DRI テレコムウォッチャー  from USA

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大きな論争になる放送帯域の再編成 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.66)
2009年11月20日号

 この9月に無線通信事業者を代表するCTIAはFCCに対して無線通信の為に帯域を空ける事を陳情した。CTIAはこの先6年間で、無線通信の為に3GHz以下の帯域に800 MHzが新たに必要となると指摘している。CTIAはこの陳情の中では、放送に使われている帯域を再編成し、それを競売する事を直接には求めていないが、全ての帯域の利用を見直す事を求めている。通信事業者は帯域の利用権利を競売で競り落とさなければならないのに対して、放送事業者は免許料だけで、帯域の利用権を得ている違いに対しては以前から議論があり、CTIAの陳情はそれに火を付けた。

 通信事業者に対する帯域は1994年以来、競売されている。米国政府はこれまでに行われた競売で500億ドル以上の収入を得ており、2008年のテレビ放送のデジタル化で空いた帯域の競売だけで、190億ドルを得ている。これに対して、放送事業者は免許料だけしか払っていない。通信、放送事業者に対する免許等の規制料の収入の合計は2008年度で3.1億ドルであり、その内の放送分野の規制料金は16.8%を構成する5240万ドルであった。



 FCC内部にも放送帯域の利用に対して、通信事業者並の支払いを求めるべきだと意見もある。放送は公共利益であるから、帯域は無償で提供されているが、最近ではローカルコンテンツの無い、ローカル局が増え、公共利益性が無くなっているとの指摘がある。メディア保有の規制の審問会において、FCCのコップス委員は、テレビ局が中央集中で、みな同じ内容の放送をするのであれば、帯域を取り上げて、競売した方がましかも知れないと発言した。

 当然の事ながら、放送局は帯域を再編し、競売することには猛反対で、NAB、各州の放送局団体等の組織は、FCCに対して即刻に放送帯域の再編成はあり得ない事を明言する様に求めている。しかし、この論争は静まる様子は無く、10月には家電事業者を代表するCEAが議論に加わった。

 CEAはFCC向けの手紙で、ハンドヘルドデバイスに対して十分な無線通信の帯域が存在しないことは「国家の危機」であり、放送帯域を競売する事はこれを解決するだけでなく、国に対して600億ドルから1000億ドルの収入をもたらす事になると書いた。CEAは、この手紙の意図は様々な選択肢を調べることを求める物で、放送帯域を放送局から取り上げるべきだとは言ってはいないと説明している。しかし、CEAのシャピロ会長は、CESに関するプレス・イベントで、放送局の帯域は「唯一の金が支払われていない帯域」だと語っている。

 放送事業者はこのCEAの発言に対して、怒りを明らかにしている。放送事業者とCEAはここ数年間、アナログ停波に向けて協力をしてきた。放送局はデジタル移行が成功したおかげで、家電事業者は数多くのHDTVを売ることが出来ているのであり、CEAの発言は裏切り行為だと怒っている。

 11月にはCTIAとCEAは手を組み、FCCに対して、1996年通信法は、デジタルTV帯域の提供から10年後に放送帯域の利用を調査する事を求めており、調査を開始すべきだとの書状を送っている。




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