DRI テレコムウォッチャー  from USA

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FCCのアナログ停波に続く大きな挑戦 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.61)
2009年6月20日号

 6月12日にアメリカの地上波テレビ放送のデジタル移行は無事に完了した。すでにアナログ停波を完了した放送局を除く、971局が12日の午前12時から午後11時59分の間にアナログ停波を完了させた。視聴者調査会社のNielsenによると250万程度の世帯がデジタルへの移行に準備が出来ていなかったが、大きな混乱は無く、アナログ停波は無事終了した。

 FCCが設置したコールセンターには当日の金曜日に317,450件、土曜に145,403件、日曜に62,949件、そして月曜には94,945件の問い合わせがあった。FCCによると、最初の3日間の問い合わせの内、約28%がDTVコンバーターの設置の方法、26% が特定の局の受信不良に関する物、23%が全体的な受信問題に関する物であった。

 シカゴ、フィラデルフィアなどの一部の局でデジタル移行後に受信不良の世帯が増えた問題が出ており、FCCがスタッフを派遣し、対応をしている。トラブルフリーでは無いが、すでにアナログ停波完了させたハワイ州を除く、全米での971局と言う規模からするとこのアナログ停波は成功したと言えるであろう。

 しかし、FCCには次の大きなチャレンジがある。それは、ブロードバンド・デバイドの克服である。オバマ政権はブロードバンドの普及を重要項目とし、景気刺激予算の80億ドルをブロードバンド普及に使うことを決めている。National Telecommunications and Information Administration(NITA)には47億ドル、農務省には25億ドル、FCCには3.5億ドルの予算が割り当てられている。FCCの責任はブロードバンドの普及を把握する為のより良いデータ収集システムの構築と全米にくまなくブロードバンドネットワークを提供する為の計画作りである。

 現在、ブロードバンドの世帯普及率は60%程度であり、まだ10%の世帯が住む地域ではブロードバンドサービスが提供されていない。ブロードバンドの提供を全米に行き届かせ、さらにその普及率を向上させることは容易ではなく、チャレンジとしてはアナログ停波よりも大きな物である。FCCはこの計画を2010年2月17日まで議会に提出する予定である。

 ブロードバンドが提供されていない地域は人口密度が非常に低い農村地域である。電話事業者も、ケーブルTV事業者もVerizon、AT&T、Comcast等の大手ではなく、小規模な独立系事業者である。現在の回線は老朽化した電話回線、あるいはアナログのままのケーブル網であり、ブロードバンド化する予算もない。これらの地域をブロードバンド化するコストは高く、構築の為に政府の援助金があっても、その運営を黒字で維持し続ける事は難しい。

 ブロードバンドサービスだけで収益を出していくことは困難であり、ビデオ、電話のトリプルプレーが必要になるであろう。1つの事業者に政府が援助し、トリプルプレーを独占させれば、収益はだせるかも知れない。しかし、競争市場をその重要な方針としているFCCが独占企業を作る手伝いをする事は出来ない。だが、これら市場で複数の事業者に援助をすると、だれも収益ラインの顧客を集める事が出来なく、共倒れになる可能性が高い。このバランスを保つ事が出来る施策を作る事は容易では無く、FCCはそれを2010年2月17日までに作り上げなければならない。




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