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欧州通信市場の展望 - 第2号(市場レビュー)
2009年2月

1 今月のテーマ

 今月の「欧州通信市場展望」はヨーロッパの通信業界および通信事業者に大きなインパクトのあるいくつかの問題について簡潔に考察し、その動向をわかりやすくまとめて報告する。

今月のテーマは下記のとおり:

 * ヨーロッパにおけるブロードバンドの普及状況
 * 新たなテクノロジーの登場−TV Key
 * オレンジーフランステレコムの概略
 * フランス主要市場のデータ

このレビューは、皆さまのお知りになりたいテーマや情報を取り上げていきたいと考えています。
ご意見・ ご要望等がありましたら、ぜひお寄せ下さい。(データリソース Eメール:info@dri.co.jp


2 欧州におけるブロードバンド普及状況

 15年前、ADSLは市中に新たなケーブルを敷設して中継する必要のない画期的な技術として登場した。15年後の現在、ヨーロッパの利用者は1990年代に描いた青写真がようやく現実のものとなることを実感し始めたところだ。ブロードバンド普及率の分析結果が示すのは、西欧諸国の大部分の世帯にとって、今やブロードバンドが必需品となっているということである。

図表1 欧州ブロードバンド普及率
拡大図

 しかしながら、この表の数字が示すように、ほとんどの国でその普及率が60%に迫るかもしくは超えている一方で、イタリア、ポーランド、ロシアのように注目すべき例外もある。ロシアやポーランドの場合、ブロードバンドは新しく登場したばかりで、経済的な観点で他のヨーロッパ諸国に追いつくにはまだ何年もかかるだろうということは容易に察しがつく。更に言えば、これらの国ではブロードバンドを使った携帯電話のサービスの方がより重要である。例えば、オレンジはポーランドに410万のモバイルブロードバンドのユーザを抱え。イタリアでは加入者数が今や1200万を超えていると見られている。そのため3Gは最も重要なブロードバンド接続形態なのである。

 とはいえ、今後10年間で欧州のブロードバンドサービスは、FTTCかFTTHのどちらを推し進めていくかによって、それぞれの回線に二分されていくことになるだろう。次の例を参照されたい。

  • ドイツテレコムはVDSLサービスと組み合わせてFTTCを推進している。ドイツの利用者の大半は、今後5年間で毎秒最大25メガビットのブロードバンドサービスを受けられるようになる見通しである。
  • フランス政府が進めているのは全面的なFTTH化である。都市中心部の一般利用者はまもなく多数のプロバイダーから100メガビットの容量のサービスを受けられるようになるが、市外では大部分が当面毎秒最大で18メガビットかそれ以下のADSL2+のサービスしか受けられない。

 最新のデータを見る限り、インターネットサービスは、現在の景気低迷を脱して、経済回復を促すために不可欠な役割を果たすといえるだろう。それ故、インターネットの普及率を上げることは、一刻も早い経済の復活を裏付けるためにも必要かもしれない。

3 台頭する新技術: TV Keys

 マルチチャンネルメディアが台頭する中、テレビ放送事業者が直面している切迫した問題は次の二つである。

  • 一般の視聴者の減少やインターネットとの競合による広告収入の落ち込み。
  • 新しいデジタルチャンネルが増加を続ける中、視聴者を維持することが困難になっていること。

 これらの問題の解決策のひとつになるかもしれないのがTV Keyである。TV Keyはミニウェブが所有、運営している。これを利用することで視聴者は容易に双方向サービスやコンテンツにアクセスすることが可能となり、視聴の双方向性を促すトリガーになりえる。いわく、“TV Keyは安価で、独自に利用ができ、いつでも使えて便利です。”

 ミニウェブはいわゆる自社株買占め(MBO)の結果創立された。指揮をとったのはスカイニューメディアの技術提携部門の部長でありBSkyBユs R&D運営委員会のメンバーでもある、イアン バレンタイン氏である。
 TV Keyはブランド名であると同時に、覚えやすいように数字コードのKeyという言葉と結び付けている。視聴者はテレビのコントローラーで“インタラクティブ”を押し、TV Keyを選ぶ。この操作で視聴者はTV Keyのホームページに入り、さらにリモコンの文字に合わせてTV Keyのワードを入力することが出来る。TV Keyに入るとTVサイトという双方向テレビにたどり着くことができる。そしてそこでテレビ向けに作られたストリーミング広告やウェブベースのコンテンツを利用るることが出来る。 複数の企業が同じTV Keyを持つことは可能なので、例えば「ホリディ:holiday」というキーワードではあるいくつかの企業のウェブサイトが見られることになる。
 今のところ、TV Keyはスカイテレビによる衛星放送でしか見ることができない。ミニウェブはスカイテレビの衛星放送チャンネルのスペースを使い、それをそれぞれのTV Keyに貸し出すことで収益を生み出している。レンタル料はローカルネットの1,250ポンドから全国ネットでは25,000ポンドにわたっている。

