4大地上波ネットワークの内の2つを持つ、NBC UniversalとNews Corpが共同で2008年3月にスタートさせた、HuluはTV番組を配信するインターネットサイトとして重要な物になっている。動画全体の配信に関しては依然とYouTubeが最大のサイトであるが、TV番組に関してはHuluはNBC系のNBC、Bravo、USA Network、Sci Fi Channel、News系のFox、FX、SPEED Channel等だけでなく、Comedy Channel （Viacom）、PBS（公共放送）、Versus（Comcast）、Disney Channel （Disney）、それにTime Warner系の番組等、幅広くTV番組を配信している。この成功に影響され、CBSも自社番組だけでなく、他のコンテンツ事業者の番組も配信するTV.comを最新にスタートさせている。
インターネットでのビデオ視聴時間は増えている。Nielsen社の統計では2008年第3四半期のインターネットビデオの月間平均視聴時間は27時間4分（TV自体は151時間3分）であった。NBCの報告では同ネットワークのヒット番組、「Heroes」の今シーズンの合計視聴者数はTVが2.49億で、インターネットストリーミングは7917万であった。
これらTV番組のストリーミングの収入モデルは広告である。視聴は増えているが、広告収入として成功するにはまだ至っていない。TV番組のストリーミング配信事業をその広告だけで成り立たせることは難しい。通常、TV番組のストリーミングに挿入される広告回数は6回程度で、それぞれ30秒ほどのスポットである。TV放送時の広告から比べると非常に少ない。インターネットでのストリーミングではTV以上に中断する確率が高く、広告を長くすると番組を最後まで視聴する可能性が減り、増やすことに対する懸念がある。
ネットワークはインターネット、モバイル等のクロスプラットフォーム化により、コンテンツのトータルな価値を増そうとしている。個々のプラットフォームでの広告価値ではなく、クロスプラットフォームが可能なコンテンツとして、総合的な価値をアピールしようとしている。その一環として、NBCはTAMi（Total Audience Measurement Index）と呼ばれる、TVの放送時、タイムシフト、インターネットストリーム、モバイル放送等のクロスプラットフォーム環境での視聴者数のデータを発表している。
また、現時点ではインターネットでストリーミングされている番組の主体は地上波放送の物であり、多チャンネルネットワークの番組は少ない。これは、地上波ネットワークと多チャンネルネットワークでは収入構造が異なるからである。多チャンネルネットワークも広告を売っているが、その収入の約半分はケーブルTV等の多チャンネル事業者が支払うライセンス料（視聴者料）である。もし、多チャンネルネットワークがその番組をインターネットで配信し始めた場合、視聴者はケーブルTV、DBS、IPTV等の加入の必要性が無くなる。多チャンネルネットワークの場合、インターネットストリーミングで例え、放送と同じレベルの広告収入を確保する事が出来たとしても、収入は半分でしかない。もし、多チャンネルネットワークが積極的にその番組をインターネットで配信し始めた場合、ケーブルTV事業者等を敵にするリスクを伴う。
そこで、Time Warnerは多チャンネル事業者を巻き込んだ「TV Everywhere」と呼ばれる構想を売り込もうとしている。TV Everywhereでは多チャンネル事業者はインターネットでその番組を配信するが、メンバー制になり、視聴可能な人はそのネットワークが放送されている多チャンネルサービスの加入者に限られる。どの様な方法で認証をするか、サービスは有料オプションか等、未決定の部分も多いが、多チャンネルネットワーク、それに多チャンネルサービス事業者の両方に取り、メリットがあるビジネスモデルである。
