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UltraVioletがスタート  (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.89)
2011年10月20日号

 映像コンテンツの購入はこれまで媒体ベースであった。DVDで映画を買っても、Blu-rayで欲しければ、買い直しであり、また、持っている映画をVudu等でストリーミングするのも有料である。UltraVioletは、これを変える仕組みであり、利用者はディスクの購入と共に様々なデバイスでその映画を視聴する権利を得る。ディスクの購入が減少し、レンタル、あるいはストリーミングが増えているが、映画会社はUltraVioletによる柔軟なライセンス形態により、コンテンツの購入を復活させようとしている。

 10月11日にWarner Brothersが最初のUltraViolet対応の映画、「Horrible Bosses」をBlu-rayで販売開始した。これに続き、Warner Brothersは10月14日には「Green Lantern(グリーン・ランタン)」を発売し、11月には「Harry Potter and the Deadly Hallow 2(ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2)」もUltraViolet対応で販売する。他の映画会社もUltraVioletに対応したBlu-rayの販売を予定し、11月にはUniversalが「Cowboys & Aliens(カウボーイ&エイリアン)」を、12月にはSony Picturesが「Smurfs(スマーフ)」をそれぞれ発売する。

 これらディスクを購入したコンシューマは、UVVU.comのウェブサイトで登録をする事で、その映画を様々なデバイスからストリーミングで視聴する事が可能になる。現時点では、視聴可能なサイト、デバイスは限られている。Warner Brothersの映画は、同社が5月に買収したFlixsterのサイトに対応したコンピュータ、それにAndroid、iOSのデバイスに限られている。UltraVioletに対応したデバイスは2012年に発売になる予定である。

 UltraVioletがディスクの売り上げを回復させる効果があるかは、UltraVioletがどれほどの支持を得られるかによる。UltraVioletの価値を出すには、それに対応した様々なデバイスが登場するだけでなく、Netflix等のポピュラーなストリーミングサイトの対応も必要である。通常、Netflixを使っている利用者にUltraVioletの映画を見るときだけは別のサイト、あるいはアプリを使わせるのでは普及は難しいであろう。

 UltraVioletには60以上の会社が参加しているが、2つ大きな会社が欠けている。1つは、コンテンツ大手のDisneyで、もう1社はデジタルコンテンツ販売の大手のAppleである。Disneyは独自のDisney Studio All Accessと呼ばれるUltraVioletに競合するプラットフォームを開発している。

 Appleは、iCloudの一環としてiTunes Marchと呼ばれるクラウドベースのサービスを音楽コンテンツで提供する事を発表している。利用者は年に$25を払うことで、自分のiTunesで管理している音楽をクラウドからストリームする事が出来る。Appleはこれと同様なサービスを映像コンテンツでも提供する事を計画している。

 UltraVioletの目的は購入したコンテンツをいつでも、どこでも楽しめるようにする事である。しかし、基本はBlu-rayディスクの販売であり、新しさは無い。また、UltraVioletは今後購入したコンテンツが対象であり、すでに購入したDVD等のコレクションは対象にならない。これに対して、AppleのiTunes Matchは以前に購入したCDをデジタルファイル化した物も対象であり、コレクションがAppleが提供する256 KbpsのACCフォーマットより劣るフォーマットでもかまわない。自分の音楽の全てがiTunesにあるとは限らなく、iTunes Matchに対応するデバイスもiOSに限られる。しかし、柔軟性としては、UltraVioletの仕組みより優っている。

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