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DRI テレコムウォッチャー


  大きく進展したスマホ、タブレットPCによるモーバイル電話、PCの市場攻略
;2012年次の出荷数統計から

2013年3月1日号

 今回は、2012年通年の出荷数統計(IDC社による)が発表された機会に、スマホ、PC、タブレットPCの2012年通期の出荷数の数値をそれぞれの機種の5大メーカ別内訳も添えて紹介する。
 モーバイルによるコンピューティング機能を備えた機器が圧倒的な人気を博すようになってきた状況を反映し、スマホ、PC、タブレットPCの業界が激しく動いている。
 特に、2012年末から2013年始めに掛けて明らかになってきた新しい現象は、これまで確固とした基盤の下に着実な成長を続けてきたPCメーカのPC出荷数が、初めて減少に転じたことであった。
 テレコムウォッチャーは、このような状況、動向について、2012年末から2013年初めに掛けて、4編の記事を発表してきた(注1)。今回の記事は、従来の紹介記事を踏まえての2012年末の時点における統計数値の紹介である。紙幅の関係もあり、数値の意味するところの説明は、手薄なものになってしまったことをお断りしておく。
 以下、この前書きでは、2012年次における各機種別出荷数および2011年対比増減数の数値を、本文における個別の統計数値の集約として示す。

 

表1 2012年通期におけるモーバイル電話、スマホ、PC、タブレットPCの出荷数
及び2011年対比増減比(単位:100万)
機種2012年出荷数2012/2011 増減比
モーバイル電話1712.6(スマホを含む)-0.2%
スマホ545.2+10.1%
PC(DT、ノートパソコン等)352.4-3.2%
タブレットPC122.7+45.1%

 上表により、モーバイル電話、PCの出荷数の減少が成長率の高いスマホ、PCの増によりもたらされたことが明らかである。
 特に、タブレットPCの伸び率は高い。2012年次の出荷数は、PC出荷数を上回るものと、予測されている。


携帯・スマホの出荷数(注2)

 

表2 2012年通年における世界5大モーバイル電話メーカの出荷数、市場シェア(単位:100万)
メーカ名2012年出荷数
(シェア)
2011年出荷数
(シェア)
2012/2011増減比率
Samsung406.0(23.7%)330.9(19.3%)+22.7%
Nokia335.6(19.6%)416.9(24.3%)-19.5%
Apple136.8(8.0%)93.1(5.4%)+46.9%
ZTE65.0(3.8%)69.5(4.1%)-6.5%
LG55.9(3.3%)88.1(5.1%)-36.5%
その他713.3(41.6%)716.8(41.8%)-0.5%
1712.6(100.0%)1715.3(100.0%)-0.2%
  • 携帯電話出荷数は、ついに前年対比マイナスとなった。
  • 首位のメーカは、Samsungであり、往年の覇者、Nokiaは、大きく出荷数を減らしながらも2位の地位を保持した。
  • 5大メーカのうち、Samsung(韓国)、ZTE(中国)、LG(韓国)と3社のアジア勢の健闘ぶりが際立っている。

 
表3 2012通年における5大スマホ・メーカのスマホ出荷数・市場シェア(単位:100万)
メーカ名2012年出荷数
(シェア)
2011年出荷数
(シェア)
2012/2011増減比率
Samsung215.8(39.6%)94.2(19.0%)+129.1%
Apple136.8(25.1%)93.1(18.8%)+46.9%
Nokia35.1%(6.4%)77.3(15.6%)-54.6%
HTC32.6(6.0%)51.1(10.3%)-25.2%
RIM32.6(6.0%)51.1(10.3%)-36.4%
その他92.4(16.9%)136(27.5%)-32.1%
545.2(100%)495.3(100%)10.1%
  • スマホでは、SamsungとAppleがますます、市場シェアを伸ばし、両者で市場の約3分の2の地位を占めるに至った。寡占的な現象である。
  • Nokiaは、4位のHTC、RIMとほとんど同等のシェアで3位の地位を保っている。しかし、そもそも、出荷数統計自体が推計部分を含むので、果たして、Nokiaの数値が本当に、HTC、RIMに比し優れた値であるかどうかには、疑問がもたれないわけでもない。周知のとおり、Nokiaは、MicrosoftのOS、Windows Phoneを使用し、Lumiaシリーズの機種を投入してスマホ市場で体制の立て直しを図っているが、その成果はいまいちである。

 
表4 2012 4Qにおける5大スマホ・メーカのスマホ出荷数・市場シェア
メーカ名2012 4 Q出荷数
(シェア)
2011 4Q出荷数
(シェア)
2012/2011比率
Samsung63.7(29.0%)36.2(22.5%)+76.0%
Apple47.8(21.8%)37.0(23.0%)+29.2%
Huawei10.8(4.9%)5.7(3.5%)+89.5%
Sony9.8(4.5%)6.4(4.0%)+55.6%
ZTE9.5(4.3%)6.4(4.0%)+48.4%
その他77.8(35.5%)69.2(43.1%)+12.4%
219.4(100.0%)160.8(100.0%)36.4%
  • 表4で2012年第4四半期の統計を見ると、5大メーカの顔ぶれが異なり、また、前年対比の増減比が軒並み向上しているのに驚かされる。これは、この四半期、LTE対応の機種が市場に大量に出たこと。クリスマス商戦の影響等もあり、スマホの出荷数が軒並み、大きく伸びたことによるものである。
  • 第3位以下のメーカでは、Huawei(中国)、Sony、(日本)、ZTE(中国)の3メーカが、ほぼ、同程度のシェアで一線に並んでいる。
  • Sonyは、かってスウエーデンの電気通信メーカのEricssonと合弁でスマホの製造に当たっていた。合弁解消後、市場に出しているスマホの最新鋭LTE対応Xperiaの売上げが好調であって、2012年後半に至り、トップメーカ第4位の地位を得たことは喜ばしい。

