モーバイル電話・スマホ・タブレットの出荷状況(2013 3Q)
2013年12月1日号
本号では、主としてIDC社のデータを基にして、2013 3Qにおけるモーバイル電話、スマホ、タブレットのグローバル出荷数の数値を紹介する。
2013 1Qの資料に基づいた同様の数値紹介は、すでに本年5月に行っている。この機会に、併せてお読み頂ければ幸いである(注1)。
各表の数値が示す意味について、IDC社の説明、筆者の感想をないまぜにした多少のコメントを付した。しかし、こういった簡潔な数値の表示からでも、ワイアレス、ワイアラインのインターネットに接続し音声、映像、データ、娯楽、さらには、ボツボツ開始され始めた電気製品との相互接続(ユビキタス)等、多様なサービスを生み出しつつあるネット接続コンピューティング機器(モーバイル、スマホ、PC、タブレットの仮称)が、激しい競合の下で、いかに力強く成長しているかが理解できよう。
ただ、2013 3QのPC出荷数については、恒例のGartner社による確定数値が、未発表である。しかし同社は、速報値として、2013 3QにおけるPC出荷数は8030万台であって、2012 3Qの8.6%減であると発表した(注2)。
1年ほど前から始まったPCの減少傾向は、幾つもの調査会社が予測するとおり、今や不可逆的な段階に入ったというべきであろう。
スマホ出荷数:依然として続く急成長、トップの地位を確定したSamsung(注3)
表1 2013 3Qにおける世界5大メーカのスマホ出荷数(単位:100万)、市場シェア
メーカ名 | 2013 3Q 出荷数(シェア) | 2013 2Q 出荷数(シェア) | 増減比 |
Samsung(韓) | 81.2(31.4%) | 57.8(31.0%) | +40.5% |
Apple(米) | 33.8(13.1%) | 26.9(14.4%) | +25.7% |
Huawei(中) | 12.5(4.8%) | 7.1(3.8%) | +76.5% |
Lenovo(中) | 12.3(4.7%) | 6.9(3.7%) | +77.6% |
LG(韓) | 12.0(4.6%) | 7.0(3.8%) | +71.4% |
その他メーカ | 106.6(41.3%) | 80.5(43.2%) | +32.4% |
計 | 258.4(100%) | 186.2(100%) | +38.8% |
2013 3Q、スマホ販売市場におけるSamsungの優位は、一層確実なものとなった。
Appleは、iPhone5S、5Cの新機種を9月中旬に市場に出し、当初、同社のプレス報道では、発売後数日で900万台を販売したと、これら機種の売れ行きの爆発的成果を誇示したのであるが、同社の20日超の新機種出荷数を折り込んだ表2のApple出荷数から見ると、同社への新機種の寄与は、さほどのものでもなかったようである。もっとも、Apple新機種のもたらすインパクトは、これら機種が全決算期間のすべてをカバーする2013 4Qの決算数値を見ないと断定的なことはいえない。
3位メーカのHuaweiは、中国市場(出荷数の3分1超を吸収する)を主な販売先として、スマホ出荷を伸ばしている。もっとも同社は、米国、欧州市場への輸出にも力を入れており、それぞれ100万台超の出荷を行った。
本来PCメーカであるが、最近、スマホ市場への進出も強めているLenovoも、中国市場を中心に大きく出荷を伸ばしており、3位のHuaweiに迫る勢いである。同社は、ラテンアメリカ、中近東への輸出も進めている。
韓国メーカLGは、出荷数において、Huawei、Lenovoと競い合っているが、同社は、高性能機種Optimus機種の販売に支えられている点が特色である。
5大メーカ以外の出荷数シェアは41,3%であるから、まだまだ新規業者参入の余地がある。今後ますます、スマホは、激しい競争の下で、業者間の競争、新機種の出現が行われていくだろう。ちなみに、5大メーカにリストアップされていないにせよ、わが国のソニーは、多分この期、1000万台近くのスマホを販売し、健闘している。
モーバイル電話の出荷数:成長率は鈍化、草刈場と化したNokiaの既存市場
表2 2013 3Qにおける世界5大メーカのモーバイル電話機出荷数(単位:100万)、市場シェア
メーカ名 | 2013 3Q 出荷数(シェア) | 2013 2Q 出荷数(シェア) | 増減比 |
Samsung | 115.4(24.7%) | 103.8(23.4%) | +11.2% |
Nokia | 64.6(13.8%) | 82.9(18.7%) | -22.1% |
Apple | 33.6(7.2%) | 26.9(6.1%) | +25.7% |
LG | 16.8(3.6%) | 14.4(3.3%) | +16.7% |
