DRI テレコムウォッチャー  from USA

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 放送/メディア会社、通信事業者・機器ベンダを対象としています。


Verizon、ケーブルTV事業者と手を組む
  (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.91)
2011年12月20日号

 電話事業者とケーブルTV事業者は、競合をして来た。1990年代に電話事業者はTVサービスの提供に興味を示し始め、規制改正のロビーを始める。これに対しケーブルTV事業者は、電話事業者がDSLを始めるよりも早く、ケーブルモデムを提供し、それに続き、固定電話サービスにも参入する。

 2000年代中期には、AT&T、Verizon共にケーブルTV事業者に対抗する多チャンネルサービスの提供を開始する。彼らは積極的に地上回線をアップグレードし、多チャンネルサービスが提供可能な地域を増やしていった。これに対抗する為、ケーブルTV事業者は、Sprintと手を組む等して、モバイル通信に乗り出していた。

 AT&T、Verizon共に、現在では多チャンネル事業者としてトップ10入りをしている。しかし、その為に大きな投資をし、回収は出来ていない。同時に、地上波回線とモバイル網のアップグレードをする事は出来ない。最近は、AT&T、Verizonは地上回線のアップグレードの計画は中止し、モバイル網に力を入れていた。

 ケーブルTV事業者に取り、モバイル通信事業への参入は、もっと困難であった。Comcast、Time Warner Cable、Cox、Bright Houseは、Sprintと協力して市場参入をするが、失敗となる。その後、Coxは自社でLTE網の構築を始める。Comcast、Time Warner Cable、Bright Houseは、Sprintと共にClearwireに投資をする。しかし、Clearwireは予定通りに進まず、Comcast等は数カ所で、Clearwireのサービスを再販しているだけである。CoxのLTE計画も失敗し、自らモバイル網を構築する計画は中止になっている。

 VerizonとケーブルTV事業者は、これ以上競合をするのではなく、協力していくことを発表した。Comcast、Time Warner Cable、Bright Houseは、モバイル通信のために共同で、落札してきたAWS帯域(1.7/2.1 GHz)をVerizonに売り、Verizonのモバイルサービスの再販を含めた、販売面での協力をしていく。Coxも別途、同様な契約を結んでいる。

 これは、他の事業者に様々なインパクトを与えている。Verizonは、FiOS TVを提供していない地域では、衛星TVのDirecTVを再販し、さらにDirecTV加入世帯に対して、LTEを使った固定ブロードバンドサービスを提供するプロジェクトを進めていた。Verizonは、このプロジェクトは中止になった事を発表している。DirecTVは無線ブロードバンドのパートナーを失い、さらに衛星TVの再販契約も失うかも知れない。

 これは、AT&Tにも大きなインパクトを与える。競合のVerizonは、ケーブルTV事業者から帯域を得、さらに大きなパートナーシップを作っているのに対して、AT&TによるT-Mobileの買収は駄目になった。衛星TV事業者のDishは、T-Mobileを狙うとの噂がある。Dishは競売、あるいは買収で帯域を貯めており、無線ブロードバンドへの参入の意志を示している。逆に、DishがAT&Tの新たな買収の標的になる可能性もある。Dishは、帯域を持っており、さらに多チャンネルサービス、ビデオレンタルのBlockbuster等も持っている。AT&TがVerizonと対抗するのには、Dishは良い買収候補である。

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