| IntelがバーチャルケーブルTVサービス(OnCue)から撤退 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.115) |
2013年12月20日号
IntelはそのOnCueサービスの開発を中止し、Intel Media部門を売り出す決定をした。OnCueはブロードバンドを使ったのバーチャル・ケーブルTVサービスであり、ケーブルTVサービスで提供されているチャンネルをオーバー・ザ・トップでストリーミングする。OTTでケーブルTVを提供するコンセプトだけでなく、そのチャンネル番号を廃止した高度なUI等からも大きな注目を浴びていた。
OnCueの計画は2011年末にスタートした。Intelは以前からホーム市場への参入を狙い、デジタルミュージックプレーヤ、STB、CE向けプロセッサー等を開発してきたが、成功していない。Intelの結論はコンシューマ市場で成功するにはプロセッサー、あるいはデバイス単体では困難であり、Appleの様にコンテンツを含めたエコシステムを作る事であった。その為にIntel Mediaを設立し、そのトップにBBC iPlayerを開発したErik Huggers氏を雇った。
OnCue契約に対する正式な発表は2013年2月に行われた。しかし、5月にIntelの新CEOとして就任したBrian Krzanich氏は、Intelがメディア事業に参入する事に否定的であった。同氏は、6月のReutersが行ったインタビューで「Intelが開発したUI、圧縮技術は素晴らしい。しかし、サービスとして提供する場合、コンテンツが重要であり、我々はコンテンツではビッグプレーヤでは無い。」と語っている。
実際、OnCueの商業化における最大の課題はコンテンツ事業者との契約である。コンテンツ事業者は成功をしている既存の多チャンネルサービスに競合するサービスに協力する事に関しては慎重になる。新たな市場が出来る事は良いが、それによりコンテンツの価格が下がる事は困る。Intelと契約をするにしても、契約金は既存の多チャンネル事業者に対するものより、高価になる。
コンテンツ事業者との交渉が難航する事で、IntelのOnCueに対する関心は薄らぐ。そして、11月にIntelが発表した2014年の事業計画には、OnCueは含まれず、構想外になった事が明らかになる。IntelはIntel Mediaの資産を5億ドルで売りに出す。2012年に7億ドルの売上があったHuluに対するオファーが10億ドルであった事を考えると、事業としてまだスタートしていないIntel Mediaに対する5億ドルは高く思える。しかし、この金額にはOnCueの為に開発されたUI、伝送技術等が含まれている。
現時点では、VerizonがIntel Mediaの購入に応じたと報じられている。Verizonは光ファーバーベースのFiOS TVサービスを立ち上げており、500万世帯の加入者を持っている。しかし、同社はモバイル通信に全力を注ぐために、光ファイバーの導入はストップしている。このため、FiOS TVが新たな地域で提供される事は無くなっており、VerizonがFiOS TVの為に行ったメディア市場のノウハウを得る為の投資回収は進んでいない。OnCueの技術を使う事で、Verizonは光ファイバー網に投資する事無く、ビデオサービス事業の拡大が出来る。Verizonは、Intel Mediaの技術を使うことで、同社が力を入れている高速モバイル通信網使ったビデオサービスの提供が可能になるかも知れない。
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