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Google TVに対するネットワークの反応 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.78)
2010年11月20日号

 10月6日に、Google TVを登載した最初の製品として、Logitech Revueを発売開始になった。Google TVは、インターネットの ビデオコンテンツを視聴する事が出来るコネクテッドTVのSTB(セットトップボックス)である。最近の中級以上のTV、Blu-rayプレーヤでは、インターネットのストリーミングビデオに対応する機能は珍しい物ではない。さらに、PS3、Xbox 360、Wiiを使えば、インターネットビデオをTVで見る事は可能である。TiVoにもその機能はあり、NetflixからスピンオフしたRoku社は、TVをコネクテッドTVにするSTBを$60で売り、2009年と2010年ですでに150万台近い出荷台数を持っている。

 Google TVが大きな話題になったのはGoogleが開発したと言う事もあるが、これまでのコネクテッドTVに無い、多くの機能を提供しているからでもある。Google TVは、TVでインターネットビデオを見る事を可能にするだけでなく、TV番組とインターネット上のビデオを統合的に検索する、クロームブラウザーでウェブサイトを見る、そして、アプリケーションを走らせる事が出来る。これまでのコネクテッドTVは、インターネットビデオを視聴する事に特化したシンプルな製品が殆どであったのに対して、Google TVは、TVにウェブの世界を持ち込むコンセプトである。

 Google TVの前評判は高かったが、売れ行きは大した物ではない。その理由の一つに、ABC、NBC、CBS、Foxの4大地上波ネットワークがインターネットで配信している番組がGoogle TVでは見ることが出来なくなっている事がある。

 コネクテッドTVの存在はテレビネットワークに取り、必ずしも嬉しい物ではない。ネットワークの最大の収入は放送広告である。インターネットで配信されるTV番組の視聴がコンピュータで行われている場合、放送とは直接的な競合ではなく、放送広告収入への影響はほとんど無い。コネクテッドTVでもインターネットで配信される番組が視聴される事で、視聴は増え、インターネット配信での広告収入が増える。しかし、TVからの視聴により、放送と直接的に競合する事となり、放送広告収入を脅かしていく。このため、HuluはこれまでコネクテッドTVからのアクセスは不可能にし、有料のHulu Plusだけで一部のコネクテッドTVからのアクセスを可能にしていた。

 Google TVは、インターネットで配信されているビデオをTVで視聴可能にするだけでなく、それらを探すことも容易にする。利用者はHulu、あるいはABC、NBC等のポータルサイトに行き、見たい番組を探すのではなく、検索窓からTV番組、それにインターネット上のビデオをまとめて検索する事が出来る。「Desperate Housewives」と検索すれば、Google TVは放送予定の番組から、インターネット上にある過去のエピソードを全て表示しる。リンクを選べば、すぐに再生が出来る。簡単に探せ、再生が出来る事で視聴者は放送以上に、インターネット上の番組を見始め、放送での視聴率が減る可能性がある。さらに、検索結果には非合法で流通しているビデオも表示され、ABCのポータルにある「Desperate Housewives」ではなく、非合法なストリームが選ばれてしまう可能性もある。

 放送広告収入の減少があっても、コネクテッドTVによる視聴が盛んになり、インターネットビデオの広告収入が今後増えれば、その減少を補える可能性もある。しかし、Google TVはインターネット広告で強力なGoogleの製品である事も、ネットワークには心配事である。ネットワークと同じに、Googleの収入モデルは広告であり、Google TVは新たな広告のプラットフォームになるであろう。インターネットビデオの視聴が増えても、主役がGoogleであれば、その広告収入はGoogleに奪われてしまう。

 Huluは、Google TVの発表とほぼ同時に、Google TVからのアクセスを不可能にした。さらに、ABC、NBC、CBS、Foxの4大ネットワークもそれぞれにウェブサイトで配信しているビデオをGoogle TVではアクセスを出来ないようにした。

 インターネットによるTV番組の配信には、まだ明らかなビジネスデルは無い。ネットワークは、試行錯誤で成功するモデルを探そうとしている時であり、Google TVが持ち込もうとするモデルに恐れをいだいている。


(NSIリサーチ社は、2010年1月に、放送・メディアの規制環境とFCCの活動を調べ、まとめた、
新しいレポート「アメリカの放送・メディア政策と規制の状況、FCCの役割」を出版しました。)


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