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欧州通信市場の展望 - 第6号(市場レビュー)
2010年9月

 オクテグラ社が紹介する欧州通信市場展望の今回のテーマは、ヨーロッパのM2M市場です。

このレビューは、皆さまのお知りになりたいテーマや情報を取り上げていきたいと考えています。
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M2M

 ヨーロッパの携帯電話会社は、携帯電話の音声サービスがいずれ衰退するのではという憂慮から、その収益の代わりとなるアプリケーションを模索し続けている。このアプリケーションに必要となるのは、下記のものであるだろう。

  • ネットワーク本来が持つ可能性への需要
  • 多数の潜在的利用者の存在

 音声サービスにとって代わるアプリケーションが成功するには、このうちの少なくとも一つが不可欠である。各電話会社は、市場牽引力の獲得を目指して、さまざまなアプリケーションに取り組んできた。ビデオ業界や携帯ブロードバンドは、その一例である。しかし残念なことに、こうしたサービスへの需要は錯覚だったと言わざるを得ない。今、ヨーロッパの電話会社の多くは、こうしたアプリケーションをひとまとめにして、データサービスの管轄下に置いている。現在、データサービスの収益の占める割合は全収益の約8%であるのに対し、従来の音声サービスのそれは70%を超えている。

 消費者市場への新しいサービスの参入による収益が見込めない今、電話会社各社は、エンタープライズ市場でM2Mサービスの利点を宣伝することによって、データサービスの需要を生み出そうとしている。M2Mの端末台数が増加し、それに伴ってネットワークの通信速度が大幅に増すだろうという予測が、最近M2Mサービスへの関心を刺激してきた。予測によると、接続する端末は2020年までに500億に達し、ネットワークの通信速度は300倍となる。この予測が正しければ、M2Mは莫大な収益を生み、音声サービスの収益不足をかなりのところまで埋め合わせるだけの力があることを実証することになる。それにより、電話会社の収益は著しく伸び、4Gへの技術投資が正当化されることもありうるだろう。

 しかし、M2Mの開発のベースとなるサービスの数は限られていて、その大半は収益拡大というよりは、コスト削減のためのものである。加えて、付加価値を生むそうしたサービスはこれまで、OnStarのように、ネットワーク技術というより、高度な顧客サポートの上に成り立っていた。結果として、収益の大部分は、回線を所有する電話会社ではなく、サードパーティーのサービスプロバイダーによるものとなる。M2Mの成長を予測するとき、収益を見積もるに当たって、M2Mの定義の幅が広いことが問題となる。専門家によっては、パソコン等の端末機器もその中に含まれる。しかし、われわれオクテグラは、もっと現実的に、次の6つの区分に集約されるべきだと考えている。

  • 遠隔測定
  • 輸送
  • 健康
  • 警備
  • 販売
  • 家電
 家電を別として、これらのアプリケーションは、中央のサーバーに定期的に送信されるデータ量が非常に少ないことを特徴とする。さらに、M2Mの主なベンダーや利用者に関するわれわれの調査では、M2Mサービスの成長を妨げる要因のひとつとして、絶えずコストの問題が浮かび上がってくる。

 つまり、M2Mは電話会社が期待するような収益を生まないということである。それは、莫大な収益の担い手になるというより、実際には市場において、非常に短いメッセージを大量に生みだす端末を有するSMSサービスと似た位置に滑り込んだというところだろう。そこで、次に出てくる問題は、最近ヨーロッパの電話会社が、データ量の増加を狙ったデータ料金を設定しようとしていることである。この結果、M2Mサービスが本当に広く受け入れられる段階に達したら、そこでデータ料金を低く抑えた市場に参入すると目されている。

 SMSというメッセージによる戦略とさらに歩調を合わせるために、携帯電話会社は今、M2M戦略の位置づけを考え直すときにきていると、われわれは考えている。最近では、ショートメッセージによる売り上げは、あらゆるサービスの約12%にあたる。メッセージサービスが、データ量としては決して多くないにもかかわらず、それだけ莫大な収益を生むのは、料金がデータ量ベースではなくメッセージ一通ごとの設定になっているからである。メッセージサービスが広く浸透した結果、メッセージの量は増加した。そしてそれは、データ伝達量に関するユーティリティーというよりも、利用者に向けたユーティリティーの提供によるところが大きい。

 昨今のデータ料金は、M2Mのようなサービスの開発を念頭に置いていない。このような料金設定は、M2Mの発展を妨げ続けるだけならまだしも、最悪の場合、サードパーティー業者が電話会社のブロードバンド料金の革新的な利用法を模索しようとしているせっかくの機会を無駄にしてしまうだろう。

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