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iPadへのTV番組の配信をめぐるケーブルTV事業者とネットワークの争い
(ブロードキャスティングレビューシリーズ No.83)
2011年4月20日号

 多チャンネル事業者は、iPadに対して非常に高い関心を持っている。視聴者がiPadを持つことで、多チャンネル時代の問題の1つである、番組の発見を解決出来る。iPadは、TVのIPGより使いやすく、見つけたコンテンツがVODであれば、その予告編も見せる事が出来る非常にスマートなリモコンになる。さらに、TV Everywhereとして、ストリーミングしている番組をiPadでも見られるようにする事で、その魅力はさらに強まる。Comcastはすでに、この様なアプリケーションを提供している。

 Time Warner Cable(TWC)は3月に、この上を行くアプリケーションとして、iPadから現在放送中の番組を見る事を可能にするアプリケーションを発表した。番組はインターネットで配信されるが、TWCのサービスへの加入者の家の中でしか視聴は出来ない。家の外からも視聴可能にした場合、ネットワーク(コンテンツ事業者)との契約を犯す事になる。さらに、TWCはこのサービスに肯定的なネットワークだけに限定して、このサービスを立ち上げる事で、トラブルを避けようとした。

 ネットワークとの契約は家庭内のディスプレイに対してであり、ディスプレイがTVからiPadに変わっただけであり、このサービスには契約上の問題は無いと、TWCはサービス開始時に解説した。しかし、その直後にFox、Viacom、Discovery等がこのサービスは契約違反だとして、停止命令を出した。停止命令を出したネットワークは、TWCはライセンス契約無しにiPadへの配信を始め、これは権利の侵害であると述べている。

 これに対してTWCは、加入者の家庭内に限ってであれば、iPadへの配信も既存の契約範囲であり、その確認判決を連邦裁判所に対し求めた。Viacomは、停止命令だけでなく、TWCが配信契約を破り、無断でiPadへの配信を始め、著作権が侵害されたと、訴訟を起こし、大きな争いになり始めている。Viacomは、iPadへの配信は、新たな媒体を使った新たな端末への配信であり、別途ライセンス契約が必要だと言っている。

 そしてこの直後、Cablevisionも同様なサービスを始めた。TWCは一部の多チャンネルネットワークに限定し、iPadの配信を始めたのに対して、Cablevisionは地上波局を含め、同社が放送している280チャンネル全てをiPadに配信している。Cablevisionは、そのiPadへの配信は公共のインターネット回線を使ったものではなく、既存のCablevisionのケーブル網上で、IP配信を行っており、iPadがSTB機能を持ったと同様で、著作権上は全く問題は無いと語っている。Cablevisionは、このサービスの利用をするには、ブロードバンドサービスへの加入は不要であり、ブロードバンドサービスに加入していない世帯に対しては、通常のインターネットへのアクセスは出来ない、特別のケーブルモデムとWi-Fiルーターを提供すると発表している。TWCのサービスに反対しているネットワークは当然、Cablevisionのサービスにも反対し、訴えを起こす準備をしている。

 Cablevisionはネットワークに対して挑戦的な姿勢を取る事が多く、RS-DVRの時もネットワークとは事前の話し合い無しで、サービスを発表し、最初から法廷で決着を付けるつもりであった。反対に、TWCはネットワークとのトラブルは避けてきた。放送中の番組を最初から視聴する事を可能にするStart Overのサービスを始めたときも、同社は事前に交渉を行い、賛成を得られたネットワークに限定してサービスを始め、徐々に他のネットワークも説き伏せ、サービスを広げていった。しかし、今回はそのTWCも訴えられており、iPadへのTV番組の配信は大きな騒動になっている。

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