| コンテンツ・ディスカバリーの重要性 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.114) |
2013年11月25日号
これまで、チャンネル数の多さが多チャンネルサービスの成長を促進して来た。衛星を使った多チャンネルサービスがスタートした1990年代中期、ケーブルTVの普及率はすでに75%で、飽和間近と思われていた。しかし、ケーブルTVより豊富なチャンネル数を持つ衛星放送は多チャンネルサービスへの関心を増やし、加入世帯は伸びていった。
現在、多チャンネルサービスへの加入率は85%に達しているが、伸び悩みを見せている。市場はいよいよ飽和に近づき、さらにNetflix等のOTTビデオサービスが普及している事も原因しているが、多チャンネル化が行き詰まっている事も大きな理由である。
テレビのチャンネル数は200もあり、さらに多チャンネルサービスのVODで多くの映画、TV、番組が配信されている。今の問題は、コンテンツが豊富にありすぎ、見たいものが見つからない事である。チャンネル数が少ない時代は、チャンネルを切り替える事で番組を探すことが出来た。しかし、チャンネル数が50を超えたあたりで、これは現実的では無くなった。テレビのスイッチを入れても、見たい番組が探せずにスイッチを切る回数が増えれば、多チャネルサービスに加入している事を無駄に思い始める。
音声インタフェースを開発しているVeveo社が発表した調査の結果によると、テレビを週に5時間以上見る人の20%以上はテレビ番組を探すのにかなりの時間を費やしていると答えている。そして、番組が見つからない事でテレビを消すことがあるかとの質問に対して、85%の人はあると答えている。50%は数回はあると答え、20%はテレビを点けた内の半分は番組を見つける事が出来なく、スイッチを切ると答えている。
いかに番組を発見しやすくさせるかは、多チャンネルサービスだけの課題ではなく、テレビ業界全体の課題である。200のチャンネルでは、番組表は使えない。検索機能があっても、現在のリモコンでは文字入力は困難である。音声入力が登場しているが、何を見たいのかがはっきりしていない場合、通常の検索では時間がかかる。
ソーシャルネットワーク等を使ったレコメンデーション機能への期待が高い。しかし、レコメンデーションの精度を高めるには、利用者の好みを把握して行くことだが、プライバシーの問題もあり、容易ではない。自分の好みとは異なるレコメンデーションのリストを見る事は、見たい番組に行き着く時間を逆に長くする可能性もある。Veveoの調査でも75%は簡単に検索を出来る機能があれば、レコメンデーションのリストを見るより検索をする事を好むと答えている。
レコメンデーションも重要だが、テレビ番組の検索も容易にして行く必要がある。それには音声を含めたユーザ・インタフェースの研究に加え、より豊富なメタデータが必要である。これまで通りのタイトル、ジャンル、俳優等の情報だけでなく、より細かなデータが必要になる。例えば、Jinni(Jinni.com)は、テレビ番組、映画をムード、プロット、時間、場所、対象観客等の条件で探す事の出来るサービスを開発している。
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