2001年1月から2005年1月までFCC委員長であったマイクル・パウェル氏(共和党)が、ケーブルTV業界の主要ロビー団体であるNational Cable & Telecommunications Associations(NCTA)の会長に就任をした。
NCTAは1952年にNational Community Television Associationとしてスタートした。1960年代に、「CATV(Community Antenna Television)」に代わり「ケーブルTV」の名称が使われ始めた事で、NCTAもその名前をNational Cable Television Associationに変えた。さらに、双方向サービス、ケーブルモデムサービスが動き始めたことに応え、2001年には名前を現在のNational Cable & Telecommunications Associationsに変えている。NCTAはケーブルTV加入者の90%をカバーする事業者、ケーブルTVネットワーク、それに機器ベンダーをメンバーとする、ケーブルTV業界の最大のロビー団体である。この他、小規模ケーブルTV事業者を代表するAmerican Cable Association(ACA)がある。
電話事業者の競合として動き始めた1990年代後半、FCCにはケーブルTVを優遇する政策も見られた。しかし、現在では、ケーブルTV事業者のブロードバンドでのシェアは電話事業者を上回り、ComcastがNBC Universalを買収するほどの力を持つようになり、ケーブルTV業界に対するFCCの警戒心は強まっており、ケーブルTV業界に対する規制が強まろうとしている。その対策として、ケーブルTV事業者は元FCC委員長をそのロビー活動のトップに選んだ。
FCCの政策でケーブルTV事業者に関わるものとしては、ネットワーク中立性、CableCARD、そして、その後続のAllVid等がある。ネットワーク中立性は、大手ブロードバンド事業者であるケーブルTV会社には大きな問題である。ケーブルモデム、そしてブロードバンドをコモンキャリアの定義から外したのはパウェル氏が率いたFCCである。ネットワーク中立性規制に於いて、FCCにコモンキャリではない、ブロードバンドを規制する権限があるのかが大きな論点になっているが、その根源を作ったのはパウェル氏である。
パウェル氏がFCC委員長であった時代からインターネットの普及格差は話題であって、デジタル・デバイドと呼ばれていた。しかし、共和党のパウェル氏は、FCCの任務は消費者擁護ではないとし、この問題はメルセデス(ベンツ)・デバイドで、私は(ベンツを)欲しくても買えないのと同じことだとしてかたづけた。
ケーブルTV業界はFCCとの争い以外にもNetflix、Hulu等のインターネットビデオからの競争、それに地上波局が求める再送信料の高騰等の問題を抱えている。これらは、ケーブルTV事業者だけでなく、多チャンネルTVサービス全体の問題でもある。多チャンネルサービスの加入者は増えているが、ケーブルTVのシェアは減っている。多チャンネル事業者のトップ10位の内、2位と3位がDirecTVとDish Networkで、7位と9位がそれぞれVerizonとAT&Tである。衛星放送事業者も、AT&T、VerizonもNCTAのメンバーではない。しかし、AllVid、インターネットビデオとの競合、再送信料等の問題は、ケーブルTV以外の多チャンネルサービス事業者との協力を要求し、パウェル氏の挑戦の1つになる。
なお、元NCTAの会長であったカイル・マックスラロー氏は、Comcastのロビーグループのトップに就任した。マックスラーロー氏の率いるComcastのロビーグループには最近買収したNBC Universalのロビーが含まれている。