Huawei | 14.6(3.1%) | 11.2(2.5%) | +30.4% |
その他メーカ | 222.7(47.6%) | 203.5(46.0%) | +9.4% |
計 | 467.9(100.0%) | 442.7(100%) | +5.7% |
表3 2013 3Qにおけるスマホ出荷数、スマホ外電話出荷数の比較(単位:100万)
項目 | 2013 3Q | 2013 2Q | 2013/2012 増減比 |
スマホ | 258.4(55.2%) | 186.2(42.0%) | +86.2% |
スマホ外電話機 | 209.5(44.8%) | 256.5(58.0%) | -18.3% |
計 | 467.9(100%) | 442.7(100%) | 5.7% |
スマホの他、通常のモーバイル電話、フィーチャー・モーバイルフォンを含んだすべてのモーバイル電話機の出荷数は、表2に示す通りである。
Lenovoを除き、Samsung、Apple、Huawei、LGとスマホの順位表でもリストアップされたメーカが5大メーカとされているが、かってのモーバイル電話業界の覇者、Nokiaが、携帯電話総体では、依然Samsungに次いで2位の地位を占めている点が注目される。
もっとも同社は、昨年同期に比し、22.1%と大幅に出荷数を減らしている。他のメーカがいずれも2ケタ台の大きな出荷数増を示しているのと対比すると、その転落振りが際立つ。Nokiaは今や、他の携帯電話会社の草刈り場と化してしまった。
表3は、スマホとスマホ外の出荷数の比較を示したものである。グローバルに見て、スマホ55%に対しスマホ外45%と、スマホが、スマホ外モーバイル電話を上回る傾向が定着したことを示す。
OS別スマホ出荷数:Android、iOSによる寡占が進む(注3)
表4 2013 3Q/2012 3QにおけるOS別スマホ出荷数(単位:100万)
項目 | 2013 3Q | 2012 2Q | 2013/2012 増減比 |
Androids | 211.6(81.0%) | 139.9(74.9%) | +51.3% |
iOS | 23.8(12.9%) | 26.9(14.4%) | +25.6% |
Windows Phone | 9.5(3.6%) | 3.7(2.0%) | +156.0% |
Black Berry | 4.5(1.7%) | 7.7(4.1%) | -41.6% |
その他 | 1.7(0.6%) | 8.4%(4.5%) | -80.1% |
計 | 26.1(100%) | 186.7(100.0) | +39.9% |
表4に、OS別の出荷数を示す。スマホが使用するOSは、Android、iOS、Windows Phoneで全市場の97.7%を占めており、他のOSが、今後のスマホ市場で多少の存在を示し得る余地は、ほとんどない。スマホの先駆企業であり、かっては、大きなシェアを有していたカナダメーカのBlack Berryも4G機器の提供で出遅れ、目下存亡の危機に立たされている。
前年同期対比の増減率でみると、Microsoftが開発したWindows Phoneは、最近、同社の部門に編入されたNokiaの主力スマホ製品、Lumiaシリーズに搭載されているのであるが、四半期に950万程度の出荷数では、とても成功したとは言えまい。
タブレット出荷数:成長が止まったAppleのiPad
表5 2013 3Qにおける5大メーカのタブレット出荷数(単位:100万)(注4)
メーカ名 | 2013 3Q出荷数(シェア) | 2012 3Q出荷(シェア) | 13/12増減比率 |
Apple | 14.1(29.6%) | 14,0(40.2%) | +0.6% |
Samsung | 9.7(20.4%) | 4.3(12.4%) | +123.0% |
Asus | 3.5%(7.4%) | 2.3(6.6%) | +53.9% |
Lenovo | 2.3%(4.8%) | 0.4(1.1%) | +420.7% |
Acer | 1.2%(2.5%) | 0.3%(0.9%) | +346.3% |
その他 | 16.8(35.5%) | 13.5(38.8%) | +36.7% |
計 | 47.6(100%) | 34.8(100%) | +36.7% |
タブレットの歴史は、Appleが2010年4月に販売を開始したiPadに始まる。スマートなデザイン、大画面で携帯PC、モーバイルフォン、e-ブック等、多目的に利用できるこのIT機器は、たちまち多くの顧客を引き付け、3年半後の今日、四半期で4760万台もの出荷数を生み出す大産業を生み出した。