PCの出荷数統計(注3)

 第5表は、2012年通期におけるグローバルなPC出荷数を示したものである。
 2012年次初頭は、年内、多分、出荷数一桁の成長を維持できるだろうと推計されていたものであったが、期を追うに従い予測は厳しくなり、年次後半には、2011年対比成長率が低下するのも、無理はないとの見方が強まった。
 結果は、2011年対比、マイナス6.5%という極めて、厳しいものであった。メーカ別に見ると。首位メーカのHPは、減速しながらも、ようやく、首位の地位を保った。
 廉価なセールスを武器にして、急速に売り上げを伸ばしているLenovo(中国)が売り上げを大きく、伸ばしている。
 需要のサチュレーション、さらには、スマホ、タブレットPCとの競争等により、重大な岐路に差し掛かったPCメーカは、2012年後半以来、将来、強い成長が見込まれるタブレットPCの分野に生産の軸足を移し始めている。

 

表5 2012年通期におけるトップPCメーカのPC出荷数(単位:1,000)
メーカ名2012 通期出荷数
(シェア)
2011 通期出荷数
(シェア)
2012/2011比率
HP58,129(16.5%)62,431(17.1%)-6.9%
Lenovo52,448(14.9%)44,016(12.1%)+19.1%
Dell38,718(11.0%)44,278(12.2%)-12.6%
Acer Group33,494(9.5%)37,073(10.2%)-9.7%
Asus24.134(6.8%)20,619(5.7%)+17.0%
その他145,498(41.3%)155,580(42,8%)-6.5%
352,421(100.0%)363,887(100.0%)-3.2%

表6  2012年4Qにおけるトップ5メーカのPC出荷数(単位:1,000)
メーカ名2012 4Q出荷数
(シェア)
2011 4Q出荷数
(シェア)
2012/2011比率
HP15,023(16.7%)15,113(15.8%)-0.6%
Lenovo14,105(15.7%)13,040(13.6%)+8.2%
Dell9,482(10.6%)11,967(12.5%)-20.8%
Acer Group6,959(7.8%)9,692(10.1%)-28.2%
Asus6,467(7.2%)6.126(+6.4%)+5.6%
その他37,753(42,0%)39,974(41.7%)-5.6%
89,789(100.0%)95.913(199.0%)-6.4%


タブレットPCの2012年出荷数(注4)

 タブレットPCの2012年四半期別出荷数は、次のとおりである。
   1Q:17,4million  2Q:25,4million  3Q:27,8million  4Q:52.5million
              2012年計 122,7million

 2011年の計は80millionであったので、2012年の前年対増加率は、45.1%である。
 表7に、メーカ別タブレットPCの出荷数を示す。

 

表7 2012 4Qにおけるトップ5大メーカのタブレットPCの出荷数(単位:100万)
メーカ名4Q 20124Q20112012/2011比率
Apple22.9(43.6%)15.5%(51%)48.7%
Samsung7.9(15.1%)2.2(7.3%)263.0%
Amazon6.0(11.5%)4.7(15.9%)26.8%
Asus3.1(5.8%)0.6(2,0%)402.3%
Barnes & Noble1.0(1.9%)1.4%(4.6%)-27.7%
その他11.6(22.1%)5.5%(18.5%)108.0%
52.5(100.0%)29.9%(100.0%)75.3%

 

 iPadにより、タブレットPCという新製品の分野を切り開いたAppleが、依然、圧倒的な出荷数を誇っているが、競争業者の参入が最も激化しつつあるこの分野で、次第にシェアを減らしていることも、事実である。


(注1)以下のDRIテレコムウォッチャー各号。
  2012年12月1日、「Samsung、スマホ市場でAppleとの差を広げる:凋落著しいNokia」
  2013年1月1日、「2013年は“タブレットPCの年”」
  2013年1月15日、「2013年初頭の所感:着実に実現しつつあるIT革命」
(注2)2013.12.5付け、http://www.phonearena.com、”IDC; Huawei behind Samsung and Apple in Q4 global smartphone market share.”
2013.1.25付け、http://www.itweb.co.za/index.php、”Cheap smartphone on the rise.”
(注3)2013.1.10付け、IDC-Press Release、”Soft PC Shipments in Fourth Quarter Leads to Annual Decline as HP Holds Onto Top Spot, According to IDC.”
(注4)2013.1.31付け、http://www.macrumors.com、”Apple’s Share of Worldwide Tablet Shipments Slips to 43,6% in 4Q 2012.”



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