DRI テレコムウォッチャー


進行するグローバル携帯・スマートフォンのメーカの両極化
2011年12月15日号

 今回は、2011年第3四半期における携帯電話・スマートフォンのグローバルな出荷状況をIDC、Gartner両調査会社の資料を基にして、紹介する。なお、2011年第1四半期についての同様の資料は、すでに、2011年6月にネット掲載済みである。併せて参照頂きたい(注1)。
 今回の資料で明らかになったことは、高機能のスマートフォンを主体とする商品により、強力な攻勢を掛けている新興メーカの戦略が効を奏し、旧来の携帯電話メーカの市場が急速に奪われつつあることである。
 かっては、携帯電話出荷数において30%を超えるシェアを誇り、携帯電話業界の王者の貫禄を備えていたフィンランドのNokiaの後退が著しい。2011年第3四半期には、スマートフォンの分野で首位をSamsungに奪われ、収益の面でも赤字に追い込まれている。
 つまり、出荷数の増減比率で色分けすると、継続的にプラス成長を続けているSamsung、Apple、HTCといった新興メーカのグループと出荷数が減少し斜陽化を辿りつつあるNokia等既存携帯電話メーカのグループとの格差の開きが大きくなりつつあり、携帯電話メーカの勝ち組、負け組への両極化が見られる。
 これをスマートフォンのOS別に見ると、Googleが創ったAndroidが、AppleのiOS(Apple)、Symbian (Nokia)、Windows(Microsoft)を圧倒する勢いである。2012年に、NokiaはSymbianの利用を廃し、Microsoftと共同でWindows Phone7OS搭載の新機種により、態勢の挽回を意図している。しかし、現段階でWindowsの評判は低く、両社の前途は厳しい。
 上記の点の詳細については、本文で紹介する。


2011年第3四半期における携帯電話・スマートフォンの出荷数

表1 グローバル携帯メーカの携帯電話出荷数(単位:1000)
メーカ2011 3Q(シェア)2010 1Q(シェア)2011/2010増減率
Nokia105,353.5(23.9%)117,461.0(28.2%)−10.3%
Samsung78,612.2(17.8)71,671.8(17.8%)+9.7%
LG Electronics21,014.6(4.8%)27,478.7(6.6%)−23.6%
Apple17,295.3(3.9%)13,478.7(3.2%)+28.3%
ZTE14,107.8(3.2%)7817.2(1.9%)+80.4%
RIM12,099.9(2.7%)6,494.3(1.6%)+86.3%
HTC12,701.1(2.9%)12,701.1(2.9%)+1.5%
Motorola11,182.7(2.5%)8,961.4(2.1%)+24.5%
Huawei Device10,668.2(2.4%)5.478.1(1.3%)+94.7%
Sony Ericsson8,475.9(1.9%)10,346.5(2.5%)−19.1%
その他148.990.9(33.8%)135,384.1(32.5%)+10.1%
総計440,502.2(100.0%)417,085.7(100.0%)+5.6%
(注2)

表2 5大メーカのスマートフォン出荷数(単位:100万)
メーカ2011 3Q(シェア)2010 3Q(シェア)2011/2010増減率
Samsung23,6(20.0%)7.3(8.8%)+223.3%
Apple23,6(20.0%)17.1(14.5%)+21.3%
Nokia16.8(14.2%)26.5(32.0%)−36.6%
HTC12.7(10.8%)5.9(7.1%)+115.3%
RIM12.7(10.8%)11.8(10.0%)−4.8%
その他36.1(30.6%)16.6(20.0%)+117.5%
総計118.1(100.0%)82.8(100%)+42.6%
(注3)


スマートフォンが駆動するグローバル携帯電話市場の成長

 表1、表2およびこれに対応する2011年第1四半期の資料(注3)を使用して、携帯電話をスマートフォン、非スマートフォンのそれぞれについて、最近半年間の伸び率を示したのが、表3である。(注4)

表3 2011年第3四半期・第1四半期におけるグローバル携帯電話出荷数の構成(単位:100万)
項目2011年第3四半期2011年第1四半期
スマートフォン118,1(42.6%)99.6(+96.7%)
非スマートフォン322.4(−3.5%)328.2(+7.8%)
携帯電話440.5(+5.6%)427.8(+18,9%)
スマートフォン比率26.6%23.3%
1.括弧内の比率(%)は、前年同期の数値に対する増減比率である。
2.非スマートフォン(携帯電話総数は、「携帯電話数−スマートフォン数」に対し、筆者が仮に付けた名称であり、音声、メール中心の通常の携帯電話のほか、機能付き電話(フィーチャーフォン)等が含まれる。

