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FCCにはブロードバンドを規制する権限があるか? 
(ブロードキャスティングレビューシリーズ No.71)
2010年4月26日号

 連邦控訴裁判所は、4月6日にFCCに対して、ネットワーク中立性原理に反したとして、Comcastを罰した事は、その権限を越えたものであるとして、FCCの判定を無効とした。この事件は、Comcastが2006年頃からにP2Pのヘビーユーザのトラフィック量を制限した事から始まった。FCCは2008年1月に、この行為は、差別的な行為で、ネットワーク中立性原理に触れるとして調査を開始した。FCCは、Comcastに制裁金は科さなかったが、違法行為だとして、P2Pトラフィックを限定し、制限する事を止めさせた。Comcastはこれを不服に、ネットワーク中立性原理で、ブロードバンド事業者を罰する権限はFCCには無いとして、控訴をしていた。

 FCCの敗訴はネットワークの中立性に大きな影響を与える。FCCはネットワーク中立性をよりはっきりとした規制にしようとしているが、その権限が無いのであれば、規制化は出来ない。さらに、この敗訴は、発表されたばかりのナショナル・ブロードバンド・プラン(NBP)にも深刻な影響を与える。

 FCCの通信事業に対する規制権限は、通信法に基づくものであり、明らかである。これに対して、インターネット・アクセスは情報サービスとして定義されている。FCCは、ケーブルモデムは「情報サービス」として定義し、通信事業者にある回線開放の規制は対応しないとしてきた。これに対して、電話会社のDSLは通信事業と定義されていた。インターネット事業者は、ケーブルモデムも回線開放の対象になるべきだとして訴えを起こしたが、敗訴した。FCCは現在、ブロードバンドは情報サービスとして扱っている。情報サービスに対するFCCの権限は直接的では無く、不明瞭であることをこの裁判は明らかにした。

 直接的な規制権限が無くても、FCCがNBPを作る事は問題ではない。しかし、FCCがNBPを実施する場合、ルール作りが必要になる。ルール無しの普及計画では、実行は不可能である。もし、FCCのブロードバンドのルール作りに対する権限が不明瞭で、その度に法廷で争われるのであれば、FCCがNBPを進めていくことは不可能になる。議会が、FCCに対して、ブロードバンド規制権限を与えることが最もストレートな対応であるが、FCCの権限を変えることは大きな問題となる。新通信法を作るのに等しく、1、2年、あるいはそれ以上の時間が必要になるであろう。

 ネットワーク中立性を求めてきたグループの多くは、ブロードバンド事業者に対する規制を強めることを求め、ブロードバンドを通信事業と再定義し、通信法2章(Title II)にあるコモンキャリアとして扱うことを求めてきた。今回のFCCの敗訴により、彼らの声が高まりを見せている。FCCは、ブロードバンド事業者をコモンキャリアとして再定義する事には積極的ではなく、既存の情報サービスの定義でも、NBPを実施していく十分な権限があると考えている。それに、FCCがブロードバンドを通信事業に再定義出来るかも疑問である。最高裁は、すでにケーブルモデムサービスは、コモンキャリアではないとの判断を下している。

 また、もし、ブロードバンドをコモンキャリアとして再定義が出来ても、それがNBPに取り、プラスになるかも疑問である。通信法の多くは、通信事業者が独占市場の時代に作られた物である。ブロードバンドを再定義する事は、古い規制で縛る事になる。これは、NBPの目的である利用の普及の為にはならない。


(NSIリサーチ社は、2010年1月に、放送・メディアの規制環境とFCCの活動を調べ、まとめた、
新しいレポート「アメリカの放送・メディア政策と規制の状況、FCCの役割」を出版しました。)


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