アメリカの多チャンネルサービスには、デジタルケーブルTV、デジタル衛星(DBS)、それにIPTVの3種類がある。どれもSTBを必要とし、地上波再送信を行い、多チャンネル専用のCNN等のネットワークを放送しており、同じように見えるが、価格体系、契約等で細かい違いがあり、今回はその比較を行う。比較は、サンノゼで加入可能なComcast(デジタルケーブル)、Dish Network(DBS)、DirecTV(DBS)、AT&T U-Verse(IPTV)で行う。
最初の大きな差は、契約の必要性である。DBSは通常、2年契約で、早期解約には罰金が課される。引っ越しの可能性が高い人には、これは問題である。STBとアンテナを購入すれが、契約を避けられるが、2年以下でサービスを止めることが分かっていて、この投資をする人はいないであろう。AT&Tは契約無しでスタートしたが、現在は、契約が必要になっている。ケーブルTVが唯一、契約無しで加入出来るサービスである。しかし、ケーブルTVではSTBはレンタルであり、毎月その分の料金を払うことになる。これに対して、DBS、U-Verseでは、2年契約をすれば、STBは無料になる。ケーブルTVでも、特別料金での加入には、1年、あるいは2年の契約が必要になる。
サービス料金が最も高いのは、ケーブルTVであるが、前期の様にケーブルTVには、STBのレンタル料金も含まれている。160+チャンネルのComcast Digital Preferredが月$81.94であるのに対し、DirecTVのChoice Ultra(225+チャンネル)が月$68.99、Dishの(260+チャンネル)が$69.99、U-VerseのU200(230+チャンネル)が月$67.00である。Comcastはチャンネル数が少ないが、無料VODがある。チャンネル数は異なるが、主要なチャンネルで比較すると、4つとも同等のパッケージである。価格には全て、地上波再送信が含まれている。
HD放送を見る場合には、別途HDパッケージが必要になる。HDは、Comcastが$8、U-Verse、Dish、DirecTVは$10である。しかし、Dish、DirecTV共に2年契約でHDパッケージを無料にしているので、HDを加えた場合では、U-Verseは$77で、DBSより高価になる。
サービス料金はこれだけでは比較出来ない。パッケージに含まれているチャンネルは、各社微妙に違い、見たいチャンネルが追加料金になる場合がある。例えば、サッカー専門のFox Soccer Networkは、U-VerseのU200、DishのAmerica's Top 250に含まれるが、DirecTV、Comcastではスポーツパッケージへの加入が必要となる。DirecTVの場合、スポーツパッケージは月$12.99、Comcastは月$6.95の追加料金になる。HDとFox Soccerチャンネルを加えた場合、Comcastは月$98.89、DirecTVが月$81.98、U-Verseが月$77.00、Dishが月$69.99となる。
STBをDVRにした場合、また追加料金がかかる。DVRはComcastが最も高く、月$15.95である。この料金は、DVRのレンタルとサービス料の両方が含まれる。DBSの場合、STBは2年契約に含まれ、料金はサービス料だけであり、DirecTVは月$10、Dishは月$5である。AT&T U-Verseはその料金にDVRを含んでいる。AT&Tはその料金にDVRだけでなく、DVRに録画した番組を他のSTBからも視聴出来るマルチルームDVR機能も含めている。マルチルーム機能を使うには当然、STBを追加する必要があり、U-Verseの場合、これは1台月$7である。DirecTVはマルチルームDVR機能を月10ドル、追加STBを月$5で提供している。Comcastは一部の地域で、月$20でマルチルームDVRを提供し始めている。DishのDVRは、別室のTVにも番組を送る事が出来き、そのままで2つのTVをサポート出来るが、別室向けはHDではない。Dishには、HDでのマルチルームDVR機能は無い。
4つのサービスを同時に見ないと画質の比較は出来ないが、平均して画質が良いのはケーブルTVである。DBSは圧縮率を高めて、チャンネル数を増やしている傾向があり、時によっては、かなり画質を犠牲にしている事がある。特にDishではこの問題が多い。U-Verseは同時に4つのHDチャンネルをサポート可能としているが、その為には当然、圧縮度を上げる必要がある。ケーブルTVはチャンネル数が少ないが、その分、無理な圧縮は無く、画質は平均的に良い。
(NSIリサーチ社は、2010年1月に、放送・メディアの規制環境とFCCの活動を調べ、まとめた、
新しいレポート「アメリカの放送・メディア政策と規制の状況、FCCの役割」を出版しました。)