アメリカにおけるブロードバンドアクセスの普及率を向上させることを重要な政策とするオバマ政権に対して、FCCはその対策を2月に議会に報告する予定になっている。FCCはその概要を12月16日に公開し、その中にはSTBを使ったブロードバンドアクセスの普及が含まれている。
FCCはTVの普及が99%であるのに対して、PCは79%であることから、インターネットを使ったビデオ配信が普及することで、ブロードバンドの普及も進むことと考えている。これを実現する方法として、FCCは多チャンネルサービス向けのSTBを標準化し、インターネットアクセス機能を加える事の義務化を検討している。
FCCは多チャンネル事業者に対して、その固有なネットワークエレメント(受信、コンディショナルアクセス機能)と標準的な家庭での通信インタフェースをブリッジするデバイスを提供する事を命じ、市販のナビゲーションデバイスから多チャンネルサービスをアクセス出来るようにする事を考えている。FCCは「市販のナビゲーションデバイス」は何であるかの説明はしていないが、TV、DVR、PC、ゲーム機、Blu-rayプレーヤ等を指していると推測出来る。STB自体にはナビゲーション機能が無くなり、標準インタフェースにより、市販のTV、DVR等と接続され、ナビゲーションはこれら製品が行う事になる。
FCCはすでにケーブルTV事業者に対してはSTBの標準化を行い、STBの市販を普及させようとしている。FCCはケーブルSTBの標準規格を作らせ、異なる規格が存在するコンディショナルアクセス(CAS)の部分を別途PCカード(CableCARD)として提供する事を義務化した。しかし、この計画は失敗した。この規則が出来た2007年7月以来、ケーブルTV事業者は1700万台近い、CableCARD対応のSTBをレンタルとして提供しているに対して、市販のデジタルケーブル対応のDVR、あるいはTVの販売台数は44万台でしかない。
FCCはこの計画は失敗であった事を認め、新たなSTBの標準化の計画を作り出そうとしている。新たな計画では対象はケーブルTV事業者だけでなく、DBS、電話事業者のIPTVも対象となる。CableCARDの様に、多チャンネル事業者は標準ではないCASの部分だけを別途提供するのではなく、STBのネットワークエレメントと、ナビゲーション機能を切り離して提供する事になる。
多チャンネル事業者はこのFCCの計画にとまどいを見せている。多チャンネル事業者に取り、STBの市販はプラスとマイナスの両方がある。視聴者が自らSTBを購入し、事業者がそれを提供する必要が無くなることは、経費的にはプラスである。しかし、DVRの様にSTBに付加価値機能を持たせることで、新しい収入を作る事は難しくなる。CableCARD対応のSTBを提供してきたケーブルTV事業者はFCCに対して、単に技術的な仕様を検討するだけでなく、いかにすればSTB市販のメカニズムが成功するかを研究する事を求めている。ケーブルTVを受信可能なDVR、TVは市販されているが、消費者取り、メリットは余りない。DVR、TVを購入するより、レンタルの方が先行投資が必要ない。市販の製品を購入した場合、ケーブルTVサービスを止めた時は無駄になる。
DBS事業者のDirecTVはこの計画に反対を示す書面をFCCに送っている、DirecTVは標準仕様のブリッジデバイスを開発、提供するコストは高価であり、また、その様な製品は市場の革新を止める可能性があるとしている。DirecTVはFCCが使っているTVは99%普及、PCは79%の普及の矛盾も指摘している。同社はTVは99%の家庭に普及しているが、多チャンネルサービスは99%の普及率ではなく、多チャンネルサービスのSTBを標準化しても、ブロードバンドの普及は99%には成りえないと反論をしている。