DRI テレコムウォッチャー  from USA

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全米3分の1の放送局のアナログ停波が終了 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.56)
2009年2月28日号

 米国のアナログ停波は予定通りには進まなかった。失敗には様々な要因があるが、最も直接的な原因は、1月に入り、DTVコンバーター購入援助のクーポンプログラムの資金が無くなった事である。それまで、1月末頃までは資金は続くとも思われたが、クリスマス休日前後に注文が殺到し、このプログラムを管理している National Telecommunications & Information Administration(NTIA)は1月5日に資金分のクーポンの発行が終わった事を発表する。これにより、後はすでに発行したクーポンの期限切れを待ち、発行するだけになり、待ちリストは400万以上になる。

 DTVクーポンの発行が出来なくなった事を受け、議会はパニックをし始める。このまま、2月17日の停波を進めた場合、混乱が起き、スタートしたばかりのオバマ政権の汚点になる可能性がある。議会は期日を6月12日へ延長する法案を通過させようとする。しかし、これには一部の放送局を含め、反対も出る。デジタルとアナログの両方でさらに4ヶ月間放送を続けることは、小規模な放送局に取っては大きな経費である。また、跡地の帯域を使うことになっていた公共安全機関、通信会社も反対をする。

 この結果、アナログ停波の期日は6月12日まで延期とするが、アナログ停波をそれ以前に実施したい局はFCCの許可を得ることで実行出来る事に決まる。491局がFCCに対して2月17日にアナログ停波を行うことを申請し、その内の421局に対して許可が下り、これらの局は予定通りにアナログ停波をする。

 停波を行った421局の多くは小さな放送区域の局であり、全体でテレビ世帯の約11%に相当する1240万世帯に影響を与えた。しかし、一部の地域では4大ネットワーク中の3 つ以上に属す局が停波をしている。この中で最も規模の大きな地域は、カリフォルニアのサンディエゴ(TV世帯110万世、DMA28 位)で、NBCを残し、CBS、ABC、Fox系が停波をした。その他大きな地域にはロードアイランド(62万世帯、52位)、マディソン(ウィスコンシン)(38万、85位)、ウェイコ(テキサス)(33万、95 位)がある。

 先行テストを行ったウィルミントン、環境上の理由で停波を早めたハワイ等を含め、2月17日以前に、すでに220の局がアナログ停波を行っており、2月17日で、641局、全米の放送局の36%がデジタル移行を行った事になる。

 アナログ停波は、特に大きな問題なく完了した。FCCが設置したコールセンターには17日には約28,000件、18日は約25,000件、19日には18,000件の問い合わせがあった。また、放送局も1日平均で50件から200件程度の問い合わせの電話があったと報告している。合計世帯の1240万からすると、これは大きな数字ではない。

 FCCにあった問い合わせの内、最も多かったのはDTVコンバーターでの受信に関するもので、17日の問い合わせの26%、18日の32.5%をしめた。これにはDTVチューナーのスキャニングの方法、アンテナの問題等が含まれる。2位はコンバーター自体に関する物で、17日の21.8%、18日の20.1%を占めた。これには、クーポンの未着、申請方法、購入場所等が含まれた。アナログ停波に関してまったく知識が無かったのは17日の問い合わせの内、4.5%、18日の2.3%であった。

 アナログ停波をまだしていない局はまだ100以上残っている。議会は景気刺激策の一部として、DTVコンバーターのプログラムに6.5億ドル増資し、クーポンの発行を引き続き行えるようにした。また、FCCはさらにスムーズにアナログ停波を行うために、電話でのサポートだけでなく、問題を持つ視聴者が訪れて相談が出来るサポートセンターの設置、さらに老人等の世帯向けの訪問サポートスタッフの設置の検討も行っている。


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