衛星放送事業者のDish Networkが、破綻法下で再建を試みていたレンタルビデオチェーンのBlockbusterを3.2億ドルで買収した。衛星放送事業者とレンタルビデオと言うのは不思議な関係でもあるが、これはNetflixが与えているインパクトの1つである。
Blockbusterは米国最大のレンタルビデオチェーンで、2004年には9,000店舗を運営していた。しかし、ここ数年でレンタルビデオ店の利用は大きく減っている。業界2位と3位のHollywood VideoとMovie Galleryは再建のために2005年に合併したが、昨年に倒産した。Blockbusterも2010年9月に経営破綻し、会社更生法の適用を受けていた。
この背景には、NetflixとRedboxがいる。Netflixは、一泊いくらのレンタル方法では無く、郵便を使った会員制のモデルを持ち込んで、成功していった。Redboxは、キオスク(自動レンタル機)を使い、一泊$1の低料金で成功している。調査会社のNPD Groupが発表したデータによると、2010年第3四半期でレンタル枚数が最も多かったのはNetflix、Blockbuster by Mail等の郵便を使った方法で、全体の41%を占めた。2位は、キオスクで31%、3位は店舗で27%であった。Blockbusterは、郵便でのレンタル、キオスク、それにストリーミングも提供していたが、その事業の中心は店舗でのレンタルで、レンタルビデオ事業の変化の影響をもろに受けた。
Netflixはレンタルビデオだけでなく、会員には追加料金なしで、映画、TV番組のストリーミングを提供し、2011年第1四半期では、アメリカでの会員数は2,280万人(カナダを加えると2,360万人)になっている。インターネットのトラフィックを調べているSandvineによると、アメリカのインターネットトラフィックのアプリケーション別シェアでは、Netflixが22.2%で最大になっている。2位はBitTorrent(21.6%)、3位はHTTP(16.8%)、4位はYouTube(8.2%)であった。
ストリーミングサービスを始めることで、NetflixはDishを含めた多チャンネル事業者の競合になり始めている。その2,360万人の加入者が全てストリーミングをしている訳ではないが、加入者数では多チャンネル事業者第1位のComcastも追い抜いている。Netflixの利用が増えることで、多チャンネルサービスの必要性が弱まり、サービスを脱退(コードカッティング)をする人が出ている事を多チャンネル事業者は恐れている。NetflixをTVで見る為のデバイスとして登場し、100万以上の設置台数を持つRokuは、その利用者の15%〜20%はすでにコードカッティングをしていると語っている。
多チャンネルサービスには、Netflixより新しいコンテンツがあるが、それも確実ではなくなっている。Netflixは3月に、オリジナルTV番組シリーズの「House of Cards」の26エピソード分の権利を落札した。Netflixが支払った価格は発表されていないが、1億ドルに近いと言われている。Netflixは、2012年後半からこの番組を独占で配信し始める。House of CardsはTVでは放送されず、これを見たければ、Netflixに加入する必要がある。
DishがBlockbusterの資産をいかに使うかは発表されていないが、レンタルビデオチェーンの再建では無いことは明らかで、Dishはすでに1,700に減っている店舗をさらに600以下まで減らす事を発表している。Dishは欲しかったBlockbusterの資産はそのブランド名とストリーミング配信のプラットフォームと思われるが、これとその多チャンネルサービスをいかに組み合わせるかは不明で、それが果たしてNetflixに対抗する物になるかは疑問である。