12月23日にFCCは、3対2でネットワーク中立性を規制化した。規制の詳細はまだ発表になっていないが、大きなポイントは:
- 透過性: ブロードバンド事業者は、ネットワーク管理内容を含め、消費者が知的な決定を出来るようなサービスに関する情報を提供する必要がある。
- 妨害禁止: ブロードバンド事業者は、妥当なネットワーク管理の範囲内で、合法なコンテンツ、アプリケーション、サーボス、デバイスへのアクセスを妨害してはならない。
- 不適当な差別禁止: ブロードバンド事業者は、合法なネットワーク・トラフィックに対し不適当な差別をしてはならない。妥当な範囲のネットワーク管理は、不適切な差別にはならない。
3対2の内訳は、ジェネカウスキー委員長を含めた、民主党の3委員が賛成、共和党の2委員が反対であったが、民主党のマイクル・コップス委員も今回の規制の内容に関しては批判をしており、否決になる可能性もあった。
共和党は、この規制は特に問題になっていない事に対しての解決法を作ろうとしている様な物であり、今後の市場の発展の妨害になるだけだと反対をしている。共和党は、FCCにはこの規制を作る権限が無く、規制は法廷により無効化されると考えている。FCCにはブロードバンドを規制する権限は無く、規制化の為にはブロードバンドをコモンキャリアのサービスとして再定義する必要があると思われてきた。コップス委員も再定義を求めてきた。しかし、ジェネカウスキー委員長は、議会がFCCに与えたブロードバンド普及政策の権限により、規制は可能だとして、再定義は行わなかった。
ネットワーク中立性には反対の共和党がこの規制を批判する事はうなずけるが、ネットワーク中立性を押してきた公共利益団体のFree Press、Public Knowledge等もこの規制に対して厳しい批判を行っている。彼らは、この規制は抜け穴だらけで、無意味であるだけでなく、逆に抜け穴を使うことで、アクセスの妨害を行うことを正当化させる危険性があると批判している。規制の対象が、固定ブロードバンドだけで、モバイルアクセスが含まれていないことも、ネットワーク中立性賛成派の大きな不満になっている。
ネットワーク中立性はオバマ大統領の公約の1つであり、ジェネカウスキー委員長に託された大きな課題である。ネットワークは中立であるべきだとのコンセプトに反対する人は居ないが、何をする事が中立であり、何がそれを犯すのかに対しての合意は存在していない。今回の規制は、合意が無い中、公約を満たすための大きな妥協だとの評価がある。その批判を裏付けるように、ネットワーク中立性規制が出来ることで、直接的な影響を受ける電話事業者、ケーブルTV事業者からは大きな反対は出ていない。ネットワーク管理を行うことは合法であり、その結果、トラフィックを差別しても、それが「妥当な」範囲であり、透過性があれば問題にならない。ブロードバンド事業者に取り、ネットワーク中立性の議論が長く続くより、インパクトの少ない規制が通過し、ニュースでは無くなる方がより良い選択肢であろう。
(NSIリサーチ社は、2010年12月に、新しい調査レポート
「アメリカのモバイルビデオ市場 - スマートフォンとタブレットのインパクト」を出版しました。)