DRI テレコムウォッチャー  from USA

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強まるTV Everywhere構想への関心 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.62)
2009年7月21日号

 3月の記事で触れた、Time Warnerが提案している「TV Everywhere」構想に対する関心が強まっている。TV EverywhereはHuluが行っているのと同様に無料でテレビ番組をインターネットで配信するが、Huluとは違い、ユーザ認証を行い、テレビでその番組を見る事が可能な人だけに限って配信をする。ユーザ認証が必要な理由は、ケーブルTV等の多チャンネル放送サービスは有料放送であり、視聴者から加入者料金を得ているからである。もし、これら番組をインターネットで誰でもが見ることを可能にすると多チャンネルサービスのビジネスモデルが成り立たなくなってしまう。多チャンネル事業者が視聴者を失えば、番組を提供するTime Warner等のコンテンツ事業者(多チャンネル向けネットワーク)も儲からなくなる。

 地上波放送の番組を無料、広告付きでインターネットで配信する事は既存のビジネスモデルの破壊にはならない。地上波放送自体が無料、広告収入のビジネスモデルであり、インターネット配信で広告収入が出せれば、マイナスにはならない。狙っているのはインターネットとTVのプラットフォームを有効に使うことで、コンテンツの価値を高め、1+1を2では無く、3にする事である。しかし、有料サービスの多チャンネル放送の番組を無料で配信する事は既存のビジネスモデルの破壊になる。だからと言って、インターネットでの配信を無視しているのでは、TVとインターネットの融合は果たせない。

 いかに有料放送とインターネット配信を融合させるか。その最初の答えは、インターネットでの有料配信であった。スポーツチャンネルのESNP、映画チャンネルのStarz!等はそのTVで放送したコンテンツをインターネットで有料で提供するサービスを試した。しかし、これは成功しなかった。視聴者から見れば、すでにテレビで見られるようにお金を払っている番組をインターネットで見るために、再度お金を払う事になり、納得出来ない。

 そこで、登場したのがTV Everywhere構想で、多チャンネルで放送されている番組に関しては、ユーザ認証を行い、ケーブルTV、衛星放送(DBS)あるいは、IPTVのその番組を視聴出来るパッケージに加入している事を確認した上で、無料配信を行う。この仕組みであれば、インターネットで無料配信する事が既存サービスの競合にはならない。

 ケーブルTV事業者のComcastは、Time WarnerのTV Everywhere構想を本格的にテストする事を発表している。Comcastは、5000世帯を対象に、On Demand Onlineと呼ばれる、認証ベースでTV番組をインターネット配信するサービスをテストする。ComcastのテストにはTime Warner系のTurner NetworksのTBS、TNT、HBO、Cartoon Network、CinemaxそれにComcast系のE!、Style Network、G4だけでなく、A&E TelevisionのA&EとHistory Channel; Scripps NetworksのFood Network、DIY Network、HGTV; Rainbow MediaのAMC、WE tv; そしてBBC America、CBS、Starz等が参加を発表している。主要なコンテンツ事業者の中で、TV Everywhereのテストへの参加を見合わせているのは、NBC Universal、Fox、それにDisney(ABC)のHuluに投資をしている3社である。DisneyはHuluへの参加以前から、TV Everywhereに対して否定的なコメントをしている。

 視聴者も地上波のTV番組をHuluで見られると同様に、多チャンネル放送の番組もインターネットで見たいと思っている。調査会社のSolutions Research Groupが500のComcastとTime Warner CableのケーブルTV加入者に対して行った調査では、73%はTV Everywhereのサービスを「非常に良い」あるいは「良い」アイデアだと考えている。

 TV Everywhereの構想が実現するか否かは、そのユーザ認証方法が重要になる。ユーザ認証が正確に行なえないことは問題であるが、認証を高める為に、その手間が大きくなり、利用者が不便だと思うようではサービスは利用されない。面倒な認証方法では、TVとインターネットの融合によるプラス効果どころか、視聴者のフラストレーションを高めるマイナス効果になってしまう可能性もある。




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