| MicrosoftがIPTVから撤退 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.107) |
2013年4月20日号
Microsoftは、そのIPTVプラットフォームのMediaroomの事業をEricssonに売った。Microsoftは、1990年代後半からSTB向けのミドルウェアの開発を始め、2000年にはDirecTVのSTBとしてインターネット機能を持つUltimate TVの提供を開始する。WebTVを拡張したUltimate TVはスマートTVのパイオニアとも言えるが、2003年に中止になる。Microsoftにとり、ポストPCとして、家庭のエンターテイメント市場は重要であり、Microsoft TV Foundation EditionとしてケーブルTVのミドルウェアを開発する。しかし、ケーブルTV、事業者に採用されることなく、この開発は終了する。そして、2007年にMicrosoft TV IPTV EditionがMediaroomとして発表される。
MediaroomはIPTV向けSTBのミドルウェアとしては20%以上のシェアを持っており、AT&T U-Verse、Deutsche Telecom、Telefonia、Swisscom等で採用されている。製品として、成功はしているが、その規模、そしてインパクトは予想を大きく下回っている。IPTVの市場は増えているが、それ以上にストリーミングビデオが成長をしており、IPTVは予想されたほどの大きなインパクトにはなっていない。MediaroomがAT&T等で採用されても、iOS、Androidの様なアプリケーション市場が登場している訳でもない。
しかし、ホームエンターテイメント分野におけるMicrosoftの成功は、別の製品から生まれている。それは、Xbox 360である。Xbox 360はゲーム機を超え、家庭のメディアプレーヤとして成功している。TVでストリーミングビデオを見るために最も多く使われているデバイスはXbox 360であり、数多くのストリーミングサービスに対応している。ストリーミングメディアプレーヤとして、Xbox 360の方がApple TVに勝っている。また、ストリーミングメディアプレーヤとして使われているだけでなく、AT&T U-Verse TVではXbox 360をSTBとして使うことも出来る。
MicrosoftはXbox 360を家庭のエンターテイメントセンターとして普及させていく戦略である。しかし、これにはMediaroomが邪魔になる。MicrosoftはXbox 360はMediaroomを含めた既存の多チャンネルサービスのプラットフォームを乗り越える新しいコンセプトとして提供をしようとしており、同じ会社で、2つの相反するプラットフォームを持つ事は出来ない。
Microsoft TV Foundation EditionはComcast等がテスト採用をしたが、正式な採用にはならなかった。既存の多チャンネル事業に製品を売り込むのは簡単ではない。しかし、Xbox 360はすでに広まっており、他力は必要としない。新しいXbox 360では、Google TVと同様にHDMIのパススルーを搭載し、多チャンネルサービスを含めたTV放送のインタフェース(IPG)となる機能を提供すると噂されている。多チャンネルサービス事業者に取り、多チャンネルサービスが自社のインタフェース以外で使われる事は問題であり、Xbox 360多チャンネル事業者が敵視する製品になるかも知れない。
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