 表3から、次の諸点が読み取れる。

  • 携帯電話出荷数の伸び率は、2011年第3四半期、5,6%に留まり、前年同期(2010年第3四半期)の18.9%に比すれば、かなり落ち込んだ。
  • 携帯電話機の出荷数伸びの落ち込みは、主として非スマートフォン出荷数伸びの不振によるものである。この期、非スマートフォン出荷数の伸び率は、前年同期を3,5%下回った。これが、堅調であったスマートフォンの伸び率の足を引っ張り、携帯電話出荷数の伸びを大きく押し下げた。
  • 換言すれば、スマートフォンの大きな伸びは、その多くが、新規加入者、非スマートフォン加入者からの移行によって支えられていると推測できる。
  • それにしても、2011年第1四半期から2011年第3四半期までの半年間で、非スマートフォンの伸びが増加から減少に転じたことは意味深い。これは、とりもなおさず、今後の携帯電話の出荷数の成長の中心がスマートフォンになったことを示す。


他のスマートフォンのメーカ緒社の草刈場と化した巨大なNokia占有市場

 表2のスマートフォン出荷数統計において最も際立った事実は、Nokiaが2010年9月末から1年間で、出荷数を1000万台(2650万台→1680万台)へと大量に減らし、出荷数首位の座から、一挙に3位へと転落したことである。
 新たに、一挙にスマートフォン首位の座に踊り出たのは、Samsungである。同社は1年間で2.2倍もの出荷数の伸びを記録した。同社が、Androidベースの強力な機種の品揃えを進め、積極的な販売を行った戦略が成功をもたらしたのである。
 これに対し、Apple社は、新バージョンiPhoneの出荷時期が遅れたこともあり、Samsungに差を付けられた。Nokiaが減らした1000万台超のスマートフォン出荷数は、好調に出荷数を延ばしているSamsung以下のメーカに侵食されたのであって、Nokiaは、スマートフォン他社の草刈場になった感がある。
 ちなみに、2011年第3四半期、Nokiaは、0.68億ユーロの赤字を計上した。表1が示すとおり、Nokiaは総体の携帯電話市場では、出荷数においてトップの座を維持しているのであるが、これは、同社が、価格を引き下げてでも、シェアを維持しようと努力したものの、業績は赤字に留まったという事実を示すもの以外のなにものでもない。
 なお、Nokiaの例が示すとおり、出荷数の絶対額だけで、スマートフォン・メーカの強弱を判断することはできない。Appleは、今回、スマートフォンの出荷数においてこそ、Samsungの後塵を拝したのであるが、同社は、キャリアにiPhoneのコストの多くを負担させる有利な取り決めを締結することにより、抜群の利益率を上げている。つまり、ユニット当たりの利益率は抜群に高いのであって、この点では、Appleは依然、スマートフォン販売で、最も成功している企業だということができる。


スマートフォンOS市場の過半を制したAndroid(注5)

 表4に、Gartnerに資料を基に、各主要スマートフォンOSの出荷数およびシェアを示す。

表4 OS別スマートフォン出荷数、シェア(単位:1000)
OS2011 1Q(シェア)2010 3Q(シェア)2011 3Q/2010 3Q
Android60,490.4(52.4%)20,544.0(25.3%)+194.4%
Symbian19,500.1(16.9%)29,480.1(36.3%)−33.9%
iOS(Apple)17,295.3(15.0%)13,484.4(16.6%)+38.3%
RIM12,701.1(11.0%)12,508.3(15.4)%+1,5%
*Bada2,478.5(2.2%)920.6(1.1%)+169%
Window(Microsoft)1,701,9(1.5%)2,203.9(2.5%)−22.8%
その他1,018.1(0.9)1,991.3(2.5%)−48.9%
総計116,185.4(100%)81,132.6(100%)+43.2%
BadaはFaceBookのOSである。

 表4から汲み取れるOS市場の最近の特色を以下に列挙する。

  • Androidは、この期、昨年前期に比しほぼ倍増の躍進を遂げ、遂にOS市場の過半数を制するに至った。これには、Android OS使用のメーカ、Samsungの急成長があずかっている。
  • iOSも堅実に出荷数を伸ばしているものの、シェアは少し減らした。すでに説明したとおり、この減少には、iPhone4Sの出荷が遅れたことが影響している。また、Samsungが、4Gネットワーク対応の機種で攻勢を掛けているのに対し、Appleが対応できていない点も響いている。Appleが、2012年のできるだけ早期に4G対応機種(多分、iPhone5)を市場投入しない限り、Samsung始めAndroid使用メーカ群の優位が続く可能性がある。
  • Symbianは、出荷数において辛うじて2位に留まったものの、年間30%を超える減少は、スマートフォンOSとして、Symbian が機能していないことを意味している。事実、Nokia自体が2012年からのSymbian利用廃止を宣言している。


(注1)DRIテレコムウォッチャー、2011年6月1日号、「2011年次、成長著しいグローバル携帯・スマートフォン市場」
(注2)Gartner社の資料である。以下のネットから孫引き。
2011.11.15、http://www.gartner.com, "Gartner Says Sales of Mobile Devices Grew 5.6% in Third Quarter of 2011: Smartphone Sales Increased 42%."
(注3)IDC社の資料である。以下のネットから孫引き。
2011.11.3、http://www.idc.com, "Samsung Takes Top Spot as 5 Smart Phone Market Grows 42.6% in the Third Quate."
(注4)筆者が作成。
(注5)注2の資料に同じ。


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