スマートTV、あるいはコネクテッドTVと呼ばれるインターネットビデオに対応したTVが急成長を見せている。調査会社のDisplaySearchによると、現時点で出荷されているTVの20%はインターネット対応であり、今年の末にはその率は25%に達し、2015年には47%のTVがインターネットビデオに対応したスマート/コネクテッドTVになる。この傾向は世界的であり、どの国でもスマートTVの出荷が伸びている。
世界的にそれほどにインターネットビデオの利用が進んでいるのか? 答えは、NOの様である。DisplaySearchの統計では、インターネット対応TVの普及率がブロードバンドの普及率を越えてる国もあり、スマートTVの全てがインターネットビデオの視聴に使われてはいない。別の調査会社のStrategic Analysisによると、欧州のスマートTVユーザの33%は、スマートTVをインターネットにつないでない。つないでいるユーザにしても、スマートTVで、インターネットビデオを1週間に1回以上見るのはたったの9%でしかない。
消費者は、スマートTVとは高画質の画像を提供する事が目的と思っている様だ。イギリスのYouGovが行った調査では、スマートTVの購入を検討している人の内、TVをインターネットに接続する事を予定しているのは、37%でしかなく、スマートTV購入理由のトップは画質(96%)、画面サイズ(93%)、音質(89%)であった。スマートTVをすでに購入している人の間でも、スマートTVはインターネット接続が出来るTVと知っていたのは53%でしかなく、25%はスマートTVを購入しても、インターネットには接続していない。
インターネットで配信されているビデオを見ている率が最も高い国はアメリカである。Netflixは2340万のストリーミングサービスへの加入者を持ち、Huluの月間ユニーク利用者数は3100万を超えている。調査会社のLeichtman Research Group(LRG)が行った調査によると、アメリカの世帯の38%がインターネットビデオをTVで見ている。しかし、皮肉な事にDisplaySearchの統計では、アメリカはスマートTVの出荷率が最も低い国である。
LRGによると、アメリカでは、全世帯の28%の世帯(インターネットビデオをTV見ている世帯の74%)が、ゲーム機でインターネットビデオを見ている。その中ではアメリカ国内の設置台数が2500万台以上あるXbox 360の利用が多い。MicrosoftはXbox 360をゲーム機ではなく、エンターテイメントデバイスとして位置付けようとしている。その戦略は成功をしているようで、Xboxを音楽、映像等のアクセスに使う時間が、ゲームで使う時間を超えている。
アメリカでスマートTVが売れていないことは特に不思議ではない。アメリカはTVに対しては現実主義で、高機能なTVは売れない傾向がある。Netlixを見るために、新たにスマートTVを購入するのではなく、持っているゲーム機を使う事は納得出来る。しかし、ブロードバンドの普及が低い国でもスマートTVがポピュラーになっている事は不思議である。TVメーカーは、意図的に消費者を混乱させ、スマートTVを売り込んでいるのか。それとも、TVメーカーの説明が悪く、消費者が無知なのであろうか。