DRI テレコムウォッチャー  from USA

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 放送/メディア会社、通信事業者・機器ベンダを対象としています。


FCCのAllVidをめぐる争い (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.81)
2011年2月25日号

 FCCはそのブロードバンド普及計画に、多チャンネルサービスにおけるSTBの標準化を行うAllVidと呼ばれる規制案を盛り込んでいる。FCCは、すでにケーブルTVではCableCARDの採用を義務化することで、標準化を行っている。ケーブルTVのSTBに於いて標準化されていないCAS(コンディショナル・アクセス・システム)の部分をCableCARDとして別にすることで、TV等にケーブルTVのチューナを組み込み市販することが可能になる。CableCARDの普及のために、ケーブルTV事業者が貸し出すSTBにもCASを内蔵する事が禁止されている。

 しかし、この規制は成功していない。CableCARD対応のTV、DVR等は販売されたが、その売り上げは良くない。ケーブルTVのSTBは依然として事業者からのレンタルであり、ハードウェアをサービスからアンバンドルさせるには至っていない。この規制の根拠になっている1996年通信法が作られた時点では、DBS(デジタル衛星)は始まったばかりであり、IPTVはまだ登場していなかった。ケーブルTVのシェアが多チャンネルサービスの60%に落ちている現在、ケーブルTVだけの標準化をしても無意味である。

 AllVidはCableCARDをリプレースする物で、ケーブルTV、DBS、IPTV、インターネットTV等の標準アダプターを作る。ケーブルTV、DBS等のサービス事業者はゲートウェイデバイスを提供し、ビデオサービスはそこでAllVid規格のIPビデオに変換され、ホームネットワーク経由で、AllVidアダプター、あるいはアダプター内蔵のTVに送られる。FCCは現在、関係者から意見を集めている段階である。

 多チャンネル事業者は、規制化には反対である。標準化規制は産業の革新を奪い取るものだとして、FCCにこの規制化をしないようにロビーを行っている。しかし、家電事業者はAllVidに賛成で、Google、Sony、Best Buys、TiVo等の7社はAllVid Tech Company Allianceを設立し、FCCに対してロビーを始めている。

 Google、Sony等は規制化を求めているだけでなく、FCCに対して、多チャンネルサービス、それ以外のビデオに対しても共通インタフェースを提供する事が出来るように、コンテンツ、データ、EPG情報を分離して提供させることを求めている。多チャンネル事業者は、そのサービスの構成要素を分離させることで、家電事業者はそれを再パッケージし、収入を得ることを考えていると批判している。また、FCCに対して、コンテンツ事業者との契約上、サービス要素を分離して提供する事は不可能だと答えている。

 Netflix、Hulu等のインターネットを使ったビデオの配信が進んでいる中、多チャンネル事業者に取り、AllVidは大きな問題をもたらす。多チャンネル事業者は閉鎖された環境でサービスを提供しており、そのサービスとNetflix、Amazon On Demand等を統合する事は出来ない。Nefflixを使う場合、視聴者はTVの入力を変え、別の環境に行く必要がある。もし、AllVidにより、同じシステム環境から多チャンネルが提供するコンテンツも、インターネットで提供されるコンテンツも同等にアクセス出来た場合、多チャンネルサービスの優位性は減り、視聴者を失って行くリスクがある。

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