| テレビ放送を見ていない500万の世帯 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.106) |
2013年3月25日号
一昨年前からコードカッティングが大きな話題になり始めた。Netflix等のインターネットを使ったビデオストリーミングのサービスが普及する事で、ケーブルTV等の多チャンネルサービスを切る世帯が増えていくと危惧された。多チャンネルサービスへの加入者は一時的減少をしたが、恐れられたような大規模な減少はなかった。逆に、調査会社のSNL Kaganは2012年第4四半期の多チャンネルサービスへの加入者は、前年同期から51,000世帯増えたと報告している。
しかし、テレビ放送の視聴者は減っている。Nielsenの統計では、2012年第4四半期におけるテレビ放送の視聴者は2.839億人で、2年前の2.893億人から540万人減っている。TV視聴統計のベースとなるテレビ視聴世帯は2010年9月では1.159億世帯であったのが、2012年9月では1.142億に減り、TV世帯率は98.9%から96%に減っている。Nielsenによると、TV放送を視聴していない世帯は2007年では201万世帯であったのが、2012年末には501万世帯になっている。
これら世帯は、地上波アンテナを持たず、多チャンネルサービスにも加入せず、テレビ放送は受信していない。しかし、テレビを持っていない訳でなく、その75%は最低で1台のテレビを持っている。また、TV番組を見ていない訳でもない。48%はインターネットベースの有料サービスに加入し、テレビ番組を見ている。
Netflix等のサービスは、有料の多チャンネルサービスから加入者を奪うと予想されていた。地上波放送とストリーミングサービスが、多チャンネルサービスをリプレースすると思われていた。しかし、現実は違っている様だ。多チャンネルサービスへの加入者数は横這いで、減少はしていない。だが、テレビ放送の視聴世帯は明らかに減少をしている。起きているのはコードカッティングではなく、放送離れである。テレビ放送を見ている世帯は引き続き多チャンネルサービスに加入しているが、テレビ放送を全く見ない世帯が登場している。
ニュースではこのトレンドはより明らかである。多チャンネルサービスにおいて24時間ニュースチャンネルは重要であり、2008年に、トップ3のCNN、Fox News、MSNBCの視聴者数は35%増えたのが、2012年の成長率は3%でしか無かった。Pew Research Centerの報告では、30歳以下の人で通常にローカルTV局のニュースを見ているのは2006年では42%であったのが、2012年には28%に減っている。これに対して、モバイルデバイスでニュースを見ていると答えた人は2011年の34%から2012年には39%に増えている。
500万世帯はアメリカ全世帯の4.2%で、そのインパクトは小さい。また、テレビ放送を見ていなかった世帯は2007年に200万世帯はあり、500万世帯のすべてがインターネットがあるからテレビ放送を止めた訳ではない。しかし、テレビ放送は全く見なくなり、すべてのビデオはオンデマンド視聴になっている世帯が出始めている。モバイル端末の普及により、視聴形態はさら変わって行くであろう。
|