3.1. 分析

 TV Keyは広告業界においては興味深いアイディアである。しかし、オクテグラ社の見解では、いくつかの重要な弱点がある。

  • そのサービスは広告主が購入するもので、放送事業者がそのプラットホームを差別化するために付加価値として提供されるものではない。そのため、広告費が単純に増大してしまう。
  • それはスカイテレビのプラットフォームに限られている。様々なプラットホーム上で利用が可能であれば、広告を目にする層はもっと広がり、全国ネットでも地方局にも広告スペースを創出できることになる。
  • いつでも視聴者は、見ているプログラミングを中断してTV Keyに入れるということを、ミニウェブはもっとアピールすべきである。

4 オレンジ概論 - フランステレコム

 フランステレコムは2006年6月以来、フランスにおいて携帯、インターネット、テレビ、集中的なサービスの分野でオレンジというブランドを使ってきた。オレンジという名は2000年6月にフランステレコムが獲得した、イギリスの携帯電話会社オレンジからきている。それ以来、フランステレコムは携帯電話と固定電話の双方でヨーロッパ中をカバーする電話会社へと変貌を遂げた。それはナローバンドによる時分割型多重放送サービスからIPテクノロジーに基づくブロードバンドサービスへの変革も含んでいる。またフランス国内でDSL技術に基づくIPテレビのサービスにも乗り出した。ARCEPやその他大手電話会社と共に、FTTHの敷設を主要都市中心部で現在も進めている。同社は2008年12月には住宅密集区域での光ファイバーサービスの運営において、SFR社やNumericable社と契約合意した。

4.1 NXeT戦略

 この改革の多くは、2005年6月に始まったフランステレコムのNExTプログラム(New Experience in Telecomunications)によって行われてきた。このプログラムは、ヨーロッパを統合する電話会社として、フランステレコムが新しい通信サービスの評価基準(ベンチマーク)となることを目的としている。今日、オレンジは欧州第3位の携帯電話会社であるが、ブロードバンドインターネットサービスのプロバイダーとしても首位になると宣言している。

 NExTプログラム戦略の背景には下記の4つのチャレンジがある。

  • ネットワーク接続からサービス接続への企業の転換
  • 通信サービス、顧客サービス、ネットワークサービスの刷新
  • グループ企業の結束力強化
  • グループ企業の専門領域の開拓

 グループはその戦略を国際的に展開している。すなわち、ビジネスの半分近くはフランス国外のものであり、成熟した市場と成長途上の市場とのバランスを今後もはかっていくとしている。

  • 成熟した市場やインターネットやデータ、新たなサービスにおける経済モデルの改革をはかる。
  • インターネットやデータ、新しいサービスを取り込んでますます成長しつつある携帯サービス市場に手を広げていく。

 NExT戦略の中核をなすのは、今後総収益が増加していく中で、全体的に固定電話音声サービスは収益を下げ、インターネット接続やデータサービス等の新しいサービスの収益が上がるだろう。表2参照。

図表2 NXeT戦略、サービス別収益予測
拡大図
Source: France Telecom

 フランステレコムは3系統に企業内の組織を分割している。

図表3 組織構成
運営管理事業領域グループ機能
France
United Kingdom
Spain
Poland
Europe, Middle East and Caribbean
Africa, Middle East and Asia
Enterprise
Personal
Home
Enterprise
company secretariat strategic marketing finance company secretariat strategic marketing finance networks, operators and information systems human resources group transformation and purchasing communication and brand networks, operators and information systems human resources group transformation and purchasing communication and brand
Source: France Telecom

4.1.1 運営管理

 オレンジのグループ企業の電話業務は地理的区分で構成されている。それらは一国単位であったり数カ国単位であったり、また取引企業によっては世界規模である。

4.1.2 事業領域

 フランステレコムグループは事業体を主顧客と主なサービスにより大別して以下の3部門に分割している。

  • 個人向け通信サービス。一般利用者に提供されている全てのワイヤレスサービスを含む。
  • 家庭向け通信サービス。顧客宅に引かれた固定電話での全サービスを含む。
  • 企業向け通信サービス。大手企業が購入しているワイヤレスと固定双方のサービスを含む。

 当然のことながら、中小の企業と一般利用者、家庭間は重複している場合がある。

4.1.3 グループ機能

 各部門は責任を持ってグループの全体的な戦略を決定し、各部門(ネットワーク、電話局、情報提供システム、人事、通信等)に指示を出す。特筆すべきは、業務に関する共通のルールを設定し、グループ間で資源や専門領域を提携させ戦略的機能(財務、市場調査、購入等)を集約していることである。こうした組織が相乗効果を生み、コスト削減を推進している。

