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NetflixとケーブルTVの協力 
(ブロードキャスティングレビューシリーズ No.113)
2013年10月20日号

 NetflixはケーブルTVの大きな競合になると思われていた。Netflixの利用者が増える事で、ケーブルTVを含む、多チャンネルサービスへの加入者は減少すると予測された。しかし、この予想は外れている。Netflixの加入者は増えているが、多チャンネルサービスの加入者に大きな減少は無い。多チャンネルサービスの加入者の多くは、Netflix、あるいは他のOTTビデオサービスにも加入し、使い分けをしている。ビデオ・エンターテイメントが好きな人々は、どちらかを選ぶのではなく、両方を使う事で選択肢を増やしている。

 この事はNetflix、それにケーブルTV事業者の考えを変えている。Netflixは、すでにそのサービスは多チャンネルをリプレースするとは言わなくなっている。Netflixは加入者を増やしていくには、ケーブルTV事業者の協力が必要だと理解している。Netflixがサービスを提供するにはブロードバンドが不可欠であり、アメリカのブロードバンドサービスの半分以上はケーブルモデムである。ケーブルTV事業者との争いは得策ではない。また、今後Netflixが加入者を広げるには、これまでの先進的なユーザだけでなく、一般世帯に広げていく必要がある。ケーブルTVのSTBからNetflixが視聴出来るようになれば、利用層は大きく広がる。

 ケーブルTV事業者も考えを改めている。ケーブルTV事業者に取り、ブロードバンドは重要な収入源になっている。高速になるほど月額は増え、利益率も高い。利用者が高速なサービスを求める大きな理由は、OTTビデオである。もし、OTTビデオによりケーブルTV自体への加入者が減っているのであれば、問題である。しかし、減っていないのであれば、OTTビデオは敵ではなく、Netflixを提供する事でコミッションを得ることが出来れば、収入は増える。

 もう1つ、Netflixの良い効果がある。それは、ケーブルTVの有料VODの利用を増やしていることだ。ケーブルTVの事業者は、Netflixの前からVODを提供してきたが、利用は少なかった。それが、Netflixの利用が増えると共に、ケーブルTVのVODの利用も増えている。利用者の多くはVODが良く理解出来ず、使わずにいた。Netflixの定額性のオンデマンドサービスは、有料VODへのいい足掛になっている。

 欧州ではすでに、イギリスのVirgin MediaとスウェーデンのCom Hemが、TiVoのSTBを導入している加入者に対してNetflixの提供を開始している。アメリカでも、NetflixはTiVoを導入しているSuddenlink、RCN、Mediacom等の中小規模の事業者だけでなく、Comcast、Cablevision等の大手事業者とも話し合いを進めている。

 ケーブルTV事業者が採用し始めている次世代STBは、IPとQAMのハイブリッド型であり、Netflixをサポートする事は可能であるが、最初の契約はTiVoを採用している中小事業者になると思われる。TiVoにはNetflixをサポートする機能がすでにあり、ケーブルTV事業者がレンタルしているSTBでは、アプリが導入されていないだけである。また、中小ケーブルTV事業者は、Comcast等の大手の様にVOD、あるいはIPベースのストリーミング・ビデオに大きな投資をしている訳でもなく、競合するリスクも低い。  


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