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GoogleのMotorola Mobility買収が与えるTV業界へのインパクト
(ブロードキャスティングレビューシリーズ No.87)
2011年8月20日号

 Googleは125億ドルでMotorola Mobilityを買収する事を発表した。Googleの過去最大の買収は31億ドルでのDoubleClick買収であり、これはその4倍の規模の買収となる。GoogleのMotorola Mobilityの買収目的はそのパテント資産である。Androidをめぐり、GoogleはOracleからパテント侵害の訴訟を受けており、Androidを使ったスマートフォンを売り出しているMotorola Mobility、HTC等はApple、それにMicrosoftから訴えられている。

 Android市場を守るには、Googleにもパテント資産が必要であり、17,000のパテントを持ち、さらに7,000のパテントを申請中であるMotorola Mobility には大きな魅力がある。アナリストは、Googleが支払う予定の125億ドル中、パテントの価値が90億ドルで、Motorola Mobilityの携帯電話、放送製品事業が35億ドルと評価している。

 Androidは、AppleのiOSを抜きスマートフォン最大のOSとなっており、GoogleがMotorola Mobilityを持つ事は携帯電話市場に大きな影響をもたらす。しかし、Motorola Mobilityは、STBの大きなベンダーであり、Googleの買収はTV市場にも大きなインパクトを与える可能性がある。Motorola Mobilityは、Paceに続く、世界で2位のSTBベンダーであり、アメリカのケーブルTV向けSTBではトップベンダーである。

 Googleは、TV市場を狙っていたが、まだ成功をしていない。同社は、数年前からTV広告の販売に参入しているが、TV広告市場には殆ど影響を与えてない。また、TVをインターネットに接続し、インターネットビデオへのアクセスを提供するだけでなく、TVをインテリジェント化するGoogle TVを開発している。しかし、Google TVは大きな失敗で、Google TVの技術を使った製品は叩き売りされている。Logitechは$299のRevueを$99に値下げし、SonyもGoogle TV内蔵のTVを定価の半額で売っている。

 GoogleがMotorola Mobilityを買うことで、STBにAndroidを搭載し、Google TV機能を加えていく事が考えられる。しかし、これは、多チャンネル事業者に取り、魅力は少ない。Android、そしてGoogle TV搭載は、STBを高価にする。ケーブルTV事業者は、STBを購入し、それを貸し出しており、高価なSTBは投資回収の期間を伸ばすことになる。また、加入者を失っているケーブルTV事業者に取り、STBが高価になったからと言って、サービス料金の値上げする事も困難である。Google TVが失敗した理由も、デバイス自体を高機能化しすぎた事で、複雑になり過ぎ、値段も高くなりすぎた事だと言われており、STBをGoogle TV化しても成功はしないであろう。

 ケーブルTV事業者は一時、STBの高機能化を追求していたが、現在では、クラウド化に目を向けている。ケーブルTVのコンテンツをIPで提供する事で、STBだけなく、スマートフォン、タブレッド、コネクテッドTV等への配信が可能になる。また、DVR、ナビゲーション、検索等の機能もSTBで走らせるのではなく、クラウド上に置くことで低コストのSTBでも高度なサービスを提供する事が可能になる。Googleはクラウド・コンピューティングを進めている会社であり、GoogleがMotorola Mobilityを買収する事で、多チャンネルサービスのクラウド化が大きくと進歩すると思われる。

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