| OTT-VのBinge Watchingとソープ・オペラ (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.108) |
2013年5月25日号
Netflix、Hulu等のオーバー・ザ・トップでのテレビ番組の配信がポピュラーになる事で、Binge Watchingと言う言葉が登場した。Bingeとは乱用の意味で、Binge Drinkingは暴飲、深酒である。Binge Watchingはまとめ見、特に1つの番組の1シーズン分を週末に見終わらせてしまうことを意味している。Binge Watchingは、週末に録画した番組をまとめて見るのと違い、1つの番組に徹し、その1シーズン分をまとめて見る事で、OTT-Vの視聴パターンとして注目されている。
NetflixはHouse of Cards、そしてHemlock Grooveとオリジナル番組を制作、配信をしているが、テレビ放送の様に1週間に1話ではなく、公開日に1シーズン分、全13話をまとめて公開する方法をとっている。これにより、Binge Watchingが可能になっている。House of Cards等が公開された週末に全話を見終わったNetflix利用者も多いようで、ソーシャル・ネットワークで話題を作り、それが視聴者を増やすことに貢献している。Accentureの調査では、Netflix加入者の30%はHouse of Cardsを見ている。Netflixは、4月19日に公開開始したHemlock Grooveの最初の週の視聴は、House of Cardsを上回ったと報告している。
このOTT-Vでの視聴パターンと全く正反対なのが、テレビのソープ・オペラ(昼メロ)である。ソープ・オペラは週5日間、毎日の放送であり、毎日定時に番組を見る事が求められる。この視聴パターンは現代のペースには適していなく、ソープ・オペラ衰退の原因となっている。地上波ネットワークは、次々とソープ・オペラをキャンセルしているが、ファンが居なくなっている訳ではない。
ABCが2年前にキャンセルしたOne Life to LiveとAll My ChildrenはProspect Park社がライセンスをし、4月29日からHuluとiTunesで配信が始り、好評である。しかし、ソープ・オペラの放送パターンをそのままOTT-Vで実現する事は出来ない。Prospect Parkは最初、テレビ放送と同じようなパターンで配信を開始した。それぞれの番組は、月曜から木曜に1話(30分)づつ公開され、そして金曜にその週の総集を配信していた。テレビの様に定時に見る必要は無いが、殆どの視聴者は1日に1話を見るとの想定であった。
しかし、実際は違っていた。これら番組の視聴は、ランチタイムと午後5時から7時が多いが、1週間に4話を見る人は非常に少なく、2、3話が主体であった。また、テレビで放送されていた時点では、One Life to LiveとAll My Childrenの両方を見る人が殆どであったが、Huluではどちらか1つしか視聴しない人が多い。1日の時間は限られ、毎日1時間見続ける事は難しい。そこで、Binge Watchingになるが、ソープ・オペラでこれをした場合、両方の番組を1週間分ためると4時間(総集を見なければ)になる。1時間ドラマの1シーズン分を見るより少ないが、これを毎週末続ける必要があり、1週間怠ると次週は8時間になる。いくらソープ・オペラの大ファンでも、これは辛いであろう。普通のドラマは1シーズンで、13話、多くて22話だが、ソープ・オペラは1シーズンで100以上のエピソードがあり、Bingeをしても簡単に見終わるものではない。
この結果を基に、Prospect Parkは、5月末からそれぞれの配信を1週間に2話に減らした。2話であれば、Bingeする事無く、両方を視聴する事も可能である。また、Bingeする気があれば、週末に4時間見れば、1ヶ月分に追いつく事も出来る。
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