| テレビとビデオの視聴傾向 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.118) |
2014年3月20日号
Nielsenが公開した2013年第4四半期の視聴データによると、テレビ放送の月間視聴時間は昨年同期の156時間24分から155時間32分へと減った。視聴者の年齢層別で見ると、高年齢者ほどテレビの視聴時間が長く、12~17歳では月平均93時間53分であるのに対して65歳以上では225時間18分と、130時間以上の差がある。2011年第4四半期の統計と比べると、12~49歳ではテレビ視聴時間が減っているのに対して、50歳以上では視聴時間が増えている。テレビ視聴時間は減少方向にあるが、高年齢者のテレビの視聴時間が増えている事で大きな減少が防がれている。
これはライブでのテレビ視聴時間であり、タイムシフト視聴を加えるとテレビ番組の視聴はまだ増えている。タイムシフト視聴は2012年第4四半期から2013年同期では12時間38分から14時間40分へと増えている。前記のテレビ放送の視聴にタイムシフトを加えると、テレビ番組を見ている時間は平均で1時間10分増えた事になる。
注目するべきことは、タイムシフト視聴は全年齢層で増えているが、その増加率は年齢が高いほど大きい事だ。25~34歳でのタイムシフト視聴は2年前では15時間08分であったのが16時間55分へと11.8%の増加でしている。それが、65歳以上では8時間36分から14時間09分へと、64.5%の成長になっている。
2011年第4四半期ではタイムシフト視聴が最も多かったのは25~24歳で月平均で15時間08分の視聴があった。それに対して65歳以上は8時間36分で、6時間32分の差があった。2年後の2013年第4四半期ではタイムシフト視聴が最も多かったのは35~49歳の17時間58分であり、65歳以上の視聴は14時間09分で、差は3時間49分に縮まっている。2年前はタイムシフト視聴はまだ若者が主体であったのが、ここ2年間でDVRの利用が一般化し、高年齢者も積極的に使用し始めている様だ。
テレビ番組視聴全体は増えているが、リアルタイムでの視聴が減り、タイムシフトに移行している事はテレビ業界には良いニュースでは無い。タイムシフトでは広告効果が薄れ、特に放送から視聴までの時間が長いほど効果は低くなる。さらに、タイムシフトでは広告がスキップされる可能性もある。テレビ番組の視聴は増えても、タイムシフトが増えている事でテレビ広告の価値が下がる可能性がある。
タイムシフトだけでなく、インターネットのビデオ視聴もテレビ広告に影響を及ぼす。テレビの視聴はタイムシフトを含めて昨年から1時間10増えたのに対して、インターネットビデオの視聴は5時間54分から7時間34分へと1時間40分増えており、成長率も、成長幅も多い。タイムシフト視聴は若者と高年齢者の視聴時間の差が縮まっているが、インターネット視聴では、まだ若者が主体である。もっと視聴が多い年齢層は18~24歳の13時間14分であるのに対して、65歳以上では7時間34分であり、大きな差がある。
テレビ広告に対するタイムシフトとインターネットビデオの影響は、まだ一見それほど大きなものでは無いように見える。テレビ放送の視聴時間の155時間32分であるのに対して、タイムシフトもインターネットビデオもそれぞれ、14時間40分、それに 7時間34分であり、合計しても15%にもみたらない。しかし、18~24歳では、テレビ視聴時間が130時間57分であるのに対して、タイムシフトとインターネットビデオはそれぞれ16時間55分と11時間20分になっており、合計で20%を越しており、本格的なインパクトは目前に迫っているかも知れない。
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