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  FCC、ILEC・非ILECの回線数の統計資料(2012年末)を発表
2014年1月15日号

 FCCは、2013年11月26日、2012年12月末日の時点における米国ローカル通話分野の競争状況についての報告書を発表した(注1)。米国通信法により、6か月ごとに発表を義務付けられているこの報告書の期日が守られることは稀である。前回の発表は、3年前の2010年11月のことであった(注2)。これは、FCC内部において、統計数値をできるだけローカル通話の規制撤廃に結び付けたいと考える共和党委員と、現状の規制を続けたいと考える民主党委員の、それぞれの主張が対立し、委員長が報告書の発表を好まない場合が多いからである。
 Tom Wheeler新委員長のもとで、ともかく早期にこの定期報告が発表されたことは評価できるが、委員長はじめ全委員のコメントはなく、それぞれの統計表の内容についての説明もない。統計表に付した説明は、そのほとんどが筆者のものであることをお断りしておく。例により、思い違い、資料解釈の誤りもあろうが、おおむね正鵠を得ているものと信じる。
 ただ1人、Ajit Pai委員(共和)が簡潔な声明を発表したが、その内容は、アナログ回線廃止促進の観点からなされたすぐれたものである。そのほとんどの訳を末尾に掲載した(注3)。


急速にILECに接近しつつある非ILECワイアライン経路数

表1 年次別ILEC、非ILECのアクセス経路数(交換アクセス回線数+VoIP加入者数(2006年6月-2012年12月 単位:100万)

調査時点

ILEC

非ILEC

非ILEC比率

2006年6月

142.3

29.9

172.2

17.4

2006年12月

138.8

28.6

167.4

17.1

2007年6月

134.6

28.7

163.3

17.6

2007年12月

129.7

28.7

158.4

18.1

2008年6月

124.6

30.0

154.6

19.4

2008年12月

118.5

44.3

162.8

27.2

2009年6月

112.7

44.4

157.1

28.2

2009年12月

107.0

45.9

152.9

30.0

2010年6月

102.4

49.0

151.4

32.4

2010年12月

97.5

52.2

149.7

34.9

2011年6月

93.4

52.8

146.2

36.1

2011年12月

89.4

53.9

143.3

37.6

2012年6月

85.9

55.4

141.3

39.2

2012年12月

82.1

55.9

138.0

40.5


1. ILECは、ベル系電話会社を含む旧来からの電気通信会社、独立系電話会社。非ILECは、非規制により生まれたCLEC、VOIP会社、ケーブルテレビ会社等の新興勢力を指す。
2. 原資料では、1000単位の数字が示されていたが、100万単位の表示に変えた。

 表1が示すとおりILECの回線数は、調査期間中の6年半の期間に、1億4000万から8200万へと40%超減少した。これに対し、非ILECは2,900万から約6000万へと回線数は倍増した。ILEC+非ILECの回線は、おおむね、モーバイル電話への移行によりもたらされたものである。
 なお、FCCは、ユニバーサルサービス原則を今でも固定通信に適用し、特に、ルーラル地域における低所得者層の電話普及に力を注いでいる。この施策がなければ、ワイアライン回線の利用は、さらに減少していたであろう。

表2 ILEC、非ILEC別住宅用、ビジネス用ローカル回線の比率(単位:1000)

項目

住宅用(構成比)

ビジネス用(構成比)

ILEC

47,640(60.4%)

34,476(39.6%)

82,116(59.5%)

非ILEC

31,253(55.9%)

24,704(40.1%)

55,957(40.5%)

78,892(57.1%)

59,180(43.9%)

138,072(100%)



 表2から、2012年12月現在において、ILECと非ILECがローカル回線数において、それぞれ約60%、40%の比率を占めていることが読み取れる。さらに、ILEC、非ILECのそれぞれにおいて、住宅用、ビジネス用回線の比率も、ほぼ、60%、40%の比率を示していることも、興味深い。


大半がバンドル化しているVOIP加入者数

表3 ILEC、非ILEC別のVOIP加入者数(2012年12月末、単位:万)

項目

バンドルドVOIP加入者

VOIPのみの加入者

ILEC

684,5(99.7%)

20(0.3%)

686,5(100%)

非ILEC

2988.0(85.1%)

521.7(14.9%)

3509.7(100%)

3672.5(87.5%)

523.6(12.5%)

4196.1(100%)

(括弧内の数値は、構成比を示す。)

 表3から、ILEC、非ILECのそれぞれのVOIP加入者数について、次の諸点が読み取れる。

 

