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DRI テレコムウォッチャー |
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2011年次、成長著しいグローバル携帯・スマートフォン市場
2011年6月1日号
本号では、2011年第1四半期の携帯・スマートフォンの出荷数がグローバルに見て、どれだけの規模のものになったかの資料を提供する。2011年2月にも、2010年第4四半期について、同様の資料を紹介しているので、前回の資料も合わせて通読して頂きたい(注1)。
今回の資料は、メーカ別のIDC社資料のほか、Gartner社によるOS別出荷数の資料も入手できたので、逞しくグローバルに成長しつつあるスマートフォン出荷数の動態をより詳しく紹介できたものと考える。
資料の解説は、すべて、本文で行ったので、はしがきにおいて特に付加すべき事項はない。ただ、筆者の感想を一言だけ述べれば、現在進行している凄まじいスマートフォン拡大の動きは、携帯電話のPC化の進展過程に他ならないということである。
この動きの発端は、約4年前の2007年7月のApple社によるiPhoneの出現であった。その後、GoogleによるAndroid OSを導入した幾つものメーカが、数多くの機種のスマートフォンを市場に出した。こうして、携帯電話分野に新規参入したIT業界の強豪、Apple、Google両社が、機能から言って、PC+携帯電話の新型スマートフォンの業界を席巻しているのである。
この動きは、携帯電話に占めるスマートフォンの比率がまだ、たかだか30%程度と低率に留まっていることから、今後、相当、長期にわたり継続することとなろう。
衰えを見せない携帯電話グローバル市場(注2)
表1 グローバル携帯メーカの携帯電話出荷数(2011 1Q/2010 1Q、単位:1000)
メーカ | 2011 1Q(シェア) | 2010 1Q(シェア) | 2011/2010増減率 |
Nokia | 107,556.1(25.1%) | 110,105.4(30.6%) | -2.4% |
Samsung | 68,782.0(16.1%) | 64,897.1(18.0%) | +6.0% |
LG | 23,997.2(5,6%) | 27,190.1(7.6%) | -1.7% |
Apple | 16,883.2(3.9%) | 8,270.1(2.3%) | +104.1% |
RIM | 13,004.0(3.0%) | 10,752.5(3.0%) | +20.9% |
ZTE | 9,826.8(2.3%) | 6,104.3(1.7%) | +60.1% |
HTC | 9,313.5(2.3%) | 3,378.4(0.9%) | +176.0% |
Motorola | 8,789.7(2.1%) | 9,574.7(2.7%) | -8.2% |
Sony Ericsson | 7,919.4(1.6%) | 9,865.7(2.7%) | -9.7% |
Huawei | 7,002.9(1.6%) | 5,236.1(1.5%) | +33.7% |
その他メーカ計 | 154,770.9(36.2%) | 104,230.3(30.3%) | +48.5% |
総計 | 427,846(100%) | 359,805(100%) | +18.9% |
表1で示されているとおり、2011年第1四半期には、グローバルの携帯端末出荷数は、4億2千万台と4億台を優に超え、前年同期、2010年第1四半期の18.9%増となった。この増加率は、前期、2010 年第4四半期の前年比率、17.8%増より高い。これは、次項表2で説明するとおり、スマートフォンの急速な伸びが原動力となっている。
その他、表1からは、キャリア単位で見て、およそ、次の点が読み取れる。
- Nokiaは、最大の携帯電話メーカの地位を保っていることに変りは無いものの、
過去1年間で、5.2%のシェアを減らした。しかも、同社にとって危機的なことは、前年同期に比し、出荷の絶対数を2.4%も減らしていることである。
これらの数値に、携帯メーカの王者、Nokiaの地位の揺らぎがクッキリと浮き彫りにされている。
- 第2位の携帯メーカ、Samsungは、そのシェアこそ、2%近く減らしたものの、
6%もの成長を遂げており、3位以下のメーカに大きく差を付けている。
- Appleは、2倍強と驚異的な成長を示し、前年同期の8位から4位に躍進した。同社は、スマートフォンの、しかもiPhoneだけの製造メーカであり、市場参入4年弱にして、このように目覚しい成果を収めたことは、驚異に価する。なお、Appleは、2011年第1四半期、売上高でみると、Nokiaを抜き、業界トップの地位を占めた。この点については、前回のテレコムウオッチャーで説明した。
- 表1では、上位10社の順位を掲げたのであるが、欧米日のメーカは、Nokia、Apple、RIM Motorola、Sony /Ericssonの5社、アジアのメーカも、Samsung(韓国)、LG(韓国)、ZTE(中国)、HTC(台湾)、Huawei(中国)の5社と数において互角であるものの、アジア勢は、LGを除き、高い成長率により、北米、欧州勢を圧倒しつつある。これら強豪メーカの中にあって、わが国のメーカで、唯一、国際競争に伍しているメーカはSonyのみ。しかも、そのSonyも、スエーデンのEricssonと合弁を組み、しかも、9位の低位に留まっているのは寂しい限りである。 “頑張れ、日本の携帯電話メーカ”。
スマートフォンのメーカ5強のうち3社を占めたアジア勢(注3)
表2 グローバルスマートフォン・メーカのスマートフォン出荷数(2011 1Q/2010 1Q、単位:100万)
メーカ | 2011 1Q(シェア) | 2010 1Q(シェア) | 2011/2010増減率 |
Nokia | 24.2(24.3%) | 21.5(38.8%) | 12.6% |
Apple | 18.7(18.7%) | 8.7(15.7%) | 114.4% |
