| Time Warner CableとCBSの再送信料を巡る争い (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.111) |
2013年8月20日号
ニューヨーク、ダラス、それにロサンジェルス等の都市では、Time Warner Cable(TWC)の加入者は8月2日以来、CBS地上波チャンネルを見ることが出来なくなっている。TWCとCBSはCBS局、それにCBS系の多チャンネルネットワークのShowtime、TMC等のチャンネルの再送信料を巡り争っている。CBS局は今期、地上波局では視聴率トップであり、強気に出ているが、TWCは値上げを拒んできた。TWCとCBSの契約は6月末に切れているが、放送は継続されていた。しかし、8月2日にTWCは交渉は決裂したとし、CBS系のチャンネルの再送信をストップした。
地上波局は、その放送を再送信する多チャンネルサービス事業者に再送信料を求める事が出来る。放送局にとり、多チャンネルサービス事業者による再送信は不可欠であり、以前は多額の料金を求めることは無かった。ケーブルTVが独占であった時代、放送局が多額の料金を請求し、ケーブルTVが再送信を拒否した場合、放送局が困ることになる。しかし、衛星放送、それに電話事業者の多チャンネルサービスへの参入で状況は変わった。多チャンネル事業者が主要なチャンネルを放送出来なくなった場合、加入者を他の事業者に奪われる可能性がある。
地上波局が求める再送信料は、ここ数年で高騰している。多チャンネルサービス事業者は、十数セントは特に文句なしで払ってきた。しかし、再送料が$1に近づくことで、局と多チャンネル事業者の争いが増えている。CBSがTWCに対して求めている料金は公開されていないが、報道ではこれまで$1であったのを$2に値上げをしようとしている。TWCは、CBSは600%の値上げを求めていると語っている。
TWCによるCBS局の再送信停止は、両者に損害を与えている。TWCの加入者はCBS系のチャンネルが視聴不可能になったことで起こっており、2つの団体訴訟が起きているだけでなく、TWC脱退も増えている。ニューヨークでは、競合しているVerizonへの加入者が10%前後増えていると報道されている。CBSは視聴率を失い、CBS系の番組の非合法での流通が増加している。しかし現時点では、どちらも譲歩する様子は見せていない。
アメリカの放送期は9月に開始し、夏の間は再放送が主であり、テレビの視聴は低い。CBSが見られないことに対するTWC加入者の不満もまだ少なく、また、CBSに取っても現時点での視聴率の低下は特に大きな問題ではない。だが、9月に入ると新番組がスタートするでけでなく、アメリカン・フットボールのシーズンも開始する。9月になる前にこの問題が解決をしないと、視聴者の不満は爆発し、FCC、そして議会に対する抗議も増していく。TWC、CBSの争いは大手の争いであり、今後の多チャンネルサービス再送信料の動きに大きな影響を与える可能性があり、議会を巻き込んだ議論になる可能性もある。
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