NBC SportsのCEOは、NBCUniversalのロンドンオリンピックの放送を「伝統と革新のミックス」と形容した。NBCUniversalの地上波ネットワークのNBCが行った番組作りは、伝統的にプライムタイム重視であった。開幕式、閉幕式、それに一部の重要な試合は、ライブ無しで地上波のNBCだけがプライムタイムで放送した。
しかし、これと同時にNBCUniversalは革新的な試みをした。その多チャンネルネットワークのNBC Sports、MSNBC、CNBC、Bravoを使い、多くの試合をライブで中継した。また、Olympics BasketballとOlympics Soccerの臨時チャンネルを作り、他チャンネルサービスではバスケットボールとサッカーの全試合を放送した。さらに、テレビでテレビで中継されることの無い他の試合の殆どすべてをインターネットで配信した。
インターネットでの試合の中継を見るのには、多チャンネルサービスに加入している事が条件であり、最初に登録をする必要があった。地上波のNBCで放送されているオリンピック番組以外の全オリンピック番組、それにテレビ中継のない番組の殆どすべてがNBCOlympicsのウェブ、モバイルウェブ、それにiOSとAndroidのアプリで配信された。殆どの試合はライブであったが、テレビで放送される試合は、テレビでの中継まで配信されなかった。試合はオンデマンドでも視聴可能で、現在(8月21日)でも視聴可能になっている。
オリンピック開始前は、NBCUniversalの戦略には悲観的な意見がほとんどであった。インターネットでニュースを瞬時に知ることが出来る現在、プライムタイム重視で放送するNBCの考えは陳腐化しており、視聴率は過去最悪になると予想されていた。さらに、多チャンネル、それにインターネットでライブ中継をする事は、NBCのプライムタイムでの放送の価値を減らし、共食いになるとも予想された。
この予想は大きく外れた。17日間のNBCのオリンピック放送の視聴者数は2.19億人で、北京オリンピックの2.15億人を2%上回った。多チャンネルネットワークでの中継の視聴率も良く、ネットでの配信も利用が多かった。オリンピックのビデオを見たユニークユーザ数は5710万人で、1.593億本のビデオが配信され、その内6440万本がライブ配信であった。NBCUは最初、オリンピック放送は2億ドルの赤字になると発表していたが、多チャンネルネットワーク含め、広告が売れ、最終的には損益は無くなるとの楽観的な表現に変わった。
ロンドンオリンピックは、これまで最高のソーシャルなイベントでもあった。オリンピック全体に対するソーシャルコメントは8260万で、内、NBCの放送に係るものは3270万であった。オリンピック開始前は、ライブの放送(配信)、それにツイート等のSNSにより、プライムタイムの放送を見る必要が無くなるとの予測であった。しかし、実際には、ライブで良い試合が放送(配信)されるとソーシャルコメントが増え、その日のNBCのプライムタイム放送の視聴率も増えた。ウサイン・ボルトが200メートルで優勝した時点のツイート数とそれをNBCがプライムタイムで放送した時点ででのツイート数はほぼ同じであった。すでに結果は知っていても、話題になった試合はやはり、プライムタイムに見、そして、それはライブと同じような反応を与えた事になる。