4.2 フランステレコムの財政

 最近の発表によると、フランステレコムは国内総生産を上回る収益の伸び率を維持していると指摘しているとのことである。これは興味深い結果であるとはいえ、その伸び率はゆるやかで、基底の経済と同様である。表4参照。

図表4 収益率
Source: France Telecom

 表5は2008年第3四半期のフランステレコムグループの主要統計をまとめたものである。

図表5 各グループ収益 (EUR Millions)
拡大図
Source: France Telecom

 オレンジは固定電話サービスに関して低価格帯の通話プランを提供している。このプランはフランスに海外領土や海外県(DOM)があるために複雑になっている。フランステレコムは、もともと独占的にライセンスを与えられていたフランスの海外県(departments dユoutre mer すなわちDOM)としてとりまとめられる海外の地域に対し国際的なサービスを請け負っている。地理的にはたとえ南米であろうとカリブ海の島であろうと、またアフリカ沖であろうと、海外県(DOM)はフランスの26の地域圏の一部であり、したがってEUの一部でもある。それらは次のように区分される。

  • DOM 1:グアドループ(北部の島々を除く)、マルニニーク諸島やレユニオン島を対象とする料金適用区域
  • DOM2 :ギアナ、セントピエール アンド ミカロン、マイヨット、グアドループ北部の島々を対象とする料金適用区域

 表6はオレンジ社の固定電話の収益、表7は電話加入者数を示している。
 表8はオレンジのパーソナル/ワイヤレス電話のサービスの主な統計数値。

図表6 家庭向け / 固定回線収益 (EUR Millions)
拡大図
Source: France Telecom


図表7 家庭向け加入者線数 (,000)
拡大図
Source: France Telecom


図表8 パーソナル/ ワイアレス主要統計
拡大図
Source: France Telecom

4.3 グローバルネットワーク

 過去20年間でフランステレコムは国際的なネットワークを次のような構成で作り上げてきた。

  • ヨーロッパの基幹ネットワーク(表9参照)
  • 欧米間の中継ネットワーク   (表10参照)
  • 国際間の海底ネットワーク  (表11参照)
図表9 フランステレコム欧州ネットワーク

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図表10 大西洋横断ネットワーク

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図表11 グローバルネットワーク

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図表9〜11 Source: France Telecom

4.4 コンテンツサービス

 フランステレコムは今後の経営の成功のためにはコンテンツサービスが重要だと考えている。さらに、この市場でフランステレコムの占める位置をアピールするために、このNXeTプログラムが一役かっていると自負している。オレンジは既に消費者にIPTVサービスを提供しており、2009年上半期にはDVB-Hモバイルテレビの開始を目指している。オレンジの戦略は、これらのサービスに接続する手段を提供するだけでなく、コンテンツサービスを商品化していく中で責極的に協力しあっていくことである。表12は、グループ内でのコンテンツの配信や顧客管理の委託をはじめとして、オレンジが、どのようにコンテンツに価値をおいてグループ内で連携していこうとしているかを図式化したものである。

図表12 フランステレコムのコンテンツ戦略
拡大図
Source: France Telecom

5 主な市場データ - フランス

 以下の市場データに関する数字は、フランスの国内の法制度機関であるARCEPによる第3四半期の報告に基づいている。

5.1 収益

 2008年度のレンタルサービスは445億ユーロにのぼったが、そのうち付加価値サービスによる収益は40億ユーロに及ぶ。
 相互接続とホールセールサービスの収益は90億ユーロであった。
 インターネット収益は年間16.9%、約50億ユーロ増加したが、それは主にアクセスチャージによる。ブロードバンドのARPU(1ユーザあたりの平均収益)は過去2年間では月24ユーロで安定している。

  • 携帯音声サービスの収益は年約158億ユーロ。
  • 携帯データサービスの収益は年約32億ユーロ。

5.2 固定線加入者

 固定電話の総接続数は2.4%アップして4020万だった。
 インターネット接続は1830万に達し、そのうちのブロードバンドービスの接続は1720万で、ブロードバンドによる音声サービスの加入者は1350万にのぼった。
 現在フランスのIPTVの加入者数は564万3000であり、160万増加した。

5.3 携帯加入者

 フランスでのSIMカード登録数は5640万であった。
 1740万人の携帯加入者がマルチメディアのサービスを利用し、そのうち940万人が実際に3Gを利用している。
 一方、イリアッドグループのFree社は周波数5メガヘルツ帯のひとつを、2億1000万ユーロ(2億7200万USドル)で買い取ることを提案したと報じた。国内では4番目でこれで最後となる3Gモバイルネットワークを整備するという提案に沿ったものである。これはフランス政府が、最大15メガヘルツ帯用に当初求めていた6億1900万ユーロのざっと3分の1であるとも指摘している。

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