 ●

総体でVOIP加入者は、バンドルの形(すなわち、ビデオ、インターネットと併用して)VOIPを利用している。

 ●

ILECの場合、バンドル化加入者数は、総加入者数の99.7%に達しており、VOIPのみのサービスを利用する加入者は例外的である。

 ●

単独のVOIP加入者は、VOIPサービス提供に特化した専門業者を利用していると推測される。したがって、非ILECのVOIP加入者層の大半を占めるケーブルテレビ加入者のバンドル利用は、ILEC加入者の利用の場合とさほどの差異はないだろう。


インターネットアクセス回線の大半を提供する非ILEC

表4 ILEC、非ILECの使用技術別インターネット回線数(単位:1,000)

使用技術/キャリア

ILEC

非ILEC

DSL等ワイアライン

3,556(55,7%)

2,822(44.3%)

6,378(100%)

FTTP

3,288(78.4%)

832(21.6%)

4,119(100%)

ケーブルモデム

1(0.04%)

25,968(99.96%)

25,968(100%)

固定ワイアレス

49(100%)

40(100%)

その他

0

210(100%)

210(100%)

総計

6,845(18.6%)

29,880(81.4%)

36,755(100%)

1.括弧内の数値は、構成比である。
2.*は、使用されてはいるが、計上する数値に満たないことを示す。

 表4から、次の諸点が読み取れる。  

 ●

インターネットの加入者数は、非ILECが優勢である。その主な原因は、ケーブルテレビ事業者のケーブルモデム利用回線にある。

 ●

ILECにおいて、DSLは未だにインターネット伝送の過半数を提供しているが、FTTP (光ファイバー)伝送も、DSLに追いつきつつある。

 ●

固定ワイアレスは、特に固定ワイアラインの架設が困難な過疎地において有望な技術であると喧伝されたものだが、利用実態がほとんどないのは意外であった。


微増に留まる最近数年間の電話話加入者総数

表5 ワイアライン加入者数、ワイアレス加入者数の推移(2009年6月~2012年12月(単位:100万)

項目

ワイアライン加入者数

ワイアレス加入者数

交換アクセス

VOIP

2009年12月

25.9

126.9

278.9

427.1

2010年6月

28.9

122.6

278.9

430.4

2010年12月

31.8

117.9

285.1

434.8

2011年6月

33.8

112.4

290.3

436.5

2011年12月

36.7

106.6

297.3

440.6

2012年6月

39.4

101.8

301.5

442.7

2012年12月

41.4

96.1

304.9

442.9


図 ワイアライン加入者数、ワイアレス加入者数の推移(2009年6月―2012年12月)(単位:1000)


 表5は、2009年12月から、2012年12月の2年半の間における6カ月ごとのVOIP加入者、交換アクセス回線数、ワイアレス加入者の数を示したものである。この表については、次項のFCC Ajit Pai委員のコメントが十分な説明になっているので、ここでは資料掲載に留める。  


FCCのAjit Pai委員、IPネットワークの全面的構築に向けての準備を始めるべき時は、“今だ”との声明を発表

 われわれが、ITへの移行期にあるのは、疑いのないところである。
 本日、発表されたFCCワイアライン競争局の報告書は、米国民が引き続き20世紀の銅線ネットワークから逃避し続けていることを示している。

 

 ●

2012年、銅線を使用していた世帯のうち、7分1が銅線を捨てた。過去4年間で銅線を捨てた米国人の数は、3,360万人に及んだ。

 ●

3つの競争業者を選べる米国人は、99.6%に達した。10超の事業者を選択できる米国民の数も92%に達している。このように、ワイアライン部門の競争は激烈なのである。
事実、ユーザは、この選択肢を行使している。過去4年間で、VOIP提供業者は1,460万、また、ワイアレス提供業者は4,360万の加入者数を増やした。
しかるに、FCCは、通信市場のこの部門(筆者注:固定ワイアライン通信部門)に料金規制等の時代遅れで煩瑣な規制を科している。そして、前世代技術への規制を続けている。
今こそ、FCC規則を刷新し、将来の全IP体制に備え、先導する幾つかの国を見習い、住宅市場の規制を解除するべき時である。IPへの移行と取り組むべき時が来た。

   



(注1)2013年11月26日付け、FCCレリース、"Local Telephone Competition:Status as of December 31, 2013."
(注2)DRIテレコムウォッチャー、2010年11月1日号、「ILEC対し存在感を強める非ILEC事業者 - FCC統計資料から」
(注3)2013年11月26日付け、FCCレリース、"Statement of commissioner Ajit Pai on the release of the 2013 Local Telephone Competition Report."



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