RIM | 13.9(14.0%) | 10.6(19.1%) | 31.1% |
Samsung | 10.8(10.8%) | 2.4(4.3%) | 350.0% |
HTC | 8.9(8.9%) | 2.7(4.9%) | 229.6% |
その他メーカ計 | 23.2(23.2%) | 9.5(17.1%) | 143.7% |
総計 | 99.6(100.0%) | 100.0% | 79.7% |
表2に示されるように、スマートフォン出荷数の伸びは、きわめて大きい。2010年第1四半期から2011年第1四半期の1年間で、79.7%とほぼ倍増に近い伸びを示している。
Nokiaは、出荷数の絶対数では、未だ首位の地位を保っている。しかし売上げ高では、この期、Appleが1位に躍り出た。しかも、前年同期に比し、17.5%もシェアを減らしているのであるから、その衰退振りは目を覆うばかりである。
これに比しAppleは、出荷台数において、Nokiaと大差のない2位。売上げ高でトップの地位にある。この勢いが続けば、2011年内に、出荷台数でもNokiaを追い抜き、スマートフォン業界1位の地位を占めることは、まず確実だろう。
カナダのRIM社は、同社の人気機種、Blackberryにより、未だ成長を続けてきたが、シェアを5%以上減らし、やや息切れがしてきた感は否めない。
Samsung、HTCは、いずれも、AndroidのOSにより、過去1年間に急成長を遂げたアジアメーカである。両社は、すでに、LTE(4Gネットワーク)に対応するスマートフォン機種も市場に出しており、今後も急成長が期待される。
次項では、OS別スマートフォンの出荷状況をGartner社の資料で見てみよう。
短期間にSymbianを抜き、市場を制覇したスマートフォンOSのAndroid(注4)
表3 OS別スマートフォン出荷数(単位:1000)、シェア(%)
OS | 2011 1Q(シェア) | 2010 1Q(シェア) | 2011/2010増減率 |
Android | 36,267.8(36.0%) | 5.226.6(9.6%) | +594% |
Symbian | 27,598.5(27.4%) | 24,067.7(44.2%) | +14.7% |
iOS | 16,883.2(16.8%) | 8,359.7(15.3%) | +101.9% |
RIM | 13,004.0(12.9%) | 10,752.5(19.7%) | +20.9% |
Microsoft | 3,658.7(3.6%) | 3,696.2(6.8%) | ‐1.1% |
その他OSの計 | 3,357.2(3.3%) | 2,402.9(4.4%) | +37.1% |
総計 | 100,769.3(100%) | 54,505.5(100%) | +84.5% |
表3が示すとおり、2011年第1四半期までの1年間は、スマートフォンのOSについても、大きな変動が生じた時期であった。なお、表3は、表2がIDCの資料から作成されたものであるのに対し、Gartnerの資料を使っている。両表の総計の欄の数値が異なるのは、そのためである。
表3から、大きく成長したスマートフォンの市場において漁夫の利を得たのは、AndroidとiOSの2つのOSであって、その他のOSの成長率は平均以下である点が、浮き彫りにされている。
すなわち、GoogleのAndroidを使用したメーカは、年間に約6倍もの売り上げを伸ばして、この期にこれまで、終始トップの座を維持してきたSymbian(NokiaのスマートフォンOS)を一挙に、しかも、大幅に追い抜いた。これに次ぐのが、Appleの使用しているOS、iOSであった。ただ1機種、iPhoneのみに使用されているのにもかかわらず、倍増した。
カナダのスマートフォンメーカ、RIMのOS、RIMは、依然、根強い人気を有しているものの、Androidからはもちろんのこと、iOSからも大きく引き離されてしまった。
Microsoft社のOSは、成長するスマートフォン史上において、唯一、スマートフォン出荷数を減らしてしまった。
現在、Nokia社の携帯分野での不調が大きな話題になっているのであるが、同社の悲劇は、自社のOS、Symbianが時代に取り残されていることを自覚しており、このOSを将来、廃棄することを宣言しながらも、適当な提携先が見当たらず、Microsoft社との提携を発表したことにある。
携帯電話の観測筋は、今後、短期的な予測(筆者は中期的な予測としても良いと思うのだが)として、Android、iOSが、今後もさらに急成長を続けていくと予想している。これは、とりもなおさず、これまでの携帯メーカの王者、Nokiaからのシェア侵食を意味するものである。Nokiaが今後、この危機をどのように乗り切って行けるかに注目が集まっている。
(注1) | DRIテレコムウオッチャー、2011年2月15日号、「2010年次、過去最大の拡大を示した携帯・スマートフォンの世界市場」。 |
(注2) | 2011.5.19付け、http://www.betanews.com、"Android conquers the world-tough luck." に紹介されたIDCからの孫引き資料を利用した。表1のほか、解説の部分も、ほぼ上記資料によった。 |
(注3) | 2011.5.6付け、http://news.cnet.com、"Apple closing in on Nokia as smartphone leader." に紹介されたIDCからの孫引き資料を利用した。表2のほか、解説の部分も、ほぼ上記資料によった。 |
(注4) | 2011.5.20付け、http://www.domain-b.com、"Android tops in smartphone OS market; Gartner." に紹介されたGartnerからの孫引き資料を利用した。表3のほか、解説の部分も、ほぼ上記資料によった。 |
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