフィックの平均速度は契約前の2月から契約後の3月では1.66 Mbpsから2.5 Mbpsに向上した。しかし、4月に契約したVerizonの速度は全く向上をしていない。Verizonの平均速度は5月になっても1.9 Mbpsで、3月と同じである。Netflixは光ファイバーのVerizon FiOSがこれほど遅いはずはなく、自社のRedbox Instantを優遇していると批判している。  

 NetflixはVerizonに対して改善を求めているが、プレッシャーを増すためにVerizonの加入者に対しても訴える作戦に出た。NetflixはVerizonのブロードバンドサービスの加入者に対して回線速度が落ち、ビデオの解像度を落とす際、「Verizonのネットワークは混雑していますので、スムーズな再生の為にビデオを調整します」とのメッセージを表示した。  

 VerizonはすぐにNetflixに対して、これは不当であり、メッセージの表示を中止しない場合は、訴訟を起こすとの書面を送った。Netflixはこのメッセージはテストで、一部の利用者の画面に表示されただけであり、中止したと発表している。しかし、問題の根源は解決していない。議会では、ブロードバンド事業者がインターネット上でサービスを提供する会社にネットワーク利用料を求める事を禁ずる法案も提出されており、この争いはまだ続く。  


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