2012年のCES入場者は153,000人で過去最大であった。しかし、Microsoftは、今年のCESを最後に出展をしないと発表しており、CESの今後に対する疑問も出ている。Comdexが駄目になった事で、PCベンダーはCESを支持してきた。しかし、PCベンダーに取り、コンシューマ市場はその市場の一部でしかない。ビジネス市場にアピールするなら、CESより効果的な方法があり、Microsoftに続き、CESでの展示をやめる会社も出ることは確実である。
しかし、これはCESの下降を意味している訳ではなく、CESが変わっていく事を表している。CESはこれまで、TV、VTR、PC等、ハードウェアの展示会であった。それが、サービス、コンテンツ主体に変化をしている。2013年のMicrosoftの展示スペースの権利の半分を買ったのが、衛星TV事業者のDish Networkであることが、この動きを良く表している。
ハードウェアからサービス/コンテンツへの移行を進めている要因はインターネットであり、映像事業においては、それはスマート(コネクテッド)TVである。これまで、ハードウェア(TV)とサービス(放送)は異なる次元の物であった。TVを買えば、TV放送を見る事が出来た。それが、ケーブルTVの普及で変わり、OTT-V(オーバー・ザ・トップ・ビデオ)で大きく変わろうとしている。
スマートTVは、ハードウェアとサービスの境界線を不明瞭にしている。ハードウェア(TV)ベンダーは、提供するスマートTVのアプリにより、どのサービス(コンテンツ)をその購入者に提供するかを決める事が出来る。放送では、特定のチャンネルしか見ることが出来ないTVは作れないが、スマートTVでは特定のOTT-V事業者だけをサポートする事も出来る。
これまで、TVは公平にコンテンツを提供してきたので、サービス(コンテンツ)事業者はCES等で、ハードウェアベンダーにその価値をアピールをする必要が無かった。しかし、OTT-Vの世界ではこれまでの常識が通用しない。Sony PicturesがOTT-VサイトのCrackelを運営している様に、コンテンツ事業者は、自ら配信サービスを提供する事が出来る。また、Appleの様に、ハードウェア事業者が配信サービスで成功する可能性もある。
OTT-Vは、パソコン、スマートフォン、タブレット等でも視聴可能だが、その成功にはTVプラットフォームで支持される事が重要である。スマートフォンで視聴するより、大画面のTVの方がインパクトがあり、コンテンツの価値も高くなる。スマートTVをめぐるサービスでは、まだ勝者が見えていない。音楽では勝利を収めたAppleもストリーミングビデオでは、優位にはなっていない。一時は優勢であった、Netflixの勢力も鈍り始めている。GoogleはYouTubeをベースに有料VODに拡張し、さらにGoogle TVでスマートTVの標準となる事を狙っている。ケーブルTV事業者は、STBを使わずに直接にスマートTVにそのサービスを配信をする事で、OTT-Vに対抗をしようとしている。Dishは、その衛星放送に加え、Blockbusterを買い、多チャンネルとOTT-Vの融合を狙っている。MicrosoftがCESからの撤退した事で、CESを支えていく話題が無くなっている訳ではない。