| バーチャル・ケーブルTVは実現するか (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.110) |
2013年7月20日号
Netflix等のOTTビデオの普及により多チャンネルサービスへの加入者が減少するのではないかと心配されたが、大きな影響は無い。多チャンネルサービスの加入者数は横這いで、OTTビデオの影響は全く無いとは言えないが、減少はしていない。Netflix等は、映画、テレビ番組を配信しており、一部のテレビネットワーク(チャンネル)に競合する。だが、Netflixでニュース、スポーツ等を見ることは出来なく、スポーツ専門のESPN、あるいはニュース専門のCNN等の競合ではなく、多チャンネルサービスをリプレースする事は出来ない。
しかし、もしも多チャンネルサービスで放送されている同じ番組が、同時にオーバー・ザ・トップで見る事が出来るようになれば、ケーブルTV、他の多チャンネルサービスに取り、大きな競合になる。Intelは、自社のSTB向けの多チャンネル向けネットワークのコンテンツをブロードバンドで配信する計画を進めている。これまでの多チャンネル事業者は、ケーブル網、衛星、光ファイバー等の配信インフラを持っていたが、Intelのサービスは、配信インフラを持たないOTTのサービスになる。
この様な計画を持っているのは、Intelだけでない。IntelのサービスはAppleの戦略を意識したもので、ハードウェアとコンテンツを提供する相乗効果を狙っている。Appleがこれを黙って眺めているはずはない。Appleも、多チャンネル向けネットワークの番組を放送と同時に配信するサービスを検討している。GoogleもAppleを意識しており、そのGoogle PlayでiTunesに対抗をしており、やはりバーチャルケーブルTV的なサービスの提供を検討している。
これらのサービスが実現するかは、コンテンツ事業者の判断である。Apple、それにGoogleも多チャンネル向けネットワークの番組を放送と同時にインターネットで配信するという考えは以前からあり、コンテンツ事業者との交渉を行ったが、不成功であった。コンテンツ事業者は、多チャンネルサービスでの放送に不満を持ってはいない。収入は増えており、市場のコントロールも出来ている。Apple等と手を組むことで、多チャンネルサービス事業者との仲を悪くする価値は無い。
しかし、Netflixがオリジナル番組で成功する事で、コンテンツ事業者の考えが変わり始めている。Netflixはテレビネットワークへの競合になっており、インターネットでの配信を含めたコンテンツ流通の戦略を再検討している。OTTによる番組の配信は、新たな流通方法になるだけでなく、新たなビジネスモデルの設立になるかも知れない。IntelのSTBは視聴者を認識し、視聴者毎の好みに沿った広告を配信する機能を持っている。Appleは、有料で広告をスキップする機能を提案している。
Intel、Apple、Googleは大きな資本があり、新しいビジネスモデルを成功させる可能性を持っている。だが、考え方が異なるインターネットビジネスと手を組むリスクもある。また、多チャンネル事業者も、番組のインターネットでの同時配信を始めている。さらに、自分で配信インフラを持たないOTTの配信は、コンテンツ事業者が独自で行う事も可能であり、新たなパートナーが必要ではないかも知れない。
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