Netflix等のOTT-V(オーバー・ザ・トップ・ビデオ)サービスの普及により、テレビ放送の視聴は減っていくとの意見がある。アメリカの視聴率調査会社のNielsenが発表した2012年第1四半期のビデオ視聴の統計によると、1日の平均テレビ放送視聴時間は4時間38分で、2011年1Qの4時間46分から8分減っている。しかし、DVRでの視聴は12分から24分へと増えており、ライブとタイムシフトを加えたテレビ番組の視聴は、2011年1Qから4分増えている事になる。
2011年1Qから2012年1Qでは、DVDの視聴が1日平均19分から12分へと減っている。これは、Netflix等の影響が多分にあるであろう。また、ビデオ・ゲーム機の利用が9分から14分に増えている。ゲームソフトウェアの売上が落ちている中、不思議に思われるが、ゲームを遊んでいるのではなく、ゲーム機でインターネットビデオを見ている時間が増えているであろう。
OTT-Vはテレビ視聴を減らしているか? Netflixの利用者に関してでは、その傾向は無いようだ。調査会社のGfKが9月に行った調査では、Netflix利用者の68%は、Netflixを見始めたことで、テレビでのドラマ番組の視聴は減っていないと答えている。22%は、Netflixによりテレビでのドラマ番組を見る事が増えてと答えており、減ったと答えているのは10%でしか無い。GfKの調査ではNetflix利用者の26%はテレビで放送される映画の視聴も増えていると答えている。
しかし、多チャンネルサービスへの加入が減ってるのも事実である。Nielsenの統計では、多チャンネルサービスへの加入世帯は2011年1Qの1.046億から2012年1Qでは1.032億に減っている。電話事業者のビデオサービスは765万世帯から889万世帯に増えたが、ケーブルTVは6,265万世帯から5,981万世帯、衛星放送は3,430万世帯から3,457万世帯へと減っている。
多チャンネルサービス加入者の減少には、Netflix等のOTT-Vサービスの普及が影響をしていることは確実である。しかし、それだけでは無い。減っているのは多チャンネルサービスへの加入者だけでなく、地上波だけの世帯も1,119万世帯から1,107万世帯へと減っている。全世帯数は減っていないので、テレビ視聴世帯率が減っていることになる。Netflix等の加入により、多チャンネルサービスをやめたとしても、無料で見られる地上波も見なくなることはないでろう。
このTV視聴世帯の減少は3年続いている。最初はデジタル移行で、アナログテレビが使えなくなった事が理由で、一時的と思われたが、そうではない。何が理由であるかは分からない。多チャンネルサービスに加入し、Netflixに加入し、ビデオの視聴が増えている世帯が増えていると同時に、テレビをまったく見なくなった世帯も増えている。
出典:Nielsen