多チャンネル事業者はこぞってApple iPadを使ったサービスの計画を発表している。すでに多くの事業者は、iPhoneでDVRの録画予約をするアプリケーションを提供してきたが、ComcastはiPadを使い、そのケーブルTVサービスのナビゲーションを行うアプリケーションを5月に公開した。iPadを使い、放送されている番組、それに何千とあるVODタイトルの中から見たい番組を探し、チャンネルの切り替えを行える。検索等の複雑な操作を行いやすくする、インテリジェントなリモコンである。Comcastは、2010年末までにこのアプリケーションを公開する予定。
Comcastのアプリケーションでは、予告編のビデオ等は見ることが出来るが、番組自体は見られない。しかし、iPadにTV番組を持ち込む動きもある。AT&T U-Verseは8月にDVRに録画されている番組をiPad（iPhone）にダウンロードし、視聴する事を可能にするアプリケーションを発表した。ダウンロード可能な番組、ABC/Disney、Discovery、PBS系の52個の番組に限られているが、DVRに録画されたテレビ番組を屋外でも見る事が可能になる。
Dish Networkは、ビデオを家から配信する事を可能にするSlingの技術を内蔵したDVRを提供している。これを使えば、DVRに録画された番組、あるいは放送中の番組をiPhone、iPad等にストリーミングする事が出来る。屋外からSling対応のDVRにアクセスする場合、画質は家のインターネットコネクションの上り速度に左右されるので、無線ブロードバンドに加え、家にも高速な上り回線を持つ、ブロードバンドが必要になる。
DirecTVは、2009年からiPhoneでDVR予約を可能にしてきているが、8月にiPad向けに番組を配信する最初の事業者になった。DirecTVはそのDBSサービスの加入者向けに、NFLのアメリカンフットボールの試合をiPadで、屋外からでも見ることを可能にするサービスを始めた。このアプリケーションは無料でダウンロード出来るが、試合を見るためには年間$380のNFL Sunday TicketとSuperFanのサービスに加入する必要がある。このサービスはDirecTVの独占で、視聴者は、WiFi、あるいはモバイルブロードバンドを使い、NFLの試合をライブで見ることが可能になる。
Cablevision、Time Warner Cable、それにVerizonは、放送番組からVODまで、TVで受けられるのと同じサービスをiPadでも受けられるようにするアプリケーションを開発している。基本的には、多チャンネルサービスをIPで提供し、それを受けるためのSTBの機能をiPad向けのアプリケーションとして開発する事だ。Cablevisionは、このサービスは家庭内が対象で、屋外で利用する事は出来ないと発表している。しかし、屋外での通信環境、それにコンテンツ事業者とのライセンス契約が解決出来れば、家庭内だけを対象にする必要はない。TWC、Verizonは、ライセンス契約が問題である事を認めながら、サービスとしては、家庭内だけでなく、屋外も視野に入れていると発表している。Verizonは2011年にこのサービスを開始する予定と発表している。Cablevision、TWCは開始時期をまだ発表していない。
この様にiPad等のタブレット、あるいはスマートフォンを使い、屋外から多チャンネルサービスが受けられるようになると、モバイルTVに大きな影響を与える事になる。もし、月額$20程度の追加で、家で見られるのと同じ番組を屋外でも見ることが可能になれば、FLO TV等のモバイル向けのTV放送サービスの需要は無くなるであろう。
（NSIリサーチ社は、2010年1月に、放送・メディアの規制環境とFCCの活動を調べ、まとめた、
新しいレポート「アメリカの放送・メディア政策と規制の状況、FCCの役割」を出版しました。）