Appleは、依然、トップメーカではあるが、2013 3Q期、出荷数は全前年同期に比し0.6%の増と、ほぼ横ばいになるほどまでに成長を減らした。もっともこれは、同社の新機種、iPad Air、iPad Miniの発売を期待しての顧客の買い控えによるものと見られ、IDCは、次期2013 4Q期、Appleは大きく出荷数を伸ばすものと予測している。
今や、スマホ業界の覇者となったSamsungは、タブレット販売の分野でも、年間、倍増する勢いで出荷数を伸ばしている。この傾向が進めば、タブレットの分野でも、Appleの首位の座を脅かす存在になりかねない。
3位から5位までのタブレットメーカ、Asus、Lenovo、Acerは、いずれも、もともとノートパソコンの専用メーカである。タブレットが市場に出始めた当時、いち早く、新製品を市場に投入したのは、Microsoft(タブレットのブランド名、Surface)、Amazon(タブレットのブランド名、Kindle)であった。しかし、表5からすると、それぞれPCの巨大ソフト企業、世界最大のインターネットによる商品販売企業が売り出したタブレット製品は、販売が伸び悩み、PC専用メーカに追い抜かれたといえる。これは、タブレットにより、PC市場を大きく浸食されたPCメーカによる捨身の巻き返しが効を奏したものと見てよかろう。
PC、タブレット、スマホの2013、2017年次における出荷数予測(注5)
表6 PC、タブレット、スマホの出荷数予測(2013/2017 単位:100万台)
項目 | 2013出荷数(シェア) | 2017出荷(シェア) | 17/13増減比率 |
デスクトップPC | 134.4(8.6%) | 123.1(5%) | -8.4% |
ポータブルPC | 180.9(11.6%) | 196.9(8%) | +8.7% |
PCの計 | 315.3(20.2%) | 319.7(13.0%) | +1.4% |
タブレット | 227.3(14.6%) | 406.8(16.5%) | +78.9% |
スマホ | 1013.2(65.1%) | 1.733.1(70.5%) | +71.1% |
計 | 1,556.8(100%) | 2.460.5(100%) | 58.1% |
最後に、同じく、IDC社によるPC、タブレット、スマホの2013末、2017末における出荷数予測値を見ておこう。
この表では、2017年には、タブレットの出荷数は、大きくPCを抜き去り、コンピューティング機器業界のなかで、スマホに次ぐ確固たる地位を獲得すると予測されている。
表に示されてはいないが、IDC社統計によれば、2013年第4四半期において、タブレットの出荷数は、PCのそれを上回るという。
上表のなかで、2017年において、2013年に比し出荷数が減少しているのが、デスクトップコンピュータであることは、象徴的である。固定回線によるインターネット利用の最初の典型的な利用端末であるデスクトップが、2017年に、すべてのコンピューティング機器のなかで5%の比率にまで落ち込んでしまったということは、いかに、インターネット利用において、ワイアライン→ワイアレス、据え付けタイプ→ポータブル、重厚→軽量への変貌が生じているかを示すものである。
(注1) | DRIテレコムウォッチャー、2013年5月15日号、「急ピッチで進むスマホ、タブレットによるPC市場の浸食」。 |
(注2) | 2013.10.10付け、http://www.ciol.com、"Worldwide PC shipments to decline 8.5% in 3Q 2013." |
(注3) | 表1、2、3は、いずれも次のIDC社プレスレリースから作成した。 2013.10.29付け、http://www.idc.com、"Record Smartphone Shipments Grow the Market 38,8% in the Third Quarter of 2013, Making Way For A Strong Holiday Quarter." |
(注4) | 2013.11.23付け、http://www.idc.com、"Android Pushes past 80% Market Share While Windows Phone Shipments Leap 156.0% Year over Year in the Third Quarter." |
(注5) | 2013.9.11付け、http;//www.businesswire.com/news、"Tablet Shipments Forecast to Top Total PC Shipments in the Fourth Quarter of 2013 and Annually by 2015, According to IDC." |
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