| ComcastのTime Warner Cable買収 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.117) |
2014年2月20日号
ケーブルTV事業者としては最大手のComcastがTime Warner Cable(TWC)を452億ドルで買収する事を申請した。この買収は、FCCと司法省による許可が必要になるが、承諾を得られれば大きな勢力を持つ会社が誕生する。
Comcastは2170万世帯の加入者を持ち、TWCは1120万世帯の加入者を持つケーブルTV市場では2位の会社である。ケーブルTV加入世帯数は約5300万であり、合計で3290万の加入世帯となり、62%のシェアを持つ事になる。しかし、衛星放送、それに電話事業者のビデオサービスを加えた多チャンネルサービスへの加入世帯数は1億世帯であり、新会社のシェアは33%になる。FCCはケーブルTV事業者の持つことの出来るシェアの上限を30%と決めたが、法廷はこれを無効にしているので規制は無い。しかし、Comcastは30%のガイドラインを守り、300万世帯に対応するシステムを手放す事を約束している。加入者を3000万世帯に減らしても、2位のDirecTV(2025万世帯)3位のDISH Network(1406万世帯)より遥かに多くの加入者を持つ事になる。
ComcastとTWCは共に大手の通信事業者でもある。ComcastとTWCの持つブロードバンド加入世帯の合計は3180万世帯、デジタル電話加入世帯は1500万世帯になる。AT&TとVerizonののブロードバンド加入世帯数はそれぞれ1650万世帯と900万世帯であり、Comcast/TWCはコンシューマ向けブロードバンド市場では、AT&TとVerizonの合計加入者数よりも多い加入者を持つ事になる。
総売上で見ると、2013年度売上はComcastが647億ドル、TWCは221億ドルで、合計は868億ドルになる。DirecTVとDISHの売上はそれぞれ317億ドルと139億ドルで、多チャンネル事業者としては、圧倒的な規模になる。だが、AT&Tの売上は1288億ドル、Verizonは1206億ドルで、合併後でもComcastの売上はAT&T、あるいはVerizonの70%程度にしかならなく、通信事業者としては3位である。
しかし、TWCを買収する事が出来ればComcastは膨大なインパクトを持つ物を手に入れる事が出来る。それは、全米の殆どの都市のカバレッジである。ロサンジェルス、サンフランシスコ、シアトルからシカゴ、ニューヨーク、マイアミまで殆どの大都市を手に入れる事が出来る。NFLのチームがある32都市の中でComcast/TWCがサービスを提供していない都市はセントルイス、ニューオリンズ、タンパだけになる。全米の殆どの大都市で通信インフラとメディアサービス両方を提供する事の力は計り知れない。
Comcast/TWCには携帯電話網が無い。しかし、どちらも事業地域でWiFiの導入を進めている。もし、全米殆どの大都市でWiFiサービスを提供する事が出来れば、モバイル通信サービスでも大きな競合になる。さらに、ComcastはNBCUniversalを持っており、コンテンツを加えたサービスをいち早く試してみる事が出来るメリットもあり、AT&T、Verizonに取り、戦いにくい競合になる。
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